おさえておきたい「歯垢(プラーク)」の基礎知識

おさえておきたい「歯垢(プラーク)」の基礎知識

歯垢(プラーク)の正体は、食べかすではなく「細菌のかたまり」。歯の表面に強く付着しているので、水でブクブクうがいをしただけでは取り除けません。歯垢は放っておくとむし歯や歯周病、口臭の原因になるので、ていねいなブラッシングに加え、ハミガキや歯間清掃用具を上手に使って、しっかり取り除きましょう。

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「歯垢」と「プラーク」は同じ意味の言葉

皆さんは、口の中の汚れに関する言葉をどのくらいご存じですか?
ライオンが「歯垢」「プラーク」「歯石」「ステイン」という言葉について「言葉を知っているか?」「内容まで理解しているか?」について調べたところ、いずれも理解度がとても低いことがわかりました。

<歯の汚れに関する言葉の認知率と理解度>

  • ※ライオン調べ、オーラルケア実態調査、女性16~69歳、n=1600、2011年

なかでも、認知率と理解度の差がもっとも大きかったのが「プラーク」です。
「プラーク」は「歯垢」と同じ意味をあらわす言葉ですが、「知っている」人が7割もいるのに対し、「理解している」人は2割と、少なくなっています。
言葉としては広く認知されていますが、歯垢そのものについては、あまり理解されていないのかもしれません。
そこで今回は、皆さんが知っているけどよくわからない「歯垢(プラーク)」について詳しく説明します。

「歯垢(プラーク)」とは?

  • 画像提供:(公財)ライオン歯科衛生研究所

歯の表面に付着している白色や黄白色のネバネバした付着物が「歯垢(プラーク)」です。
「歯垢」と「食べかす」は同じものと思われがちですが、実はまったくの別物。歯垢は細菌のかたまりで、歯垢1mgあたり、なんと1億個以上の細菌が存在しています。
歯垢は英語でDental plaque(デンタルプラーク)ということから、プラークとも表記されます。

歯垢が「形成」される3つのプロセス

歯垢は、以下のようなプロセスで「形成」されます。

1. 唾液の流れが悪い場所で増殖

口の中にはたくさんの菌がいますが、たとえ菌が歯に付着したとしても、多くの場合は唾液で洗い流されます。しかし、唾液の流れが悪い場所に付着した菌などは、その場で増殖を始めます。

2. 徐々に歯垢が形成

菌の増殖は2日間くらい続くといわれ、徐々に歯垢が形成されていきます。

3. ミュータンス菌により強固に

むし歯の原因菌であるミュータンス菌が、食べ物に含まれる砂糖を原料にグルカンというネバネバした物質をつくり歯に付着しやすくなるため、より強固な歯垢を形成します。

ミュータンス菌については、こちらの記事もご覧ください。
知らなかった!「ミュータンス菌」を、むし歯菌と呼ぶのはどうして?

お口のトラブルの多くは歯垢が原因!

お口のトラブルには、主に歯垢が原因となるものが3つあります。

POINT

歯垢が原因となるお口の3つのトラブル

1. むし歯の原因になる

多くの場合、歯垢の中には、むし歯の原因菌であるミュータンス菌が存在しています。ミュータンス菌は食事をした時に糖分を取り込んで酸を作り出し、歯を溶かします(脱灰)。溶けた歯は唾液の働きで元の状態に戻ります(再石灰化)が、歯垢が長く歯についていると、再石灰化が間に合わず、歯に穴が空いたむし歯になってしまいます。

2. 歯周病の原因になる

歯垢の中の歯周病菌が作り出す毒素によって、歯茎が攻撃され出血したり、腫れたり、歯を支えている骨を溶かされたりします。これが歯周病です。成人の約80%が歯周病といわれており、歯垢を取り除くことで予防や改善をすることができます。

3. 口臭の原因になる

歯垢に含まれる細菌が、たんぱく質を分解してガスを出すため、臭いとなって出てきます。

自宅でもできる!歯垢を取り除く方法

歯垢は、歯の表面に強く付着しているので、水でブクブクうがいをしただけでは取り除けません。
細菌のかたまりである歯垢は、放っておくとむし歯や歯周病の原因になるので、以下のポイントに気を付けて、きちんと「取り除く」必要があります。

POINT

歯垢を「取り除く」3つのポイント

1. ていねいなブラッシング

みがき残しのないよう、ていねいなブラッシングを心がけましょう。奥歯のかみ合わせ部分や歯と歯の間、歯と歯茎の境目は歯垢が残りやすいので、特に意識して磨くようにしましょう。歯並びの悪いところなど、ハブラシで磨きにくい部分は、タフトブラシを使うようにしましょう。

歯の磨き方については、こちらの記事もご覧ください。
磨き残しをしない「歯磨きのコツ」
自分の歯並びに合わせて磨ける「タフトブラシ」の使い方

2. ハミガキを使う

歯を磨く時はハミガキを使いましょう。ハミガキを使用することで、歯垢や色素沈着を効率良く除去することができます。また、細菌を殺菌したり増殖を抑えたりする効果もあります。自分のお口の状態に合った「薬用効果」のあるハミガキを選ぶと、さらに効果的です。

ハミガキについては、こちらの記事もご覧ください。
「ハミガキ」を使って上手に歯を磨こう!

3. 歯間清掃用具を使う

歯と歯の間はハブラシの毛先が届きにくいので、ハブラシだけでは不十分です。歯と歯の間はデンタルフロスや歯間ブラシなどの歯間清掃用具を使って、歯垢を取り除くようにしましょう。

歯間清掃用具の使い方については、こちらの記事もご覧ください。
口の中の状態を良好に保つために!「歯間清掃用具」の使用が大切

ご自身の磨き方によるみがき残しのクセを知るために、歯垢染色液を使ったり、定期的に歯科医院で歯のクリーニングをしてもらったりするのもいいでしょう。

TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!

ハミガキを「つけて」磨く方が歯垢も取れる?

歯垢の落ち具合を高める「ハミガキ」

出典:(公財)ライオン歯科衛生研究所、日本小児歯科学会、1986

「ハミガキ」には清掃剤の働きによって「効果的に歯垢を除去する」という基本機能があります。
では、ハミガキを「つけて」磨いた時と「つけないで」磨いた時とで、歯垢の落ち具合はどれくらい違うのでしょうか?
実験の結果、ハミガキをつけて磨いた方が、歯垢を効率良く除去できることがわかりました。また、ハミガキには歯垢をつきにくくする働きもあります。

この記事を作成・監修した
マイスター

平野 正徳

オーラルケアマイスター

平野 正徳

ひらの まさのり

オーラルケア関連の基礎研究ならびに開発研究に20年以上携わってきました。 これまで得た知識と経験を活かして、歯とお口の健康に関する情報をお伝えします。

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