矯正中の歯みがきの方法|デンタルフロス、歯間ブラシの使い方も紹介
矯正中は、装置周辺に汚れがたまりやすく、ケアもしにくいもの。「食べたらみがく」を習慣にし、みがけているか鏡で見ながらみがきしましょう。装置周り、歯など各部位に毛先をきちんと当てて小刻みにブラッシングし、タフトブラシやデンタルフロス、歯間ブラシ等の活用も必須。ハミガキはフッ素配合のものがおすすめです。
汚れがたまりやすく落としにくい矯正中は、歯みがきを念入りに!
歯並びや咬み合わせが悪い人が行う治療、矯正は、一本一本の歯に、「ブラケット」と呼ばれる固定具を接着し、そこに「ワイヤー」をかけて、歯の位置を徐々に動かしていきます。年齢や体質、歯の状態にもよりますが、治療期間は数年に及びます。
このような矯正装置が装着されると、
●食べかすが残りやすくなる
●歯垢がたまりやすくなる
●ブラッシングがしにくくなる
など、お口の清潔を保ちにくくなります。
治療中、数年にわたってこの状態が続くので、むし歯や歯周病、口臭などお口のトラブルを予防するためにも、食べかすや歯垢をしっかり落としましょう。清掃を怠りトラブルが生じると、そちらの治療を優先したり、矯正の障害になるなどして、矯正の期間が延びてしまう場合もあります。今回は、矯正専門医の監修協力のもと、矯正中のセルフケアのコツについて詳しくご紹介します。
矯正中のセルフケアで気をつけるべき「3つのポイント」
具体的な歯のみがき方の前に、矯正中だからこそ、毎日の歯みがきでこれまで以上に気をつけておきたいポイントを3つお知らせします。矯正中は、歯科医院での定期的なメインテナンスや指導を受けるとともに、これらに留意しながら毎日のセルフケアを行いましょう。
1.食べたらみがく
矯正装置をつけていると、どうしても装置の周りに食べかすが残りやすくなるため、お口の衛生を保つためには、「食べたらみがく」が一番の基本です。
食べかすは歯垢に潜む細菌のえさにもなります。「食べたらみがく」を習慣にして、口内に残さないようにしましょう。
2.鏡を見ながらみがく
矯正装置のまわりは、食べかすや汚れが付いていることや、みがき残しがあることなど、気づきにくいことも多いものです。きちんとみがけているか、鏡で確認しながら歯みがきしましょう。
鏡を見る際、ハミガキが泡立って見づらい場合は、低発泡タイプのハミガキ※を使うと確認しやすくなるでしょう。
3.ハブラシ以外のアイテムも不可欠
ハブラシだけでは、矯正装置がじゃまになって掃除しきれない部分が出てしまいがちです。しっかり除去するために、「タフトブラシ」や「歯間清掃用具」などの補助用具も合わせて活用しましょう。
- ※ハミガキの中にはジェル状の剤型のものもあります。
ここからは、矯正中の歯みがき方法について、みがく部位やアイテムごとのポイントやコツを具体的にご紹介します。
矯正治療中のハブラシの使い方
まずは、ハブラシを用いた矯正装置のまわりのみがき方です。
「ブラケットのまわり」の歯みがきのコツ
ブラケットなどの金具類のまわりと歯の境目は、食べかすや歯垢が特につきやすい場所です。また、ハブラシの毛先が届きにくいため、それらの汚れを除去しにくい場所でもあります。従って、ブラケットまわりの形状に沿ってハブラシの毛先をしっかり当てるように意識し、小刻みに動かして歯を1本ずつブラッシングするのがコツです。矯正専用ハブラシが販売されている歯科医院もあるので、相談してみましょう。
●「ブラケットのまわり」を「凸型ハブラシ」でみがく場合
ブラケットの周囲をみがくのには、毛束の中央が凸になっている「矯正用の屋根型ハブラシ」を使うと、入り組んだ部分に毛先が届きやすくおすすめです。同じく中央が凸型の「ドーム型植毛のハブラシ」も使えます。
凸型のハブラシを使用するときは、ブラシを斜めに当ててみがくと、歯とブラケットとの境目やワイヤーの隙間に凸部分の毛先が届きやすくなります。上と下の両方からくまなくみがきましょう。
●「ブラケットのまわり」を「毛束が平らなハブラシ」でみがく場合
一般用の毛束が平らなハブラシを用いる場合は、ハブラシの「わき」をはじめ、「つま先」や「かかと」の部分などを活用し、毛先をブラケットまわりにもしっかり当ててブラッシングするのがコツです。
「ワイヤーと歯の間」「ワイヤーのまわり」の歯みがきのコツ
ワイヤーと歯の間の隙間も、食べかすがはさまりやすく、歯垢も除去しづらい場所です。取り除くには、ブラケットまわりと同様、ハブラシの毛先をうまく活用しましょう。歯とワイヤーの隙間に毛先を斜めに入れて、上下それぞれからみがきます。
<歯ブラシのタイプ別 ブラッシングのコツ>
●毛束が凸型のハブラシ
ブラシ中央部の凸の毛先を、歯とワイヤーの隙間に斜めに入れてみがきます。
●U字カットのハブラシ
矯正用のU字カットのハブラシは、矯正装置をまたいで歯の面をみがくことができるハブラシです。
上下に傾けることで、ブラケットまわりやワイヤー下の歯面の清掃もできます。
●毛束が平らなハブラシ
ブラシの「わき」の毛先を、歯とワイヤーの隙間に入れてみがきましょう。毛がかたいと隙間に入りにくいので、適度なかたさのハブラシを選びましょう。
ハブラシ以外の補助用具も併用して、歯垢の除去率をアップ!
ハブラシの毛先は、歯と矯正装置の隙間や、歯とブラケットとの境目などにはどうしても届きにくいものです。そのため、ハブラシだけでなく、「タフトブラシ」や「歯間ブラシ」、「デンタルフロス」、「水流の噴射を用いる歯間洗浄器」などの補助用具も併用して、歯垢や食べかすを除去しましょう。
食べたら毎回みがくのが基本ですが、最低でも一日に一回は、補助用具を使用したケアも行って、汚れをしっかり除去しましょう。
補助用具の使い方「タフトブラシ」編
まず、タフトブラシを使用したみがき方をご説明しましょう。
タフトブラシは、ブラケットまわり、ワイヤーと歯の間、奥歯の奥などの部分にも毛先がピンポイントで届きやすいアイテムです。みがきたい場所に毛先を当てることを意識して、毛先を小きざみに動かしたり、小さな円をえがくようにも動かしましょう。
補助用具の使い方「歯間ブラシ」編
ブラケットの付け根の角(かど)(イラスト赤矢印部分)は、食べかすや歯垢がたまりやすいうえ、ハブラシの毛先も届きにくいので、みがくのに歯間ブラシも併用すると効果的です。
また、見逃しがちですがワイヤーの下も、どうしてもハブラシの毛先が当たりにくいため、歯垢だけでなく茶渋などの着色汚れ(ステイン)も蓄積しやすくなります。「歯間ブラシ」に、清掃剤が入ったハミガキをつけてみがくといいでしょう。
●ワイヤーの下をみがく例
通常、歯並びが悪い部分の歯垢除去にはタフトブラシが役立ちますが、ブラケットやワイヤーがあるとタフトブラシでさえ届きにくい場合も出てきます。そんなときは、隙間の広さに応じたサイズの歯間ブラシを使用しましょう。歯間ブラシなら、奥まって生えた歯とワイヤーの狭い隙間にも挿入でき、きちんとみがくことができます。
●奥まって生えた歯とワイヤーの狭い隙間(黄矢印)をみがく例
また、奥歯用の大きめのブラケットや矯正の固定具として「バンド」を使用している場合、歯ぐきとの間の歯面は非常に狭くなります。4S、SSSなど小さいサイズの歯間ブラシでみがくといいでしょう。
●奥歯用ブラケットと歯ぐきの間の狭い部分(黄矢印)をみがく例
治療によっては、歯ぐきの下の骨に「アンカースクリュー」という金具を打ち込む場合もあります。この周囲も歯間ブラシでみがくのがいいでしょう。
●アンカースクリューの周囲をみがく例
歯間ブラシは、狭い場所の掃除ができる非常に役立つアイテムですが、狭いところに無理やり大きいサイズの歯間ブラシを入れると、歯ぐきや歯を傷つけたりワイヤーが変形することもあります。さまざまな大きさの歯間ブラシがあるので、いくつかそろえて部位の隙間の広さに合わせて、適切に使い分けましょう。
補助用具の使い方「デンタルフロス」編
歯間や矯正装置まわりのせまい隙間には、デンタルフロスも活用します。挿入しやすいワイヤーの上からだけでなく、ワイヤーの下にもフロスを通して、ハブラシの毛先が届きにくい歯間や歯の根元の汚れをしっかり除去しましょう。
矯正中のハミガキの選び方
矯正中も「フッ素配合のハミガキ」を活用しよう
最後に、ブラッシングで使用するハミガキの選び方についても触れておきましょう。
ハブラシやほかのケアアイテムを工夫して使っても、矯正装置をつけていないときと比べると、どうしても歯垢が残りがちになります。歯垢が残りがちな歯、つまりむし歯リスクが高い歯を守るためにも、フッ素配合のハミガキ※を用いてむし歯を予防しましょう。フッ素には、「歯質を強化する作用」や、「歯から溶けだしたリンやカルシウムを再度取り込み、穴があく前の初期むし歯を修復する“再石灰化”を促進する作用」、「歯垢の細菌を抑制する作用」などがあります。
なお、以前は市販のハミガキのフッ素濃度は1000ppmが上限でしたが、2017年に上限1500ppmも認められており、これに対応した高濃度フッ素配合ハミガキがおすすめです。6歳未満のお子さんには、高濃度フッ素配合ハミガキのご使用はお控えいただき、こども向けのフッ素配合ハミガキを使うとよいでしょう。
また、医薬品のフッ素洗口液を使うのも効果的です 。1日1回ブクブクするだけで、フッ素がすみずみまで行き渡り、使えば使うほど歯の質を強くしてくれます。 ご使用の際は、添付文書をよく読んでお使いください。
一方、歯の着色汚れが気になる場合は、フッ素配合で、歯の美白や着色汚れに対応したハミガキを活用するのもよいでしょう。
- ※ハミガキの中にはジェル状の剤型のものもあります。
いかがでしたか。食べかすや歯垢がたまりやすく、ケアもしにくい矯正装置まわり。せっかく矯正したのにむし歯になってしまったら本末転倒です。ハブラシやさまざまな補助用具を活用して歯垢を取り除くとともに、フッ素配合のハミガキも併用し、日常のセルフケアを効果的に行いましょう。同時に、歯科医院に定期的に通院して処置や指導を受けながらお口の衛生を保ち、むし歯や歯周病、口臭を予防しましょう。
TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!
矯正中、ブラッシング方法以外にも気をつけることはある?~
食べ物や食べ方にも配慮しましょう
以下のような食べ物は、食べかすが残りやすくなったり、矯正装置の変形を招く可能性があるので気をつけましょう。
●粘着性のある食べ物
キャラメル、チョコレート、ヌガー、もちなどは、矯正装置まわりにくっついてしつこく残りがちです。特に糖分が多いものには注意しましょう。
●かけらが隙間に残る食べ物
ナッツ、ポテトチップス、せんべい、ごまなどは、かけらが装置や隙間に残りやすい食べ物です。
●固い食べ物
氷のかたまり、ナッツ、せんべいなど固いものを食べると、ワイヤーが変形することもあるので気をつけましょう。
また、それほど固くない食べ物でも、食べ方によってはワイヤーの変形につながる場合があります。例えば、りんごの丸かじりや、から揚げ、かたまり肉を食いちぎるなどは避けたいもの。細かく切って食べましょう。
TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!
矯正ってどんな種類があるの?目立たない方法はないの?
歯の裏側につける矯正装置や、透明のマウスピース型など、いろいろな種類があります
以前は、ブラケットやワイヤーが金属製で目立つものが多かった矯正ですが、現在は、白色で目立たない素材を使用したもの、歯の裏側に装置をつけるタイプなどもあります。
お国柄の違いなのか、外国では、なんと、矯正していることをアピールするかのようにカラフルな矯正装置をつけている人もいるようです。このような矯正装置をつけて治療を楽しむ気持ちで進めるのもよいかもしれませんね。
また、着脱式の透明マウスピースを使用した、従来の矯正とは異なる方法もあります。透明で目立たないうえに、装置を歯に接着させず、つけっぱなしにしなくてよいのが特徴です。
このように、さまざまな素材や方法があります。詳しくは専門の歯科医院で相談しましょう。
監修協力 さとう矯正歯科(東京・高田馬場)佐藤 俊仁先生
この記事を作成・監修した
マイスター
オーラルケアマイスター
深澤 哲
ふかさわ てつ
オーラルケアの技術開発ならびに製品開発に約25年間携わってきました。
これまでの経験を活かし、オーラルケアと健康生活に関わる有用な情報をお届けしていきます。
下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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