スポーツをする人は気をつけて!歯の健康を守る3つのポイント
歯が健康であることは、スポーツのパフォーマンスにも良い影響を与えます。スポーツドリンクを頻繁に飲んだり、発汗により唾液の分泌が減ると、むし歯など歯の健康を損なうリスクが高まるので要注意。運動後は水で口をすすぐ、日頃からフッ素配合のハミガキを使うなどして歯を守りましょう。
スポーツをする人は「歯の健康」に注意が必要
皆さんは日頃「スポーツ」をしていますか?
スポーツ庁の調査※1によると、成人の「週1日以上スポーツをする実施率」は53.6%。年齢別に見ても幅広い年代で、多くの人がスポーツを楽しんでいます。
スポーツは健康にも良いことですね。でも実は、「スポーツをする人は、歯の健康を損なうリスクが高まる」といわれていることをご存知でしょうか。
そこで、スポーツ習慣のある人が知っておきたい、歯に関する知識やケアのポイントをご紹介します。スポーツを思いっきり楽しむためにも、ぜひご一読ください。
- ※1 スポーツ庁、スポーツの実施状況等に関する世論調査、2020年
「歯の健康」がスポーツ中のパフォーマンスに影響する
歯の健康は、スポーツをするうえでもとても大切です。一流のアスリートは歯をとても大事にするといいます。なぜなら、「しっかり噛める」ことが、軸のブレない走りや、ジャンプしたときのバランスの良い空中姿勢、爆発的な瞬発力など、からだのパフォーマンスに影響することが知られているからです。
強く噛みしめることで噛みしめに使われる筋肉(咀嚼筋)が働くと、脳に刺激が行き、脳や脊髄にある全身の運動にかかわる神経が活性化されるため、全身の筋肉がより強く活動できます。
また、必要な時に食いしばれないと、重心が安定しにくいことがわかっています。重心が安定せず、からだの軸がブレやすいと、からだのバランス感覚にも影響を及ぼします。
奥歯でしっかり噛めることが、本来備わっている運動能力を最大限に発揮することにつながるのです※2。
- ※2 太田武雄、『アスリートも歯がいのち!』、クインテッセンス出版
スポーツ中のよくあるシーンに「歯の健康を損ねるリスク」が潜んでいた!
一方で、スポーツをする人は、「むし歯や酸蝕症(さんしょくしょう)など歯のトラブルに対するリスクが高くなる」ともいわれていることを、ご存知ですか?
原因はいくつかありますが、1つにはスポーツドリンクを頻繁に飲むことが挙げられます。
スポーツドリンクには糖分がたくさん含まれているうえ、酸性度が高いものが多くあります。頻繫に飲むと歯が溶けやすい口内環境になり、むし歯や酸蝕症のリスクが高まってしまいます。
加えて、唾液の分泌が減ることも、歯のトラブルリスクが高くなる一因です。
スポーツをしてたくさん汗をかくと、体内の水分が失われるため、唾液の分泌が減少してしまいます。すると、唾液の持つ洗浄作用(口内の汚れを洗い流す働き)や緩衝作用、再石灰化作用(酸により溶けた歯を健康な状態に戻す働き)など、歯を守る働きが機能しにくくなるからです。
むし歯と酸蝕症(さんしょくしょう)の違い
歯のトラブルとして、むし歯はよく耳にしますが、酸蝕症は聞き慣れない言葉かもしれませんね。
むし歯は、歯垢の中のむし歯菌が出す酸によって歯が溶ける病気です。
一方、酸蝕症とは、酸によって歯が溶ける症状のことです。酸性の食べ物(かんきつ系の果物や酢の物など)や、酸性の飲み物(オレンジジュースやスポーツドリンク、炭酸飲料など)が歯を直接溶かし、すり減りや欠けの原因になります。
どちらも歯が溶ける点は同じですが、酸蝕症は細菌が関与しないところがむし歯と異なる点です。
また、むし歯は歯垢の中でむし歯菌が出す酸により歯が溶けていくので、その範囲は限定的ですが、酸蝕症は酸性の飲食物などを摂ることで酸が口内に広がって起こるため、広範囲に歯が溶けるという点も違います。
スポーツをする人が気をつけたい!歯の健康を守る3ポイント
スポーツ中のよくある場面に、歯の健康を損ねるリスクが潜んでいたなんて意外ですよね。でも、心あたりがある人も多いのではないでしょうか。
では、スポーツを楽しみながら歯の健康を守るにはどうしたらいいのでしょう。ケアのポイントは3つあります。
1.スポーツドリンクの飲み方に気を配る
スポーツ中の水分補給が大切なことは、言うまでもありません。スポーツドリンクは、運動中に失われる水分、ミネラル、エネルギーを素早く補給できる飲料としてスポーツ時には欠かせないものです。しかし、歯にとっては、スポーツドリンクは気を付けなければいけない飲料でもあります。
スポーツドリンクはpHがおよそ3~4と低く、酸性の飲み物です。歯はpHが5.5以下になると、歯からミネラルが抜け出す、すなわち「溶ける」状態になります。
もちろんスポーツ中の水分補給は大切なので、スポーツドリンクを飲んだ後は、少量の水やお茶を口に含んだり、歯にスポーツドリンクが直接触れないようストローで飲むなど、ちょっとした工夫をすると良いですね。
また、スポーツのあとには、ストレッチなどのからだのケアに加えて、水やお茶で「口をすすぐ」など歯のケアも忘れずに行うと良いでしょう。
2.フッ素を上手に活用する
フッ素には、歯質を強化して酸に溶けにくくしたり、再石灰化を促進して初期むし歯※3の修復を助けたりしてむし歯を防ぐ働きがあります。日頃から「フッ素入りのハミガキ」を使って丈夫な歯を育てることを心がけると良いでしょう。
フッ素入りハミガキを使う際は、推奨される量(15歳以上で1~2cm)を使用するとともに、すすぎは少量の水で1回に留めることがポイントです。
ハミガキのほかに、フッ素配合の洗口剤(医薬品)もおすすめです。1日1回、所定量を口に含んでブクブクうがいをして使用します。液体なのでお口全体に行き渡りやすく、ブクブクうがいだけで良いので手軽に利用できるというメリットがあります。
- ※3 歯の表面に穴があいたむし歯になる一歩手前の状態
3.歯科の定期健診を受ける
歯やお口の健康を守るためには、歯科健診を定期的に受けることが大切です。口内に異常がなくても、半年ごとに「年2回」のペースで受けると良いでしょう。
定期的に歯科健診を受けると、いつでも気軽に相談できる「かかりつけの歯医者さん」ができるのも大きな収穫です。歯が痛くなった、突然歯の詰め物が取れたなどのトラブル時も、かかりつけの先生がいれば相談しやすく、心強いもの。歯医者さんも患者さんの状況をわかっているので、コミュニケーションが取りやすく、対応しやすいことでしょう。
スポーツと歯の健康の関係や、ケアのポイントがおわかりいただけましたか。歯が健康だと、運動面においても自分の力を存分に発揮できます。スポーツを楽しんでいる人、スポーツ中のパフォーマンスを上げたい人は、お口のケアにあらためて注目してみてはいかがでしょうか。
TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!
スポーツ中の歯のトラブル、どうしたらいいの?
「マウスピース」で口内の怪我予防も!
スポーツ中の口内の怪我の予防にはマウスピースが効果的です。使用については、歯科医院で相談すると良いでしょう。かかりつけの歯科医院があれば、より気軽に相談にできますね。
歯を持って、できるだけ早く「歯科医院」へ
スポーツには怪我がつきものです。万が一、人とぶつかったり転倒したりして歯が抜けてしまった場合は、できるだけ早く、抜けた歯を持って歯科医院へ行きましょう。状態が良ければ、自分の歯を元に戻すことが可能です。
抜けた歯は乾燥させない
抜けた歯を元に戻すためには、歯を乾燥させないように保存することが大切です。砂や土がついていたら、歯の根に触らないようにして流水で軽く洗い、学校の保健室などにある歯の保存液や牛乳につけて、歯科医院に急ぎましょう。
- 参考:安井利一ら、『スポーツ歯科入門ハンドブック』、医学情報社
この記事を作成・監修した
マイスター
オーラルケアマイスター
平野 正徳
ひらの まさのり
オーラルケア関連の基礎研究ならびに開発研究に20年以上携わってきました。 これまで得た知識と経験を活かして、歯とお口の健康に関する情報をお伝えします。
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