歯ぐきのおとろえが気になる人へ。歯ぐきケアを始めよう!
歯ぐきがやせる、ハリがなくなるなど、歯ぐきのおとろえを感じたら、歯ぐきケアを始めましょう。毎日のセルフケアでは、歯ぐきケアに適したハミガキ、ハブラシを使用する。定期的に歯科を受診する。そして、歯ぐきの健康に良い生活を送ることが大切です。
最近、「歯ぐきがやせてきた」「弾力がなくなってきた」など、歯ぐきのおとろえを感じることはありませんか?
健康な歯ぐきは薄いピンク色で引き締まり弾力がありますが、歯ぐきがおとろえてきたなと感じたら、歯ぐきのケアも始めましょう。でも、「毎日みがく歯と違って、歯ぐきはどうケアすれば良いかわからない」という方も多いのではないでしょうか。そこで、歯ぐきのケアに役立つ知識やセルフケアの方法をご紹介します。
歯ぐきの構造は、お肌と同じ2層構造
まず、歯ぐきの構造と働きについて簡単にご説明しましょう。
歯ぐきは、外界と接している「上皮組織」と、その内側の「結合組織」からなり、肌と同じような2層構造をしています。
「上皮組織」には、歯ぐきを守る働きがあります。健康な歯ぐきは、「上皮組織」の歯ぐき細胞同士が、細胞接着因子によってしっかり結合していて、歯周病原因子(歯周病菌や歯周病菌が出す毒素)が内部に侵入しにくい抵抗力の高い状態にあります。しかしながら、おとろえてきた歯ぐきでは、「上皮組織」の歯ぐき細胞同士の結合がゆるみ、歯周病への抵抗力が低い状態になっています。
「結合組織」は歯ぐきのハリを保ち、歯を支える働きを担っています。結合組織の約60%※1はコラーゲンでできていて、歯ぐき細胞がコラーゲンを作っています。このコラーゲンが歯ぐきにハリを与え、歯を支えるのに寄与しています。また、歯ぐきが下がる主な原因は、炎症による歯槽骨の破壊ですが、加齢に伴いコラーゲンの合成が低下することも歯ぐきが下がってくる一つの要因になりえます。健康な歯ぐきであれば、コラーゲンの「合成」と「分解」を繰り返すことで代謝を調整し、バランスを保っています。ところが、歯周病の発症・進行に伴って、このバランスが崩れると、コラーゲンが減少してしまいます。
- ※1 Periodontology2000、3、1993
歯ぐきケアのポイント
では、歯ぐきの健康を守るには、どうすれば良いのでしょうか? ポイントを紹介します。
ポイント1 毎日の歯みがき
毎日の歯みがきで、歯ぐきのケアに適したハミガキ、ハブラシを使うようにしましょう。
ポイント2 定期的な歯科健診
歯ぐきの状態は自分ではなかなかわからないもの。気づいた時はかなり進行している場合があります。そうなる前に、定期的に歯科医院を受診して歯ぐきの状態をチェックしてもらいましょう。
ポイント3 歯ぐきの健康に良い毎日の生活習慣
歯ぐきの健康は、日々の生活習慣とも関係があります。歯ぐきの健康に良い生活を心がけましょう。
歯ぐきの健康を守るセルフケア
1.歯ぐきケアに適した成分入りの「ハミガキ」を使用する
毎日の歯みがきでは、歯周病菌に効果がある成分(殺菌成分)に加え、「歯ぐきの外側(上皮組織)」も「歯ぐきの内側(結合組織)」もケアする成分が入ったハミガキを使用すると良いでしょう。
歯周病菌に効果がある成分の多くは、バイオフィルムの表面だけしか殺菌できないと言われていますが、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)は、バイオフィルムの内部まで浸透して歯周病菌をしっかり殺菌するのが特徴です。一方、歯ぐきの外側をケアする成分には、歯ぐきの表面を覆う上皮組織を強化する成分、また、歯ぐきの内側をケアする成分には、コラーゲンが壊れるのを防ぐ(分解を抑制する)作用がある成分や、歯ぐき細胞を活性化して組織の修復を促す作用のある成分などがあります。
ハミガキの商品パッケージには、成分の作用がわかりやすく表示されているものもあります。店頭でハミガキを選ぶ時は、パッケージの表示を参考にすると目的に合った製品が探しやすくなりますよ。
2.歯ぐきケアに適した「ハブラシ」を使用する
歯ぐきのおとろえが気になる方は、歯ぐきをマッサージできるハブラシを使うと良いでしょう。
歯ぐきマッサージは、歯周ポケットをケアするブラッシングで行うことができます。歯と歯ぐきの境目にハブラシの毛先を45度の角度であて、小刻みにみがくのがポイントです。そうすることで、毛先が歯周ポケット周辺の歯ぐきにもあたり、マッサージできます。ハブラシは、歯周ポケットと周辺の歯ぐきに毛先がフィットしやすいよう、ブラシ面が凸型に設計されたものがおすすめです。中央の毛が歯周ポケットの奥まで入って汚れをかき出すと同時に、外側の毛が歯ぐきにあたって効率よくマッサージできます。
<セルフケアで取り入れたい歯ぐきマッサージ>
「歯科医院」で定期的に歯ぐきをチェックすることも大切
歯ぐきの状態は自分ではなかなかわからないもの。歯ぐき下がりなどは、歯のみがき方に原因がある場合もあります。もちろん、歯周病のチェックも重要です。歯周病は歯ぐきの健康に深く関わる病気ですが、症状が進むまで、なかなか自覚しにくいという特徴があります。「自分は大丈夫」と思っていても、もしかしたら歯周病が進行しているかもしれません。そのため、歯科医院で定期的に歯ぐきの状態をチェックしてもらい、歯石の除去や正しいブラッシング法のアドバイスなどを受けると安心です。少なくとも1年に2~3回は受診するようにしましょう。
歯ぐきの健康に良い生活習慣
歯ぐきの健康は、日々の生活習慣とも関係があります。まずは「喫煙」「ストレス」「食生活」に気を配ることからスタートしてみませんか。
<喫煙>
一般的に「喫煙者はタバコを吸わない人に比べて歯周病にかかりやすい」といわれています。またタバコの本数に比例して、歯周病が重度になりやすいこともわかっています※2。その理由として、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質が血管を収縮させたり、タバコの不完全燃焼で生じる一酸化炭素が血中のヘモグロビンと結合したりすることで、歯ぐきに栄養や酸素が届きにくくなることがあげられます。
また、喫煙すると唾液が出にくくなって口内の細菌が増えやすくなるため、歯周病菌が増殖する要因にもなります。その結果、歯周病にかかりやすくなるのです。
- ※2 Scott L. Tomar、etal. J. Periodontol、71、2000
<ストレス>
ストレスが歯周病に関与することは、古くから指摘されています。過度のストレスは、歯ぐきの血流量の減少や、唾液分泌の低下などを招きます。その結果、歯周病にかかるリスクが高まると考えられています。また、ストレスは生活リズムの乱れを招き、口内の衛生状態の悪化、喫煙、飲酒などを引き起こし、間接的に歯周病を悪化させるとも考えられています。十分な睡眠をとる、軽い運動や音楽を聴いてリラックスするなどして、できるだけストレスをためないように心がけると良いでしょう。
<食生活>
歯ぐきの健康を守り、歯周病を防ぐためには、食生活に気を配ることも大切です。
栄養バランスが整った食事は、歯周病を含む生活習慣病の予防に欠かせません。また、栄養状態は病気から体を守る免疫機能にも影響を及ぼします。
忙しい時などは、麺類や丼などの単品料理を食べることが増えて栄養バランスが偏りがちですが、ごはんや麺などの「主食」、肉や魚などのたんぱく質を含む「主菜」、野菜や海藻などを含む「副菜」を組み合わせた食事を意識して、バランスのとれた規則正しい食生活を目指せると良いですね。
- 参考 村上伸也ら、臨床歯周病学、医歯薬出版、2020
今回は、歯ぐきがおとろえるメカニズムやそれにともなうダメージ、歯ぐきの健康を守るポイントをご紹介しました。歯ぐきは、歯を支える大事な組織。適切なケアでいつまでも健康な歯ぐきを保ちたいですね。
この記事を作成・監修した
マイスター
オーラルケアマイスター
平野 正徳
ひらの まさのり
オーラルケア関連の基礎研究ならびに開発研究に20年以上携わってきました。 これまで得た知識と経験を活かして、歯とお口の健康に関する情報をお伝えします。
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