歯周病の「症状」と進行過程〜セルフチェックで早めに気づいて予防しよう〜

歯周病の「症状」と進行過程〜セルフチェックで早めに気づいて予防しよう〜

「歯周病」は、歯と歯ぐきの隙間の「歯周ポケット」にたまった「歯垢」から出る毒素などによって、歯周組織に炎症が起こる病気の総称。歯石の付着や歯並びの悪さ、生活習慣もリスクファクターになります。ケアには、歯周ポケットのブラッシングや歯と歯の間の清掃、デンタルリンスの使用のほか、生活習慣の見直しを。

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歯周病ってどんな病気?

「歯周病」という言葉はご存知の方も多いでしょう。でも、その病気の正体を、きちんと答えられるという人はそう多くはないかもしれませんね。

歯周病とは、歯と歯ぐきの隙間の歯周ポケットにたまった細菌の塊(これが、いわゆる「歯垢」のことで、バイオフィルムと呼びます。)から出る毒素などによって、歯を支える歯周組織に炎症が起こる病気の総称です。よく聞く言葉として、

・炎症が歯ぐきだけにある状態を「歯肉炎」
・炎症が深部まで進行し、歯を支えている骨が破壊された状態を「歯周炎」
といいます。

症状が進行すると、最後には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病は、ごく身近な病気です

日本ではどれくらいの人が歯周病に罹患しているのでしょうか?
日本では30代以上の3人に2人※1、小中学生(10~14歳)でも約2割※2が、歯周病に罹患しています。
歯周病は中高年からの病気と思われがちですが、子どもから大人までの病気なのです。

また、歯周病は痛みなどの症状がなく進行するため、「噛んだ時に違和感がある」などの自覚症状が出てくる頃には、かなり進行してしまっている場合があるので、歯周病の症状をきちんと理解し予防することが大切です。

  • ※1厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査(歯肉に所見のある者の割合)※2厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査(歯肉炎のある者の割合)

歯周病の具体的な症状はどのようなもの?

それでは、歯周病になるとどんな症状がおこるのでしょう。歯ぐきの状態別に紹介します。

健康な歯ぐき

健康な歯ぐきの色は薄いピンク色で、弾力があり引き締まっています。

歯肉炎

歯ぐきに炎症が起き、歯ぐきが赤みを帯びる、歯ぐきがぶよぶよになる、歯みがき程度の軽い刺激で出血するなどの症状が見られます。歯肉炎の段階であれば、丁寧なブラッシングや歯間清掃によって症状を改善することができます。

歯周炎(歯槽膿漏)

歯ぐきの炎症が歯周組織の深部まですすみ、歯を支えている骨(歯槽骨)が破壊されている状態です。歯ぐきが赤紫色になる、歯がグラグラする、血や膿が出る、歯ぐきが退縮し歯が長く見える、強い口臭があるなどの症状が見られます。破壊された歯槽骨は元に戻ることはありません。早めのケアが大切です。

  • ※画像提供:(公財)ライオン歯科衛生研究所

なぜ歯周病になってしまうのか?その原因とは

歯周病の直接の原因は「歯垢」!

歯周病に直接かかわっている原因は「歯垢」です。歯と歯ぐきの境目の歯周ポケットに、歯垢がたまると、その中の歯周病菌が出す毒素などによって歯ぐきに炎症が起こります。

「口内環境」や「生活習慣」は歯周病のリスクファクター!

歯周病の直接の原因は歯垢ですが、「口内環境」や「生活習慣」の中には歯周病を発症しやすくしたり、悪化させたりするリスクファクター(危険因子※2)が潜んでいます。

  • ※2 リスクファクター:ある特定の疾病を発症させる確率を高めると考えられる要素(危険因子)

1.「口内環境」:局所的なリスクファクター
歯石の付着や歯並びの悪さは、歯垢がたまる原因にもなります。また、口呼吸で口の中が乾燥すると歯垢がつきやすくなったり、歯ぐきの抵抗力が弱まり炎症が起こりやすくなります。歯ぎしりは歯周組織に過度に負担がかかり歯周病を悪化させます。このように、日常的にクセになっている悪い習慣にも、歯周病を悪化させるリスクが潜んでいるのです。

2.「生活習慣」:全身的なリスクファクター
喫煙は歯周病を悪化させる大きなリスクファクターです。糖尿病、ストレスなどは細菌感染に対するからだの抵抗力を弱め歯周病悪化の要因となります。また不摂生な生活、不規則な食事、栄養の偏りなどは全身の健康に悪影響を及ぼし、歯周病を悪化させる要因になります。

どんな状態だと歯周病?歯周病セルフチェックをしてみよう

早めに歯周病のサインに気付き、適切なケアを行えば、歯周病を予防することができます。下の「歯周病のセルフチェックシート」で確認してみましょう。

歯周病セルフチェック

□ 歯肉の色が赤い、もしくはどす黒い。
□ 歯と歯の間の歯肉が丸く、腫れぼったい。
□ 歯肉が、疲労時やストレスがかかっているときに腫れやすい。
□ 歯肉が退縮して、歯と歯の間にすき間がでてきた。
□ 歯が長く伸びてきた。
□ 歯の表面を舌でさわるとザラザラする。
□ 歯みがき時などに歯肉から出血しやすい。
□ 起床時に口が苦く、ネバネバして気持ち悪い。
□ 歯肉を押すと白い膿がにじみ出てくる。
□ 歯の動揺がある。
□ 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい。
□ 上顎の前歯がでてきた。
□ 人から口臭があると言われる。

  • 出典:野口俊英ほか:歯周病のチェックポイントと予防法、口腔ケアのABC(河合幹ほか編)、医歯薬出版、1999

歯周病にかかわる「歯周ポケット」と進行過程

歯周病は歯と歯ぐきの隙間にみがき残した歯垢が原因となり、歯ぐきに炎症が起きた状態です。炎症が進むと歯と歯ぐきの隙間が深くなり「歯周ポケット」ができます。歯周病の原因菌は、酸素の少ないところを好むため、歯周ポケット内で増殖し、さらに歯を支える歯ぐきや骨などを破壊していきます。

歯周病は静止期と活動期を繰り返す

歯周病は、体の抵抗力が強いときには進行を一時的に停止し「静止期」に入ります。しかし、体の抵抗力が弱まり歯周病菌の力が強くなってくると再び「活動期」に入り、症状が現れ進行していきます。

こうして歯周病は「活動期」と「静止期」を繰り返しながら、重度の歯周病(歯槽膿漏)へと静かに進行していきます。「静止期」には出血や腫れなどの自覚症状がほとんどないため、気付かないうちにひどくなるケースが多いのです。歯周病が沈黙の病気“サイレントディジーズ”と呼ばれるのはそのためです。歯周病の進行過程は、下記のようになります。

歯だけじゃない!全身に影響のある歯周病のリスクとは

歯周病は口の中だけの病気だと思われがちですが、歯垢中の細菌や歯ぐきの炎症によって作られた物質が血中に入り込むことで、全身の健康にも影響を及ぼすことが最近の研究で分かっています。歯ぐきの病気なのになぜ全身に悪影響が出る病気につながるのか不思議に思う方もいらっしゃるかと思います。歯周病と全身の病気との関係についてはこちらをご覧ください。

歯周病を「予防」しよう!

あきらめないで!歯周病は予防できる

歳を重ねて、歯周病になるのは仕方がないとあきらめている方もいるかもしれませんが、毎日のケアで歯周病は「予防」できます。ここでは、歯周病予防のための歯みがきや生活習慣など、ケアのポイントをご紹介します。

毎日の歯周ポケットケア

歯周病は、歯周ポケットにできた歯垢が原因となって発症するので、歯周病を予防するにはこの歯周ポケットをきれいにすることが肝心です。

1. 歯と歯ぐきの境目を意識してブラッシングする
歯周ポケットをきれいにするには、歯と歯ぐきの境目を意識してみがくことが大切です。ハブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当て、軽い力で小刻みに動かしてみがきましょう。

ハミガキは、歯周病菌を殺菌する成分に加え、歯ぐきの腫れ、出血を抑えるなどの歯ぐきに作用する薬用成分が配合された製品を選びましょう。

ハブラシは先端が細く加工された超極細毛がおすすめです。歯周ポケットに毛先が届きやすく効果的に歯垢の除去ができます。音波アシスト機能のついたハブラシならより効率的です。

2. デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間を清掃する
ハブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシを使えば、より効果的に歯と歯の間の歯垢を除去できます。お口の状態に合わせ、次のように使い分けます。

・歯と歯の隙間が狭い部分→デンタルフロス
・歯と歯の隙間が広い部分→歯間ブラシ

3. 寝る前にはデンタルリンスを使用する
寝ている間は唾液の分泌が減少し、口の中の細菌が増殖しやすくなります。就寝前に殺菌剤入りのデンタルリンスを使用しましょう。寝ている間の口腔内細菌の増殖を抑制することで歯肉炎が予防できます。

生活習慣の見直しと改善を!

歯周病は生活習慣病ともいわれます。生活習慣を見直すことで、歯周病の発症や進行を防ぎましょう。

生活習慣の改善ポイント

・食習慣を見直して栄養バランスのとれた規則正しい食生活をする
・十分な睡眠で抵抗力をつける
・喫煙は歯周病リスクを高めるので、禁煙を心がける

定期的に歯科医院でチェックをする

歯周病は歯ぐきからの出血などの症状があっても、痛みなどの自覚症状が少ないため放置されがちです。歯周病は初期の段階なら、毎日のセルフケアで、もとの健康な歯ぐきに戻すことが可能です。1年に2~3回 は歯科医院を受診し、歯ぐきの状態をチェックしてもらいましょう。

よくある質問

歯周病と歯槽膿漏とはどう違うの?

歯ぐきだけに炎症がある歯肉炎と、さらに深部の歯周組織にまで炎症が及んだ歯周炎の状態をまとめて「歯周病」といいます。「歯槽膿漏」とは、比較的古くから使ってきた呼称で、慢性の歯周炎の状態のうち、歯槽(歯根が収まっているあごの骨の穴)や歯周ポケットから膿の排出がみられる症状を言います。

なぜ歯石を取った方が良いの?

歯石とは、歯に付着した歯垢に、唾液中のカルシウムやリンが沈着して石灰化したものです。歯石の表面は凸凹しているため細菌が付着しやすく、さらに歯垢が形成されやすくなるため、歯周病の発症・悪化の一因になります。また、歯石は歯みがきでは除去することができません。歯石ができたら、歯科医院で取り除いてもらいましょう。定期的に除去することをおすすめします。

子どもも歯周病に注意したほうがいいの?

歯周病は大人の病気と思われがちですが、実は、厚生労働省の調査※3 によると小・中学生(10~14歳)でも約2割の人は歯周病(歯肉炎)に罹患しています。ですから子どもでも、歯周病に対する注意が必要です。歯と歯ぐきの境目も意識してみがくようにしましょう

  • ※3 厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査(歯肉炎のある者の割合)

女性ホルモンと歯周病って関係があるって本当?

女性はライフステージのなかで、女性ホルモンの影響を受け歯周病になりやすい時期があります。たとえば、思春期・妊娠期・更年期では女性ホルモンの分泌が変化することで口の中に影響を与えます。特にお口の中の清掃状態が悪い場合や、すでに歯周病がある場合は女性ホルモンの分泌の影響を受けやすいため、からだの健康とともにお口の健康にも十分気をつけましょう。

喫煙と歯周病って関係あるの?

一般的に喫煙者は「タバコ」を吸わない人に比べて「歯周病」にかかりやすいといわれています。またタバコの本数に比例して、歯周病が重度になりやすいこともわかっています。タバコに含まれる「ニコチンなどの有害物質」が血管を収縮させたり、タバコの不完全燃焼で生じる一酸化炭素が血中のヘモグロビンと結合したりすることで、歯ぐきに栄養や酸素が届きにくくなります。その結果、歯周病にかかりやすくなるのです。歯周病治療の第一条件に「禁煙」をあげる歯科医師も少なくありません。お口の健康のためにも、タバコは吸わないことが望ましいでしょう。

歯周病の治療後はどのようなケアをしたら良いですか?

歯周病は治療が終わってからの毎日のケアが肝心です。回復したお口の中の健康をずっと維持するには、歯科医師の指導に基づいた毎日の歯みがきや生活習慣、そして歯科医師・歯科衛生士による定期的なチェックが必要です。

この記事を作成・監修した
マイスター

平野 正徳

オーラルケアマイスター

平野 正徳

ひらの まさのり

オーラルケア関連の基礎研究ならびに開発研究に20年以上携わってきました。 これまで得た知識と経験を活かして、歯とお口の健康に関する情報をお伝えします。

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