これだけは守る!「食中毒」を予防する3原則~原因・感染源・症状も解説~
食中毒を防ぐには、原因となる細菌やウイルスを体内へ侵入させないことが大切。そのための3原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」。水洗いでは落ちない細菌もあるので、生肉・生魚・野菜をさわった手は、石けんやハンドソープで洗いましょう。
予防ができれば、食中毒はこわくない!
ジメジメした梅雨時は、「食中毒」が起こりやすくなる季節。
厚生労働省の統計資料によると、多くの食中毒は飲食店で発生していますが、実は全体の約2割は、家庭で発生しているのです※。「うちの食事で、家族が食中毒になった」なんて事態は、絶対に避けたいですよね。
だからといって、「この肉にも、卵にも細菌がいるのでは!?」と疑い出したらキリがないですし、料理をおいしく食べることができなくなってしまいます。
買ってきてすぐの新鮮な食材を、キレイに洗った手で調理して、体調に問題のない人が食べる限りは、食中毒になる可能性は低くおさえることができるのです。
過剰にこわがるのではなく、食中毒について正しく知って、家庭でやるべきポイントをしっかりおさえましょう。
- ※厚生労働省「令和3年食中毒発生状況」 原因施設が判明したものの構成割合
これだけは守る!食中毒を予防する3原則
細菌の多くは気温が上がると増殖し、湿気を好む性質があります。梅雨入りから残暑のきびしい9月ごろまでは食中毒のリスクが高くなりますので、しっかりとした予防策を!
食中毒を防ぐには、原因となる細菌やウイルスを「体内へ侵入させない」ことに尽きます。そのための大原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つです。
- ※以下のポイント1~3は細菌についてまとめています。細菌は食品につくと、食品の中で増えますが、ウイルスは増えないので、ポイント2の「増やさない」はあてはまりません。1と3は細菌もウイルスも同じです。
基本原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」
1. 手の細菌を食べ物に「つけない」→対策は手洗いが肝心!
一見、キレイに見える手にも、細菌はたくさんついています。
調理に取りかかる前には、石けんやハンドソープを使ってしっかり手洗いをしましょう。手についている細菌が、食べ物や調理器具、食器につかないように気を付けて!
また、生の肉や魚の調理に使ったまな板や包丁、ボウル、菜ばしなども、ほかの食品に細菌を移さないように、調理のたびにキレイに洗いましょう。
2. 食べ物についた細菌を「増やさない」→対策は低温で保存する!
食品に細菌がついてしまっても、食品中で増えなければ、食中毒にはなりません。ですから、細菌を増やさないような保存を心がけましょう。
生鮮食品を買ったら放置せずに、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に。多くの細菌の増殖速度は、10℃以下でペースダウンし、-15℃以下でストップします。冷蔵室と冷凍室は、この温度以下をキープするのがおすすめです。
ただし、それでも細菌は死滅するわけではないので、油断は禁物!細菌を増やさないためには、購入した食品は賞味期限・消費期限内に「なるべく早く食べきってしまうこと」です。
例えば、肉はすぐ食べないなら、水気をふき、密封して冷蔵・冷凍保存するのがおすすめです。
3. 食べ物や調理器具についた細菌を「やっつける」→対策は加熱調理する!
ほとんどの細菌やウイルスは熱に弱く、食品についていても加熱すれば死んでしまいます。肉や魚に限らず、鮮度が不安なら野菜も火を通すほうが安心です。
加熱が不十分だと細菌が生き残り、食中毒が発生する可能性がありますので要注意!
特に、バーベキューなどで肉を焼く際には、中までよく火を通しましょう。
目安は、食品の「中心温度が75℃以上で、1分以上」加熱することです。
ただし、加熱調理で完全に死滅しない細菌や、死滅しても毒素が残る場合もありますので、加熱調理だけを過信せず、調理後の食品は早めに食べるか、冷蔵・冷凍保存するよう心がけましょう。
細菌を落とせていない?見落としがちな「調理中の手洗い」
基本の3原則の中でも、冷蔵保存や加熱調理は気を付ける方が多いのではないでしょうか。案外、いい加減になりやすいのが、手についた細菌を落とす「手洗い」です。
効果的に細菌やウイルスを除去するには、どんな手洗いをしたら良いのでしょうか?
調理中の手洗いは「水かお湯のみ」という人も多数
ライオンでは、週に3回以上調理を行う、20~50代の男女70名に「食材をさわったあとの手洗い」について聞いてみました※。
すると、豚肉や鶏肉などの「生肉」をさわったあとは、約70%の人が「ハンドソープもしくは固形石けん」で手を洗っていて、中には「台所用洗剤」を使用している人もいましたが、10%程度の人は「水もしくはお湯のみ」で手を洗っていました。
また、もやしなどの「野菜」をさわったあとは、約90%の人が「水もしくはお湯のみ」で手を洗っていることがわかりました。
- ※ライオン調べ、2015年4月
生肉をさわったあとの手の細菌は、水洗いでは落としきれない!
実際に、ハンバーグの調理中にひき肉をこねた手には、下の画像のように「大量の細菌」が付着していました。そして、これらの細菌は水洗いをしただけでは落としきれていないことがわかりました。
- ※30〜40代女性4名に実際にハンバーグを作ってもらい、調理中の手の細菌をサンプリング/培養条件:一般生菌・37℃・1day
また、野菜でも同様の実験を行うと、泥付きの野菜や加熱して食べる野菜など、一部の野菜をさわったあとの手からは細菌が検出され、その細菌は「水洗い」では落ちないこともわかりました。
加熱が必要な肉、魚、野菜をさわったあとは「ハンドソープ」で手洗いを
石けんやハンドソープを泡立てて洗うと、細菌やウイルスを細かい泡が吸い上げて、水洗いよりも効率良く除去することができます。
そのため、生肉や生魚を扱った時だけでなく、野菜をさわったあとにも、ハンドソープをしっかり泡立てて洗うのがおすすめです。殺菌成分の入ったハンドソープを使えば、さらに安心!急いでいると「手の平だけ」になりがちですが、「指先」など食材にふれた部分の汚れをよく落とすように意識して、ていねいに洗いましょう。
また、いくらキレイに手洗いをしても、手をふくタオルが汚れていては意味がありません。
水と食べ物を扱うキッチンは、家の中でもっとも細菌が多い場所。キッチンで使用するタオルはマメに交換するようにしましょう。
何げなくやっていませんか?細菌を増やす・広げるNG行動
さて、ここまでに紹介した細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」の3原則について、皆さんは日頃、ちゃんとできている自信はありますか?「ちょっと自信がないなぁ」という方は、知らず知らずのうちに「細菌を増やす・広げるNG行動」をしているかもしれません。
以下に当てはまるものがないか、確認してみてくださいね。
・冷凍と解凍を繰り返す
冷凍した食品を解凍するのは1回だけにしましょう。冷凍と解凍を繰り返すと細菌が増殖する場合があります。
・冷凍した食品を、室温で自然解凍している
室温くらい~35℃前後までは、細菌が増殖しやすい温度です。冷凍した食品は、前日に冷蔵室に移して低温でゆっくり解凍するか、電子レンジで解凍しましょう。
冷凍した肉は、ラップをはずしてクッキングペーパーにのせて電子レンジにかけると、ペーパーが溶け出したドリップを吸い取ってくれます。
・野菜室にはいつも、しおれた野菜が…
食品は、傷んでいるところから細菌が増えてしまうため、「傷まないうちに食べる」ことが食中毒予防になります。野菜室にしおれた野菜がないか、定期的に点検を!特に、生で食べるサラダ野菜は新鮮なうちに、キレイに見えても流水でよく洗ってから調理しましょう。
・生肉を水で洗っている
鶏肉などの生肉を洗うと、肉に付着している細菌が水とともに飛び散り、調理器具や食品を汚染する場合があるため、生肉は洗わないことが推奨されています※。
- ※米国農務省 https://www.usda.gov/media/press-releases/2019/08/20/washing-raw-poultry-our-science-your-choice
内閣府食品安全委員会 https://www.facebook.com/cao.fscj/posts/2972594432956435/
・生肉を切ってから、野菜を切っている
サラダ野菜の下ごしらえは、生肉や生魚を調理する前が基本です。野菜を全部切ってから、生肉や生魚を切るという順番を心がけましょう。まな板は、「肉・魚用」と「野菜用」に分けると、さらに安全です。
・食品をさわったあとに手を洗わない、または水だけで洗うことがある
ライオンの調査では、「食品を袋やパックから取り出したあと」や「切った食材を、手で鍋やフライパンに移したあと」などに、手を洗わない方が多いことがわかりました。その手で調理の盛り付けなどをしてしまうと、体内に細菌が入ってしまうことがあるかもしれません。
・包丁やフライパンなどの調理器具の「柄や持ち手部分」を洗っていない
包丁やフライパンは、汚れている部分だけを洗いがちですが、「柄や持ち手部分」は細菌が付着しやすい危険ゾーン!ライオンの調査では、調理後の「包丁やフライパンの持ち手」「ボウルのフチ」などの半数以上から大腸菌群が検出されました。「柄や持ち手部分」も忘れずしっかり洗いましょう。
- ※培養条件:大腸菌群・37℃・1day 写真は代表的なものを掲載
・作りおきのおかずは温め直さない、または軽く温める
食べ残した食品や、多めに作りおきしているおかずも、十分に加熱しましょう(75℃で1分以上)。電子レンジの温め直しは加熱ムラが出やすいので、中心まで熱々になるようしっかり加熱してください。カレーやみそ汁、スープなどは、煮立つまで加熱します。
「時間が経ち過ぎた」「ニオイがあやしい」というものは、思い切って捨てる勇気も必要です。
・調理に使う道具やスポンジを除菌していない
調理に使ったまな板や包丁、ふきん、スポンジなどには、たくさんの細菌がついています。洗剤でキレイに洗ったあと、台所用洗剤やアルコールスプレーで除菌したり、熱湯をかけるなどしましょう。
いかがでしょう。皆さんは、いくつ当てはまることがありましたか?
頭に入れておきたい!食中毒の原因・感染源・症状まとめ
食中毒の予防を徹底的に行うには、まずは「敵」をよく知ることから。ということで、最後に食中毒の原因になる細菌とウイルスの種類、主な感染源、具体的な症状について、わかりやすく表にまとめました。
食中毒には、「細菌性」と「ウイルス性」の2つの種類があります。
細菌やウイルスは、食べ物や飲み物そのものについていることもありますし、手や調理器具などについていて、間接的に体内に侵入することもあります。
軽症ですむものも多いですが、重症化するものや致命率が高いものもあるため、免疫力の弱い乳幼児や高齢者、妊婦などは特に注意が必要です。
細菌性食中毒
食中毒を引き起こす細菌には様々な種類があります。中には「O157」や「ボツリヌス菌」など、重症化するものもあります。
ウイルス性食中毒
「ノロウイルス」による食中毒が主なものです。11~3月ごろの冬場に発生しやすいのでご注意ください。
食中毒は「なんとなくこわい」と思っているだけでなく、キッチンのどんなところに細菌が潜んでいるのか、そしてどんな行動が正解でどんな行動がNGなのかを知っておくことで、確実に予防することができます。
これからの梅雨シーズンも、細菌やウイルスを「寄せつけない!撃退できる!」キッチンにして、安全に楽しく、おいしく料理を作りましょう。
この記事を作成・監修した
マイスター
衛生マイスター
浅野 ほたか
あさの ほたか
界面活性剤の基礎研究14年、身体洗浄・消毒(手、身体、毛髪)や台所用洗剤、調理分野の製品開発17年と、およそ30年間研究に携わってきました。
これまでの経験を活かし、生活における様々なシーンでの衛生に関わる情報をわかりやすく発信していきます。
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