野田せいぞの快便の世界！うんちについて専門家に取材したら奥が深すぎた話
スルっと快便だと、なんだかうれしくなる。「うんち」と聞くと、ついニヤニヤしてしまう。そんな人もいるのではないでしょうか。大人になった今、「うんちって...実は奥深い存在なのでは？」と感じ始めたライター・野田せいぞさんが、長年気になっていたことから、心身の健康に関連することまで、あらゆる疑問を専門家に聞き、健やかになるための「うんち逆算生活」に励んでみました！
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うんちって…すごく気になる
というわけで今回は、腸の専門医である江田先生に、うんちに関する長年の疑問をたくさんぶつけてみます！
江田 証（えだ あかし）
医学博士。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国の内外から来院する多くの患者さんを胃内視鏡、大腸内視鏡で診察している。消化器に関連した著書多数あり。
なぜ我々は「うんち」の話題で盛り上がってしまうのか
昔から「うんち」って不思議な魅力があると思っていました。そもそもなんですが、「うんち」と「うんこ」って何か違いがあるんですか？
そうですね。はっきりとしたことはお伝えできないのですが、語源に秘密がありそうです。「うんち、うんこ」の語源は「阿吽（あうん）の呼吸」から来ているという説があります（※諸説あり）。
阿吽の呼吸…
「阿（あ）」は始まりを意味し、「吽（うん）」は終わりを意味します。便は最終的（終わり）に体外に排出されるものなので「うん」と呼ばれており、大小便を「置く」場所が「吽置（うんち）」と中国で名付けられました。それが「うんち」の語源だといわれています。
阿吽の呼吸から「うんち」にたどり着くってすごいですね。
中国から日本に「うんち」という言葉が伝わったのは室町時代の頃だったそうです。当時の人々には、愛着のあるものの名前に「こ」と付ける習慣がありました。その習慣の流れで「うんち」は「うんこ」と呼ばれるようになったといわれています。
そんな昔からある言葉なんですね！確かに自分のからだから出てきたものだから愛着があるのかも…？
そうですね。室町時代の人も愛称を付けたくらいなので、現代の人たちが、うんちで盛り上がるのも、不思議なことではないかもしれませんね。
室町時代… 足利義満が金閣寺とか造ってた頃からのウケを受け継いでいたんだな…。
うんちと心身はつながっている
スルっといいうんちが出ると、静かにテンションが上がります。あれはなぜなのでしょう…？うんちが出る、出ないによる「からだや心への影響」ってあるのでしょうか？
たくさんあります。「明確な便意を感じて、便座に座り、排便する」ことで、人間の脳内では、神経伝達物質の「エンドルフィン」が分泌されます。これにより幸福感やスッキリ感を味わえるんですよ。
おお！あの排便の爽快感は脳内物質によるものだったのか…。
そうなんです。排便はメンタルにとても影響していて、逆に悩みごとや緊張するような出来事があると、排便が思うようにできなくなるという報告もあります。
そういえば…小さい頃、トイレの壁の木目が口に見えて、トイレに行くのが怖くなって、いざ便座に座ってもなかなか出なくなってしまって便秘になったことがありました。旅行先で便秘になりやすいと聞いたこともあります。
大腸が良く動いて排便しやすくなるのは「副交感神経が働いてリラックスしている時」です。でも、旅先など慣れない環境だと、緊張して交感神経が優位に働いてしまうこともあるので、そういうシチュエーションだと、便秘がちになってしまう可能性はありますね。
腸内環境を整えると、たくさんの健康上のメリットがある！
「腸内環境を整えると快便になる」というイメージだけは持っているのですが、これは合っていますか？
はい。合っていますよ。腸内環境を整えると快便に付随して様々なメリットがあります。
詳しく知りたいです！
神経伝達物質の「セロトニン」って聞いたことはありますか？
なんとなくあります！
セロトニンは、その9割程度が腸内で作られているのですが、腸の動きを活発にしてくれるだけではなく、精神を安定させる働きもあるんです。逆にセロトニンが少ないと腸の動きも鈍くなり、気持ちも晴れないということがわかっています。
セロトニン、友達になりたい…。
便秘や下痢に悩む人は、肌あれや冷え、むくみなどの症状にも悩んでいることがあるのですが、快便になって腸の血流やリンパの流れがスムーズになれば、これらが緩和されることもありますよ。
それはうれしいですね。
また、腸と脳の働きは相関関係にあります。それゆえ腸は第二の脳と呼ばれることがあります。脳がストレスを感じると自律神経が乱れて不眠や無気力などの症状がでることがありますが、腸を整えることが改善のきっかけの1つになるかもしれません。
すごい…。腸を整えることって良いことだらけだ…。
そうなんです。また、便秘になると胃腸の働きが鈍くなって、消化や吸収に時間がかかります。その結果、食物に含まれた栄養を必要以上に吸収して摂取カロリーがオーバーにもなりやすいのです。肥満予防のためにも、日頃から快便であるに越したことはありません。
腸内環境が整うことによる健康効果、すばらしいですね…。快便は健康のバロメーターの1つなんだ！
うんちは回数よりも、気持ち良く出すことが大事!?
…ということは、うんちは毎日出した方がいいのでしょうか？
「日本消化器病学会」が規定している便秘の定義は「週に3日未満の排便」です。だから毎日出てなくても、週に3日出ていれば良いということになります。
意外と少ない…。
毎日便を出していても、残便感（便が残っている感じがすること）や排便困難感（便がなかなか出ないこと）がある場合は便秘となります。だから回数にこだわるよりは、便が残らずにスルっと出る状態が理想です。
量より質が大事ということですね…。
ところで野田さんは、ウサギからゾウまで、あらゆる大きさの動物たちがどれくらいの時間をかけて排便しているか、ご存じですか？
1分とか…？いやゾウは大きいし、もっと時間かかりそうです。
実はどの動物も平均「12秒」なんです。
12秒⁉⁉はや！
便の臭いは敵を引き付けてしまうので、動物は排便に時間がかかると命の危険にさらされてしまうんです。
確かにトイレ中って隙だらけですもんね。
できれば「迅速かつ完全な排便」が理想です。
人間の場合、90％は55秒以内で排便が終わります。便座に座ってから1分以上いきむのは、なるべく控えてほしいですね。
それはなぜですか？
力むことで血圧が30ぐらい上がってしまうことがあるんです。実際、トイレで心肺停止に陥った患者さんが救急搬送されるケースも少なくありません。
人生の最期がトイレはちょっとイヤだな…。
そうですよね。先ほどお伝えしたように、腸内環境を整えて快便になれば、健康にとってのメリットがたくさん得られるので、「良いうんち（理想の状態の便）」を目指していきましょう！
理想の便、すなわち「良いうんち」とはどんなもの？
良いうんちとはどのような状態を指すのでしょうか？
下記のような図を見たことありますか？「ブリストルの便性状スケール」というんですけど…
保健室に張り出されていた記憶があります！
この表のType4「普通便」、いわゆる“熟したバナナのような便”が理想です！ここに形を近づけていくほど健康にとってメリットがあり、QOL（生活の質）が上がっていきます。
うんちガチャのSSR（※）ということですね…
※SSRとは
Super Special Rare（スーパー・スペシャル・レア）の略。オンラインゲームやカードゲームを楽しむ人たちがこぞって欲しがるようなアイテムやキャラクターを指して使われる。つまり出ると超うれしい。
そういえば昔、知り合いの便が大きすぎて流れないという事件があったのですが、食事の内容によって便の大きさは極端に変わるものなのでしょうか？
今の日本人の便の重さは平均約200グラムと言われています。ところが戦前は、今よりも食物繊維をたくさん摂っていたので、約400グラムもあったと言われているんですよ。
今の倍！？
一方、アメリカ人の便の重さは約100グラム。便の重さは食べるものによって変わるんです。太平洋戦争中、日本軍が占領していた場所にアメリカ軍が上陸した際、どれぐらい日本兵がいるかを調べるためにトイレの便の量を調べたそうです。当時の日本人は1回あたり約400グラムの便を出しているから「大量の兵士がいる！」と勘違いされたといわれています。
おもしろい！ウンの勝利ですね！
つまり、野田さんの知り合いの方は食物繊維をたっぷりと摂っていたから、大きな便が出たのではないでしょうか。
そういうことだったのですね…！うんちは、便器の水に浮いている方が良いと聞いたのですが、これにはどのような理由があるのでしょうか。
水素ガスがたくさん含まれている便は水に浮きます。よって、食物繊維の多い和食を食べている人の便は水に浮く傾向があるんですよ。一方で、肉をたくさん食べる人の便は沈む傾向にあります。
便が浮いている人は、食物繊維をたくさん摂っているということなのですね。つまり、水に浮いているのは良いうんちと言えるのでしょうか？
いえ、一概にそうとは言えません。膵炎（すいえん）という、お酒の飲みすぎなどの影響で膵臓から消化酵素（アミラーゼやリパーゼなど）が出なくなる病気がありまして。消化酵素が出なくなると、脂分がうまく消化できなくなるんです。そして出た「脂肪便（油っぽい便）」も、実は水に浮きます。
水に浮いているかどうかだけでなく、よく観察することが大事ですね…。
そうですね。油断は禁物です。
良いうんちを出すために大切なことは？
快便のためには適切な水分摂取が大切と聞いたことがあります。1日にどのくらいの量の水分を摂るのが良いでしょうか…？
水分を1日1.5リットル以上摂っている人は便秘が少なく快便という傾向にあります。だから水分は多めに摂りましょう。日中であればカフェインが入ったお茶やコーヒーでもOKです。ただ、コーヒーは腸にとって刺激があるので、腹痛や下痢などで困っている過敏性腸症候群の人は控えたほうが良いでしょう。なお、便秘の人はマグネシウムなどのミネラルを含んだ硬水、下痢の人は軟水を飲むのが望ましいです。
水は普段から2リットルは飲んでます！
それに加えて、水溶性の食物繊維もたくさん摂った方がいいですね。
水溶性の食物繊維…！例えばどんなものですか？
バナナやキウイがおすすめです。低FODMAP食（※）なので、普段からお腹の調子が良くない人でも安心です。
※低FODMAP食とは
FODMAP（フォドマップ）とは、小腸で吸収されず、大腸で発酵しやすい糖質の総称。下痢や腹痛で悩む過敏性腸症候群の人は避けたほうが良いとされている。一方、そのような糖質が少ない食事のことを低FODMAP食と呼び、普段からお腹の調子が良くない人でも安心して食べられる。
食物繊維は小腸をスルーして大腸に行くんですよ。そして大腸で腸内細菌が発酵分解して「短鎖脂肪酸」が作られます。この短鎖脂肪酸が腸を活性化させるので、食物繊維をとると便秘の解消につながります。
果物を普段そんなに食べないのですが、水溶性を意識して買ってみます！
あとは「適度な運動」です！運動することで大腸が刺激されて動きが良くなり、便秘も改善されます。まずはエレベーターを使わず階段に切り替えることからスタートするのがいいと思います。まずは下りだけでも始めてみるのがおすすめですね。
ほかに良い習慣はありますか？
朝食を抜かずにきちんと食べること、排便する時間を決めることも大切ですね。お腹をセルフマッサージするのも良いですよ！
これも排便に良い効果があります。
どれも簡単にできそう！こういった食生活や運動を行うと、どの程度で変化が現れてくるものなのでしょうか？
ゆっくりですけど2〜3週間で、だいぶ変わると思います！最近の医学研究では、腸内細菌も3〜4週間でガラリと変わるといわれているので、一生治らないのではないかと悲観しなくても大丈夫です！
心強い…！2〜3週間の食事や運動で変わるのであれば、挑戦のハードルは低いですね。良いうんちを出すために逆算して生活をしてみたいと思います。名付けて「うんち逆算生活」です！
お！いいですね。応援します！
今日はありがとうございました。
うんち逆算生活、スタート！…結果は？
アドバイスに忠実に…。
江田先生から教えてもらった「水溶性の食物繊維」が豊富な食材、バナナとキウイを食べます！
フルーツを食べる習慣がないので、どちらも自分の意志では買わない食材だな。
まずは緑の宝石キウイを食べます！
いただきます！
パクっ…
ごくり…
うん！熟していて甘い！たまに酸っぱいのがあるけど、これは当たりですね！
果物は時間が経つほどうまい！
この調子でバナナもモグリ…。
かぶり…
ごくり…
安定の味！久々に食べたけど、どちらもおいしい！
プラシーボ効果かもしれませんが、食べた直後トイレに行きたくなり快便できました！
とりあえず僕の場合は、朝はバナナとキウイを食べる習慣を続けていこうと思います。
朝ご飯の献立を考えなくてよくなるから日常がラクになる習慣かも。
ほかの腸活もどんどんやっていこう!!!
いいうんちを出すための生活は、純粋に健康にめちゃくちゃいい！
食物繊維たっぷりの料理、適度な運動、快眠快便。
まさに生物の健康状態として最高の状態だなと実感できました。
動機が「うんち」だけど結果的に健康快適な生活を送れている気がします！
ぜひ皆さんも、１つずつでも良いので腸に良い生活で快便の世界へ足を踏み入れてください！
＜野田せいぞが実践！うんち逆算生活の実践ポイント＞
【1】水分を多めに摂る
1日1.5リットル以上が目安！
【2】水溶性の食物繊維を食べる
バナナやキウイがおすすめ！
【3】適度な運動をする
まずはエレベーターを使わず階段に切り替えるのがおすすめ！
【4】「の」の字マッサージ
1日5分、週５日で実践しよう！
余談ですが、うんちを意識する生活を始めてから、日に日にトイレに対する気持ちが高まっていることにも気づきました。
うんちを観察するために毎日トイレを覗き込んでいると、けっこうトイレの汚れが気になってくるんですよね。
快便の世界へ足を踏み入れるなら、ついでにトイレもキレイにしておけば2倍気持ちいい！
快便のあとはトイレの掃除を忘れずに！
おしまい
編集：ノオト
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、すべてがライオン株式会社の見解や、内容を保証するものではありません。
この記事を書いた人
野田せいぞ
ライターの野田せいぞです。イラストも描いています。シェアハウスに住んでいるので2カ月に1度必ず掃除当番がやってきます。つまり掃除が大好きです。この間はカレーを8人前作りました。つまり料理が大好きです。洗濯はあまり好きではありません（無条件で）
SNS：https://twitter.com/nodanosei
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