ノロウイルスの症状や予防と対策は?家庭内感染を防ぐポイント
「ノロウイルス」による感染症胃腸炎は冬に発症のピークを迎えます。発症すると嘔吐や下痢、腹痛などの症状が1~2日続きます。石けんで手を洗い流水でよく洗い流す、調理台や調理器具を殺菌する、食品はしっかり加熱するなど、予防・対策して冬を乗り切りましょう!
「ノロウイルス」の特徴
「ノロウイルス」は、直径が35~40nm(ナノメートル:10億分の1m)と非常に小さいウイルス。手指に付着するとしわや指紋に入りこんでなかなか落ちません。また、空中に浮遊しやすい性質があります。
最大の特徴は、感染力がとても強いこと。ウイルスが10~100個程度口に入っただけで、感染するといわれています。
「ノロウイルス」は冬に発生しやすい
「ノロウイルス」による感染性胃腸炎や食中毒は1年中起きていますが、11月ごろ急増して3月ごろまで多発します。もともと自然環境の変化に対する抵抗力の強い「ノロウイルス」は、気温が低くなるにつれ生存期間が長くなり、乾燥にも強いため、冬はウイルスに接する機会が多くなるのです。
- 2009年~2023年、定点報告件数の月別平均値
厚生労働省 HP 「ノロウイルスに関するQ&A」(2024年9月現在)より計算
ノロウイルスはアルコール消毒が効きにくい?ほかのウイルスとの違いは?
アルコール消毒をしたから感染症対策は大丈夫、と思う人もいるかもしれませんが、実はウイルスによっては、アルコール消毒が効きにくいタイプが存在します。というのもウイルスには、「エンベロープウイルス」と「ノンエンベロープウイルス」という2種類があり、この2種類ではアルコール消毒の効き目に違いがあるのです。
ライオンの調査※ではその違いを知っている人はわずか13%で、逆に残り87%の人はほとんど知らないという結果でした。
ウイルスは、ヒトの細胞と同じような膜(脂質二重膜)で覆われているウイルスと、覆われていないウイルス2種類がいます。この膜のことを「エンベロープ」と呼び、膜で覆われたウイルスを「エンベロープウイルス」、覆われていないウイルスを「ノンエンベロープウイルス」といいます。
「エンベロープ」は、アルコールや界面活性剤(石けん、洗剤などの油を水に溶かす成分)でダメージを受けやすい性質があります。ダメージを受けるとエンベロープウイルスは感染力を失う(不活化する)ため、「エンベロープウイルス」はアルコール消毒剤が効きやすいとされています。
一方、「ノンエンベロープウイルス」は、一般的なアルコール消毒剤や界面活性剤が効きにくく不活化されにくい性質があります。ノロウイルスはノンエンベロープウイルスになります。
<エンベロープウイルス、ノンエンベロープウイルス 各タイプのウイルスと疾患の例>
エンベロープウイルス | ノンエンベロープウイルス |
---|---|
インフルエンザウイルス(インフルエンザ) | ノロウイルス(感染症胃腸炎) |
新型コロナウイルス(新型コロナウイルス感染症) | エンテロウイルス(手足口病) |
ヘルペスウイルス(水疱、帯状疱疹、単純ヘルペス) | コクサッキーウイルス(手足口病、ヘルパンギーナ) |
麻しんウイルス(麻しん(はしか)) | アデノウイルス(咽頭結膜熱(プール熱)) |
- ※( )内は各ウイルスによる疾患名
「ノンエンベロープウイルス」には、調理器具などの除菌や、漂白に使用される塩素系除菌漂白剤の主成分、次亜塩素酸(じあえんそさん)ナトリウム(塩素濃度200ppm)による消毒が有効です。次亜塩素酸ナトリウムは、ドアノブやテーブルなど「モノ」の消毒には使えますが、素材によっては使えないものがあります。また、手や指をはじめ「人体」に直接使うことはできません。詳しい使い方は下の「ノロウイルス」予防と対策のポイントをご確認ください。手指についた場合は、石けんやハンドソープを使ってしっかり手を洗いましょう。
「ノロウイルス」はどうやって感染する?
「ノロウイルス」の感染経路には、次のようなものがあります
●ウイルスに汚染された食品を生で、もしくは十分に加熱調理せずに食べた場合
●ウイルス感染者の汚物(便や吐ぶつ)から人の手を介しての感染
●家庭や飲食店などで食品を扱う人や調理に携わった感染者からの感染
●家庭や共同生活施設など人の接触が多い場所での飛沫、空気感染
●ウイルスに汚染された井戸水などを摂取した場合
幼稚園や学校など人が多く集まる場所や飲食店などで発生、感染することが多く、注意が必要です。
「ノロウイルス」の症状と治療法
「ノロウイルス」に感染してから発症するまでの潜伏期間は数時間~数日(平均1~2日)といわれています。
発症すると嘔吐や下痢、腹痛などの症状が1~2日続きます。嘔吐・下痢は、1日数回からひどい時は10回以上起こることもあります。発熱はしても、あまり高くはならないようです。
感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状ですむこともありますが、抵抗力の弱い子どもやお年寄りは重症化することもあります。
「ノロウイルス」には有効なワクチンはなく、通常は対症療法になります。特に気をつけたいのが、脱水症状。経口補水液などでこまめに水分の補給を行うことが大切です。脱水症状がひどい時は、病院での輸液を行うなどの処置が必要になります。
症状が治まった後も、感染者の便の中には1週間から長い時は1か月程度ウイルスが排泄されるので、注意が必要です。
「ノロウイルス」の予防と対策
「ノロウイルス」に感染した子どもがウイルスを持ち帰り、家庭内に広がってしまうことも少なくありません。しっかりと予防・対策をすることが大切です。具体的にどんなことをしたらよいのか、今一度確認してみましょう。
「ノロウイルス」予防と対策のポイント
手洗いをしっかり行う
外から帰宅した時、トイレのあと、調理・食事の前には必ず石けんを使って手を洗い、流水でよく洗い流しましょう。「ノロウイルス」はノンエンベロープウイルスのため、インフルエンザウイルスなどと違い、アルコールでの消毒効果があまり期待できませんので、手洗いで手指に付着したウイルスを除去することが重要です。指の間や手首までしっかりと洗います。
調理台や調理器具を殺菌する
調理器具等は洗剤などを使用して十分に洗浄したあと、「次亜塩素酸(じあえんそさん)ナトリウム」(塩素濃度200ppm)でひたすようにふきます。まな板や包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
カキなどの二枚貝などを調理する時は専用の調理器具を使用するか、使用するたびに洗浄、熱湯消毒し、ほかの食材への二次汚染を防ぎましょう。
食品はしっかり加熱する
ウイルスは熱に弱いため、加熱処理をすることは有効な手段です。食材はしっかりと火を通して調理しましょう。カキやアサリなどの二枚貝は、中心部までしっかりと加熱(目安として85~90℃で90秒以上)してください。
次亜塩素酸(じあえんそさん)ナトリウム
家庭用の「次亜塩素酸ナトリウム」を含む塩素系漂白剤で代用できます。漂白作用があり、衣類や布等につくと脱色することがあるほか、金属に使用するとさびが生じることがあるので、使用にあたっては表示されている「使用上の注意」をよく確認してください。
家庭内で感染者が出てしまったら
「ノロウイルス」に感染した、もしくは感染が疑われる家族がいる場合、ほかの家族や自分に感染がさらに広がらないように、十分注意する必要があります。
嘔吐や下痢で衣服や布団、床などを汚してしまった際は、ウイルスが衣服や顔、手指につかないようにまず使い捨てのエプロン、マスク、手袋を着用してから、すみやかに処理します。
処理後は空気の流れに注意しながら、窓を大きく開けるなどして十分な換気を行ってください。
家庭内で感染者が出たときの注意ポイント
便や嘔吐物を処理するときに気をつけること
床などに飛び散った便や嘔吐物はペーパータオルで静かにふき取り、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)をひたしたペーパータオルや布でふき、さらに水ぶきをします。おむつなどはすぐに閉じて便を包みます。ふき取りに使用したペーパータオルや布類、おむつは、ビニール袋に入れて密閉し、廃棄します。
ドアノブや水道の蛇口などの消毒も忘れずに
家の中でよく家族の手指が触れるもの、例えばドアノブや水道の蛇口、洗面台、トイレの便座やフタなどもこまめに消毒します。
金属部分に次亜塩素酸ナトリウムを使うと、さびたり破損の原因になることもあるので、消毒後にしっかりと水ぶきをしてください。
汚物がリネン類や布団に付着してしまったとき
付着した汚物をペーパータオルでできるだけ取り除いた後に、洗剤を入れた水の中でもみ洗いします。その際、しぶきを吸い込まないように、マスクをするなどして注意してください。
使用後のペーパータオルはビニール袋に入れて密閉し、廃棄します。
下洗いが終わったら、小さな衣類であれば煮沸消毒したあとに、ほかの洗濯物とは別にして洗濯します。大きなリネン類など煮沸消毒がむずかしいものは、次亜塩素酸ナトリウムで消毒したあと、十分すすぎます。
洗濯後には高温の乾燥機を使用することで、殺菌効果が高まります。
布団などすぐに洗えないものは、汚物をできるだけ取り除いたあとに、よく乾燥させてからスチームアイロンを使うと効果的です。
下洗いをする時に使用したバケツ・洗面器類や洗面台等は次亜塩素酸ナトリウムで消毒したあと、洗剤を使って掃除をしてください。
これからの時期は「ノロウイルス」に感染する可能性がぐっと上がります。しっかり予防をして、冬を元気に乗り切りたいですね。
これからの時期は「ノロウイルス」に感染する可能性がぐっと上がります。しっかり予防をして、冬を元気に乗り切りたいですね。
この記事を作成・監修した
マイスター
衛生マイスター
太田 博崇
おおた ひろたか
お口の中の細菌を中心に、感染症予防の研究などに携わり、その間、国立研究所や歯科大学との共同研究などもしてきました。
これらの経験を活かし、衛生的かつ健康的な生活を送るのに役立つ情報をお届けしていきます。
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