
生理前(PMS)や更年期のイライラ・気分の落ち込みがつらい!心の不調の対処法
生理前・生理中や更年期の症状として、多くの女性がイライラ、気分の落ち込みなどの心の不調に悩んでいます。心の不調には、ネガティブな考え方のくせが関係している?女性特有のお悩みを考えたサービスの開発者へのインタビューを交えて、生理前などの心の不調とうまく付き合う方法をお伝えします!
生理前・生理中や更年期には、多くの女性が「心の不調」に悩んでいる
生理前・生理中には、心とからだに不快な症状があらわれる方も多いのではないでしょうか。
ライオンの実態調査によると、多くの女性が、腹痛や腰痛、頭痛、便秘、下痢、肌トラブルなどの身体的な症状のほかに、イライラ、やる気がでない、気分の落ち込みなどの心の不調を経験していました。
特に心の不調は、生理中より生理前に感じる人が多く、生理前に「イライラ・怒りっぽい」と感じる人は半数以上、という結果でした。
- 1 ライオン調べ、20歳~49歳女性1,080名、2020年
また、ライオンの別の調査※2では、更年期にも心の不調で悩んでいる女性は多く、3割以上の人が「イライラすることが多い」「やる気がでない」「くよくよして憂うつになることが多い」と感じていました。
- 2 ライオン調べ、30歳~69歳女性2,913名、2019年
生理前などの心の不調に対して、体内環境や生活習慣の改善、スケジュール調整など、様々な対策を試みるものの、多くの人は解決には至っていません。そのため、生理前・生理中や更年期の心がつらい時期には、「本来ありたい自分」でいることが難しい状況になっているようです。
生理前などの「心の不調」とうまく付き合いながらハッピーに過ごすには?
生理のたび、または更年期症状が出始めてからずっと、心の不調に悩んでいる人は、どのようなセルフケアをすれば良いのでしょうか。女性ホルモンの乱れなどによる不調とうまく付き合いながら、ハッピーに過ごすには?
そこで今回は、ライオンで女性の不調に寄り添い、ソリューションの開発検討をしている松木さんに、ヘルスケア分野の芳賀マイスターがインタビューします。
※ 2025年3月でCoCoReのサービスは終了しています
生理前などの心の不調に悩んでいる人の9割以上に「ネガティブな考え方のくせ」が!

女性特有の生理前・生理中のお悩みについては、これまでLideaでもたびたび取り上げてきました。今回はその中でも、「生理前などの心の不調とどう付き合っていけばいいのか」をテーマに、松木さんにお話を聞きたいと思います。よろしくお願いします。
私は長年、周期的にくるメンタルの落ち込みがPMS(月経前症候群)のせいだとは気付かなかったのですが、入社後、配属された部所には女性が多くいて、同じような悩みを持っていたんです。そこで、女性特有の不調、特にメンタルヘルスに関する研究をしたいと思ったのが最初の動機でした。こういった女性特有のメンタルが、タスクをこなす際のパフォーマンスに強い影響を与えることがわかってきています。しかし国内外を見ても、いまだにメンタルヘルスに特化したフェムテック製品は少ないということで、自分たちでソリューションを開発するに至りました。


松木さん自身も、PMSの心の不調に悩んできたのですね。生理前・生理中や更年期の不調には、女性ホルモンのバランスの変動が影響するといわれていますが、ほかにもメンタルに影響する要因はあるのでしょうか?
BPSモデル(生物心理社会モデル)※3では、主に3つの要因があるとされています。生物学的な要因(女性ホルモン量の乱高下など)、社会学的な要因(職場や家族内の人間関係など)、あともう1つが心理学的な要因です。この心理学的な要因は、個人の持つ生まれつきの性格などのことで、私たちはこれを「考え方のくせ」と呼んでいます。

- 3 健康と病気について、3つの要因の相互作用としてとらえる考え方

PMSなどの心の不調は、女性ホルモンの変動がベースにあるけれども、そのほかにも社会学的、心理学的な要因が影響するということですね?
はい。特に私たちは、女性のメンタル不調の要因の1つになっている「ネガティブな考え方のくせ」(ネガティブ思考※4)に着目しています。私たちが調査したところ※5では、生理前の心の不調に悩んでいる人の9割以上に、「ネガティブな考え方のくせ」がありました。

- 4 ここでの「ネガティブ思考」とは、後述する心理的柔軟性を測定する尺度(Acceptance and Action Questionnaire-II)において20点以上である場合をいう
- 5 ライオン調べ、PMSに悩む20代~40代女性32名、2022年

自分がネガディブな思考なのかどうかは、自分ではわからないのですが、調べる方法はありますか?
ACT(アクト/Acceptance and Commitment Therapy)という心理療法で培っていく、心理的柔軟性(やさしくて、つよくて、しなやかな心)の度合いを確認するツールは以下の7項目です。合計20点以上だと心理的柔軟性が低い傾向にあり、「ネガティブな考え方のくせ」をしがちだといわれています。

- 嶋 大樹・柳原 茉美佳・川井 智理・熊野 宏昭 (2013)、「日本語版Acceptance and Action Questionnaire-II 7項目版の検討」(日本心理学会第77回大会発表論文集、271、https://doi.org/10.4992/pacjpa.77.0_1AM-042)をもとに作図

例えば生理前とそうでない時では、点数も変わってくるのでしょうか?
PMSに悩む女性は、生理前は、よりネガティブ思考になりやすい傾向があり、生理前と生理後では点数に差が出る傾向があります。

イヤな考えや感情を受け入れるため、心理療法ACTを取り入れる

気持ちが落ち込んでいる時ほど、過去のつらい出来事や失敗体験にとらわれたり、いつもなら気にならないことで自分を責めたり…。ネガティブに考えがちなのは想像できます。
そうなんです。そんな時に、ACTの心理療法を取り入れることも、1つの方法だと考えています。


ACTとは、どのような心理療法なのですか?
生理前などの心の不調が訪れるたびに、がんばって闘っていたら、疲れてしまいますよね。ACTでは、「心理的柔軟性」を高めること、つまり「やさしくて、つよくて、しなやかな心」をつくっていくことで、ネガティブな「考え方のくせ」が変わっていくと考えられています。

- 『よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) 明日からつかえるACT入門』武藤 崇翻訳、2012年 をもとに作図
①「オープンハート」:
思考や感情とうまく付き合う方法を知り、受け入れるスペースをつくる
②「今、ここにいる」:
過去や未来や自分自身にとらわれることから脱し、今ここにいることを感じて、一瞬一瞬の自分をとらえる
③「心から大切なことをする」:
大切なことを明確にして、それに向かって進んでいく。自分自身のこれからの生活や人生の方向性を言葉にして、今自分ができる行動を明確にする
1つ目のポイントが、イヤな考えや気持ちを追い出したり、闘ったりしないで、心に受け入れるスペースをつくること。不安や悲しみ、孤独感やイライラはあなたの一部だから、無理に追い出そうとせず「自分の中にいてもいいよ」と言ってあげていいのです。


生理前などの心の不調は敵ではないわけですね!新しい考え方です。
2つ目のポイントは、過去や未来、自分自身にとらわれることから脱して、今、ここにいる一瞬一瞬の自分をとらえること。いわゆる「マインドフルネス」のことで、呼吸や手のシワ、歩く時の足の筋肉、食べている時の味・香り・舌触り、掃除、仕事などなんでもいいのですが、ただ目の前のことに集中して、「今、ここを感じる」ための脳づくりを行っていきます。

最後の3つ目のポイントは、自分にとっての価値(大切なこと、やりたいこと)を明確にして、それに向かって進んでいくこと。 「80歳の誕生日のワーク」というのがあるのですが、自分が80歳になった時の誕生日を想像して、子どもや孫、同僚が集まった時に、どういうふうに声をかけられたいかを想像するんです。将来的にどういう人間でありたいかを考えることで、自分の軸が決まってきます。


生理前などの心の不調は、女性にはなかなか切り離せないものですが、考え方を変えるだけで生き方が楽になる方法があるんですね。松木さんも、ACTを取り入れることで、考え方が変わりましたか?
私は、生理前に、特に人間関係でひどく落ち込んだり悩むことがつらくて、色々やった結果、ACTに辿り着いたんですね。ACTの手法を日々実践したおかげで、自分のイヤな思考を客観的に見ることが上手になって、メンタルが強くなったと感じています。また自分自身の肯定感を高めて、まわりの人にも同じ目を向ける、セルフコンパッションというワークも実践したおかげで、苦手な人のことも、自分と同じく何かに悩んで頑張っているんだろうな、と受け入れられるようになりました。 こうした日々のちょっとした心の筋トレで、強い心は手に入れることができるのだと思っています。


トレーニングによって、考え方を変えるお手伝いができるのですね!松木さんが運営していた「CoCoRe」でも、ACTの考え方を取り入れていたのですか?
はい。「CoCoRe」では、ACTの理論を取り入れて、「考え方のくせ」にアプローチできるようになっていました。イヤな考えや気持ちとうまく付き合うトレーニングや、不安との付き合い方についての音声ガイドなど、ユーザーの状態に合わせておすすめし、ユーザーに毎日寄り添うようなアプリでした。現在、アプリのサービスは終了していますが、これからも、女性の不調に寄り添えるソリューションの開発検討を続けていきます。


松木さん、お話いただきありがとうございました!
生理前・生理中や産後、更年期などに、多くの女性が経験する「心の不調」。気持ちが落ち込んでしまうせいで、自分らしくいられなかったり、仕事のパフォーマンスが落ちてしまったりするのは、悲しいですよね。
心のモヤモヤを誰にも言えない、自分に合うメンタルケアの方法がわからないという方は、ACTのような心理療法を取り入れてみるのも、1つの方法かもしれません。
ひとりで悩み過ぎずに、いろいろな選択肢から考え方のヒントをもらって、自分の心を上手にケアしていけるといいですね。
この記事を作成・監修した
マイスター

ヘルスケアマイスター
芳賀 理佳
はが りか
くらしを彩る製品の香りの研究・開発、および身体洗浄剤・制汗剤の開発に約25年携わってきました。
快適な毎日が過ごせるよう、からだの健康・美容に役立つ情報をご紹介していきます。
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