引っ越しで退去する時、「賃貸物件の掃除はどこまでするの?」を解説
賃貸物件の退去時には、元の状態に戻す「原状回復」が原則!引っ越し後にクリーニング業者が清掃するとはいえ、汚れがひどいと追加の費用がかかり、敷金が返金されない場合も。そこで今回は、管理会社がチェックする重点ポイントや、お掃除方法などを、プロへのインタビューを交えてご紹介します。
立ち会いのプロに聞く!引っ越し前の掃除はどこまでする?
賃貸物件を退去する時には、管理会社の「立ち会い」があり、部屋の状態を細かくチェックしてもらうのでドキドキしますよね。
一般的には、次の入居者を迎える前に、クリーニング業者が室内の清掃をします。そのため、退去時には自分でどこまで掃除をしたほうがよいのか、汚れていると敷金が戻らない可能性もあるのか、気になるところです。
そこで、賃貸物件の管理業務を行う、株式会社タイセイ・ハウジーの本多博文さんを取材。長年、退去時の立ち会いをされてきたご経験から、退去前の掃除のポイントや、賃貸物件で気を付けたいことなどをアドバイスしていただきました。
株式会社タイセイ・ハウジー
本多博文さん
部屋を元の状態に戻す「原状回復」がキーワード
「原状回復」という言葉を聞いたことはありますか?簡単に言うと、「部屋を入居時の状態に戻す」ということ。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、以下のように定義されています。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
つまり、普通に住んでいて自然と劣化する部分は、経年劣化として考慮されますが、そうでない汚れや損傷については、入居時の状態に戻すことが求められます。
「普通に住む」ためには、
賃貸物件ではあっても
自分の家のように思って
お住まいいただくのが良いと思います
大家負担?入居者負担?判断するための目安は
原状回復のルールによると、
●「普通に住んでいる」「経年劣化」→大家負担
●「故意・過失」「注意や管理を怠った」「通常の使用を超えている」→入居者負担
となるわけですが、具体的な目安はあるのでしょうか。
以下に、一部を国土交通省のガイドラインから抜粋しました。
大家負担 | 入居者負担 | |
---|---|---|
床 |
☑家具の設置によるフローリングやカーペットのへこみ |
☑落書き |
壁・天井・建具 |
☑テレビや冷蔵庫裏の壁の黒ズミ |
☑タバコのヤニ汚れやニオイ |
設備 |
☑経年劣化による設備の故障 |
☑掃除を怠ってひどくなったガスコンロ置き場や換気扇の油汚れ |
- 出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf)から抜粋して作表
壁紙やフローリングなどの表層材は、経年劣化により黒ずんだり、へこんだりしていても、そこは住んでいた年数に応じて考慮されます。
また、「ここに棚があるほうが便利」と思い、釘を刺すなどして棚を作った場合も、撤去して元に戻すのが原則です。穴を開けた部分は、入居者負担での補修になってしまいます。
汚れだけでなく、ニオイも原状回復が必要なので要注意。タバコを吸う方は、壁紙にニオイが付着して落とせないと、張り替えになることもあります。
ただし、国土交通省のガイドラインは参考なので、退居が来まったら早めに契約書等に目を通しておきましょう。
退去時の立ち会いでは、ココをチェックされる!
管理会社の担当者は、立ち会い時に、汚れている所や壊れている所はないか、室内をチェックします。
当社では、立ち会いは30分~1時間程度かけて
チェック表に基づいて室内を細かく確認し、
その場で判断させていただきます
原状回復のための重点チェックポイント
「普通に住んでいた」と判断されるためには、室内の汚れを放置せずに、定期的にお掃除をしていることが大切になります。
中には、「5年、10年住んでいても一度も換気扇掃除をしていない」「浴室の黒カビがひどい」「顔が見えないほど、浴室の鏡にウロコ汚れが付いている」などのケースも。
一般的な洗剤では簡単に落とせないレベルの汚れになっていると、専有面積に応じたクリーニング代に加えて、別途の清掃費が必要になるかもしれません。
また、原状回復の観点から、浄水器や照明器具など自分で取り付けたものは、置いていかずに外すのがルールです。
以下に、立ち会いの前にやっておきたい、重点チェックポイントをまとめました。
【キッチン】
□換気扇の油汚れを掃除する
□ガスコンロやその周辺の油汚れを掃除する
□コンロの魚焼きグリルを掃除する
□床や壁の油汚れを掃除する
□自分で水道に浄水器を取り付けた場合は外す(置いていかない)
【浴室】
□浴室内のカビ取り掃除をする
□浴室の鏡のウロコ汚れを掃除する
【脱衣所】
□洗濯機の床排水の部品(エルボ)は残しておく(写真を参照)
□脱衣所の床を掃除する
【トイレ】
□トイレの床を掃除する
□自分で温水洗浄便座を取り付けた場合は外す(置いていかない)
【居室】
□リビングの壁の汚れがひどい所は掃除する
□換気口周辺の黒ズミ汚れを掃除する
□自分で照明を取り付けた場合は外す(置いていかない)
【その他】
□自分で物干し竿を買った場合は置いていかない
□鍵はオリジナルを返却する
わざわざ自分で補修しなくてよい場合も
場所によっては、自分で掃除や補修をしてもよいかどうか、迷うことがあると思います。
畳やふすま、網戸に穴が開いている場合、一部を補修してあっても、退去後には全面を新しいものに交換する場合が多いので、退去時にわざわざ慌てて補修する必要はありません。心配な場合は管理会社に問い合わせてみましょう。
入居時の「重要事項説明書」には
退去に関することも書いてあるので
確認していただけると良いですね
立ち会いの後に、敷金からの返金額が決まる
敷金は、退去後にかかる費用を相殺するために、大家に預けているお金です(入居者がいなくなるなどの万一の時の大家の保証の意味もあります)。
立ち会いの後に、管理会社の担当者がクリーニング代と補修費を算出し、それを敷金から差し引いて、入居者に返却される金額を確定します。
定期的にお掃除しながら、普通に住んでいた場合には、敷金の一定額は戻ってくるのが一般的です。
敷金ゼロの物件では、入居時にクリーニング代を支払う場合もあれば、退去時に原状回復の費用を負担する場合もあるので、契約内容を確認してみましょう。
なお、西日本では、返金されない「敷引き」という慣習もあります。
退去時にあわてないために、日頃から気を付けたいこと
退去前は、新居への引っ越しの準備もあり、忙しい日々になると思います。
退去の直前にあわてて大掃除をしなくてもすむように、日頃からお部屋をていねいに使って、定期的にお掃除しておくのがおすすめ。
特に、鉄筋コンクリート構造のマンションは、結露が起こりやすい気密性の高い建物なので、換気をしないとカビが生えやすいもの。お風呂だけでなく、部屋全体の換気をして、室内の温度差をなくすことが大事です。
住みながら、汚れやカビが
ひどくならないように
「予防掃除」をするのが賢いですね
新居は引っ越し前に写真を撮っておくのがおすすめ
引っ越し先の新居も賃貸物件であれば、家具が入る前に、室内の写真を撮っておきましょう。退去時の「原状回復」の目安になります。
引っ越し直後に傷や汚れを見つけた場合にも、証拠となる写真を撮り、管理会社に伝えます。写真には日付を入れておくのを忘れずに。
担当者は変わることもあるので、管理会社に伝えた書面も写真を撮っておくと、退去時のトラブルを防ぐことができます。
TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!
退去までにひと通り!場所別のお掃除方法
本多さんにお話を伺い、退去時の立ち会いでは、短時間で室内の細部まで確認し、汚れや補修の度合いを判断されるのだとわかりました。ていねいにお掃除しているか、怠けているか、見抜かれてしまいそうで緊張しますよね!
退去が決まったら、週末など時間がある時に、室内をひと通りお掃除しましょう。できる範囲でキレイにして、部屋の印象を良くできるといいですね。
ここからは、重点チェックポイントを中心に、場所別のお掃除方法を紹介します。
キッチン
換気扇、ガスコンロ周辺の油汚れのお掃除
油汚れや焦げ付き汚れなど、ガンコな汚れを落とすには、レンジ用の洗剤が効果的。
レンジ用の洗剤で落とせない汚れがあったら、クリームクレンザーでこすり洗いをします。丸めたラップでこするとより落としやすくなります。(傷がつかないように力加減に気を付けてください)
魚焼きグリルのお掃除
台所用洗剤で洗ったあと、焦げ付いてこびりついた汚れはクリームクレンザーでこすり洗いをします。
シンクや水栓のお掃除
台所用洗剤とスポンジでこすり洗いをして、水でよくすすぎます。落とせない汚れは、クリームクレンザーでこすり洗いをしましょう。複雑な形状の「水栓金具」は、ミニブラシを使うとこすりやすいです。
浴室・洗面所
鏡のウロコ汚れのお掃除
浴室用洗剤→クリームクレンザーの順にこすり洗いをして、それでも落ちない場合は、ウロコ汚れ用の研磨スポンジを使ってみましょう。ただし、鏡を傷付けないように十分注意してください。
カビ取り掃除・排水口掃除
黒カビが生えてしまったら、塩素系のカビ取り剤※が効果的です。メガネ・手袋・マスクを着用し、換気の良い状態で使用してください。
排水口は、髪の毛などのゴミを取り除き、塩素系のパイプクリーナー※を流し入れて、所定の時間(製品によって異なります)を置いて、十分に水で流します。使用時は換気を良くし手袋を着用してください。
要注意!
※「まぜるな危険」表示のある塩素系洗浄剤は、酸性タイプの製品や食酢・アルコールなどと混ざると有害なガスが発生して危険なため、必ず単独で使ってください。
洗面所のお掃除
洗面ボウルは、浴室用洗剤を使い、やわらかいスポンジでこすり洗いします。
床は隅を重点的に、掃除機をかけ、住まい用の洗剤でふき掃除をします。
トイレ
便器・手洗い器のお掃除
トイレ用洗剤を便器の「フチ裏」を狙ってぐるっと1周かけ、トイレ用ブラシでこすり洗いします。
手洗い器上部の黒ズミは、クリームクレンザーでこすり洗いします。丸めたラップでこするとより落としやすくなります。クレンザーがタンクの中に入らないように、お掃除前に穴に布を詰めておきましょう。
床・壁のお掃除
トイレットペーパーにトイレ用ふき取りクリーナーをスプレーし、床や壁をふき取ります。
リビング
壁のお掃除
布や雑巾で水ぶきします。住まい用の洗剤を使う時は、壁紙に使えるか表示で確認してください。汚れた所とキレイな所が、まだらにならないように注意しましょう。黒ズミ汚れは、キレイな消しゴムでこすってみてください。
床の掃除
引っ越しの時、荷物を運び出したあとに、雑巾を1枚とっておいて、サッとふき掃除をしましょう。
番外編:新居のお掃除
新居に家具や荷物を入れてしまうと、その場所は掃除ができなくなってしまいます。引っ越し前のガラ~ンとした何もない状態の部屋は、隅々までお掃除する絶好のチャンス!
中古物件の場合には、掃除をすることで「自分の住居」としてリセットして、気持ち良く生活をスタートできますね。
次の物件では、退去の時に慌てないように、ぜひ定期的なお掃除を習慣化してみませんか。
この記事を作成・監修した
マイスター
リビングケアマイスター
吉井 和美
よしい かずみ
掃除用洗剤の製品開発を約15年、技術者向けの情報発信を約5年経験してきました。
これまでの知識を活かし、掃除に前向きに取り組めるようなコツやノウハウをわかりやすくお伝えしていきます。
下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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