家庭内感染しなかった家族・した家族で大調査!感染対策の実施に差があった?
新型コロナウイルス感染症の家庭内感染が「なかった家庭」と「あった家庭」では、感染対策にどんな差があったのかを大調査。その結果「家庭内感染がなかった家庭」のほうが、様々な対策の実施率が高く、また早い段階から取り組んでいたことがわかりました。基本の感染対策はやはり大事!あらためて見直しましょう。
家族と自分自身を守るためにも、「家庭内感染の防止」は大切
新型コロナウイルス感染症は感染症法の2類相当から5類の感染症となり、世の中の感染対策も緩和されてきた傾向もありますが、感染力が強いことは変わりません。また新型コロナウイルス感染症に限らず、ほかの感染症や今後想定される新型インフルエンザなどに対しても、予防や感染対策への備えをしておきたいものです。
感染力が強い感染症の場合、家庭内で家族同士が感染してしまう「家庭内感染」が発生する場合も多くなることが考えられます。家庭内感染の防止は、家族と自分自身を守るためにも、社会的な蔓延を防ぐためにも大切です。
そこで、家庭内での感染対策のポイントはどこにありそうか、新型コロナウイルス感染症※1の家庭内感染が「なかった家庭」と「あった家庭」での感染対策について調べ、比べてみました。
- 1 新型コロナウイルス感染症を対象とした理由は、比較的感染力が強く、感染したかどうかの診断がついていたため。
家庭内「感染なし」は「感染あり」に比べ、対策実施率が高かった!
ライオンでは、2023年7月に、新型コロナウイルスの感染について10,000人にアンケートを実施したところ、「自分を含む同居者の中に新型コロナウイルスの感染者が発生したことがある人」は約40%いました。「同居家族がおり入院や施設療養せず家庭内で療養していた人」は全体の約32%(3,178人)で、そのうちの半数近くにのぼる46%に「家庭内感染があった」と答えていることからも、感染力の強さがうかがえます。
さらに、この「同居家族がおり、自分もしくは同居者が感染し、家庭内療養していた人」(3,178人)の中から「家庭内感染がなかった」「家庭内感染があった」各グループ480人を対象に、家庭内での生活シーン別に感染対策をしたかどうかについてアンケート調査※2を実施しました。すると、「家庭内感染なし」グループの方が、「家庭内感染あり」グループと比べて、質問した感染対策116項目中102項目で実施率が高いという結果になりました。家庭内感染しなかった家庭の方が、幅広く種々の対策をしていたことがうかがえます。
- 2 ライオン調べ、家庭内感染があった人・家庭内感染がなかった人、20代―60代男女、各480名、2023年7月
また、家庭内で最初の感染者が出た時点での家庭内感染に対する気持ちを聞いたところ、家庭内感染がなかった家庭は、「ほかの同居者にうつらないようにしたいと思ったし、可能だと思った」と答えた人が約30%でしたが、家庭内感染があった家庭では約9%でした。家庭内感染がなかった家庭は、感染者の体調が悪くなりだした時点で早めに対策を始めていたり、全体の対策期間も長い傾向が見られました。
このことから、ほかの家族に感染させないという気持ちで、早い段階からきちんと対策を実施することが、家庭内感染を防ぐことにつながるのではということが見えてきました。
詳しい調査結果はこちらから
感染はなぜ起こる? 3つの要因
家庭内感染の防止は、家族と自分自身を守るためにも、社会的な蔓延を防ぐためにも大切です。家庭内感染を防ぐための考え方や知識をここでおさらいしましょう。
感染成立の3つの要因としては、下記があげられます。これらの条件がそろうと、感染が起こるとされています。
<感染成立の3つの要因と対策>
1.病原体…ウイルス、細菌など
2.感染経路…飛沫感染、接触感染、空気感染、昆虫媒介など
3.宿主…ヒト、動物など感染症になる側
- 「感染対策の基礎知識」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf)をもとに、ライオン株式会社で作成
対策として、要因1では病原体を排除すること、要因2では感染経路を遮断すること、要因3では宿主の抵抗力を向上させることなどが考えられます。
例えば、手洗いや手指の消毒、ドアノブなど手で触れる場所の消毒といった対策は、病原体を減らす意味では要因1への、感染経路をキレイにする意味では要因2への対策にもとらえられます。
そのほか、要因2への対策としては感染者の隔離やマスク着用など、要因3としては十分な睡眠、栄養のある食事、ワクチン接種などが考えられます。
そして、病原体に関しては「持ち込まない・持ち出さない・拡げない」ことも大事だといわれています。
家庭内での感染対策は? 8つのポイント
家庭内で「新型コロナウイルスの感染が疑われる人」がいる場合には、同居家族の注意事項として以下の8つのポイントがあげられます。
厚生労働省のホームページに紹介されていて、感染症全般において参考になる対策なので、確認してみてください。
1.感染者と他の同居者の部屋を可能な限り分ける
2.感染者の世話をする人は、できるだけ限られた方(一人が望ましい)にする
3.できるだけ全員がマスクを使用する
4.小まめにうがい・手洗いをする
5.日中はできるだけ換気をする
6.取っ手、ノブなどの共用する部分を消毒する
7.汚れたリネン、衣服を洗濯する
8.ゴミは密閉して捨てる
- 出典:「新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項(日本環境感染学会とりまとめ)」(厚生労働省)、2024年3月時点(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00009.html)
7つの生活シーン別に感染対策の調査結果を公開!
ライオンでは、「家庭内感染なし」と「家庭内感染あり」それぞれのグループに対し、7つの生活シーン別の感染対策を、したかどうかについて聞きました。調査結果の詳細を公開します。
1.衛生全般(手洗い、消毒など): 基本項目は実施率が高い結果に
衛生全般で実施率が高かった対策は、マスクの着用や、手洗い、手指消毒、うがいなど。新型コロナウイルス感染症の流行以来、繰り返し呼びかけられてきた一般的な予防策が、上位にランクインしました。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
また、家庭内感染なしとありの家庭での対策の実施率の差を見てみました。差が大きかった項目は、いずれも家庭内感染がなかった家庭で実施率が高い結果となり、これは以後に示す他の生活シーンでも同様の結果でした。
衛生全般の対策に関しては、一般的な予防策に加え、ゴミの出し方などもさらに徹底した対策をとっていました。
2.住まい: 多くが「換気」や「部屋を分けること」を実施
住まいに関することでは、換気をする、部屋を分ける、住居内移動範囲を最小限にするなど、飛沫感染や空気感染を防ぐための対策を多くの人が実施していました。また、ドアノブなどの共用部の消毒も実施率が高い結果でした。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
住まいに関する対策で差が大きかった項目では、換気以外は実施率が高かった項目と一致していました。
3.お風呂: 実施率の1位は「感染者は最後に入浴すること」
お風呂に関することでは、感染者は最後に入浴する、タオルを共用しないなどの対策が上位となりました。ただ、マスクや手洗い、換気などの基本的な対策に比べると実施率は低く、半数以下にとどまりました。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
家庭内感染がなかった家庭では、接触を避けることや消毒・除菌で清潔を保つ対策の実施率が高くなっていました。
4.トイレ: 手指やドアノブなど「消毒・除菌」への意識が高い
トイレに関することでは、手が触れるところは消毒・除菌する、使用後は手を洗う、手指消毒する、こまめにトイレ掃除をするなど、ウイルスを除去するための対策を多くの人が実施していました。また、フタを閉めてから水を流すという拡散防止策もとられていました。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
トイレ周りの対策で、感染なしと感染ありで差が大きかった項目は、手が触れるところの消毒・除菌でした。
5.洗面所: 使用時間を分け、歯みがきアイテムを共有しない傾向
洗面所に関することでは、タオルを共用しない、感染者とそうでない者は使用時間を分ける、ハミガキやコップを共用しないなどが主な対策でした。狭い空間の中で、家族それぞれが使うものを分ける工夫がなされていました。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
差が大きかった項目も、実施率が高かった項目と一致していました。
6.衣類、洗濯: できる範囲での「除菌・ウイルス除去」を実施
衣類、洗濯に関することは、ほかの生活シーンと比べると、全体的に対策実施率は低め。その中でも実施した対策の上位は、こまめな洗濯や感染者の洗濯物を分けて洗うことのほか、感染者の洗濯物に触ったら手を洗う、殺菌・ウイルス除去効果のある洗剤や漂白剤を使うなど、ウイルス除去に配慮した対策でした。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
家庭内感染がなかった家庭では、間接的な接触も避けようとする意識が高くなっていました。
7.食事: 一緒に食べないことで接触を避ける人が多数
食事については、感染者と食事の場所を分ける対策がトップ。ほかに、料理を1人分ずつ盛る、使った食器はすぐに洗う、食器洗い後によく手を洗う、食後の机を消毒・除菌するなど。食事から後片付けまで一連の行動で、感染対策を実施していました。
<家庭内感染「なし」と「あり」で実施率の差が大きかった対策は?>
感染者と食事の場所を分ける対策で、特に大きな差がありました。
生活シーン別まとめ: 家庭内感染なしグループのほうが、特に実施していた対策
これまで生活シーンごとに見てきましたが、今回の調査において、「家庭内感染なし」のほうが「感染あり」と比べて実施率が特に高かった対策を生活シーン別に表でまとめました。
差が大きな項目が必ずしも予防に有効ということではありませんが、これらを参考に手洗い、消毒などの基本的な対策とともに実施してみてはいかがでしょうか。
アンケート調査の結果、家庭内感染がなかった家庭では、実施していた項目数が多く、より多岐にわたる感染対策を、早い段階で徹底して行っていたことがわかりました。
日常生活で、急に家族が感染症にかかると慌ててしまいがち。日頃から実施できる対策をイメージしておき、いざとなった時に素早く行動に移せるよう、ぜひ調査結果を参考にしてみてください。
この記事を作成・監修した
マイスター
衛生マイスター
太田 博崇
おおた ひろたか
お口の中の細菌を中心に、感染症予防の研究などに携わり、その間、国立研究所や歯科大学との共同研究などもしてきました。
これらの経験を活かし、衛生的かつ健康的な生活を送るのに役立つ情報をお届けしていきます。
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