洗濯機の適切な水量や時間、水温など、汚れ落ちを左右するポイントを紹介
洗剤量、洗濯物と水量のバランス、洗濯温度、洗い時間、すすぎ回数は、お洗濯時の衣類の仕上がりに影響します。カスタマイズ次第で、洗濯への満足度を高めるだけでなく、省エネや節約にもつながりますよ。今回はこれらの洗濯条件が洗濯の仕上がりへおよぼす影響をご説明します!
お洗濯はカスタマイズできる?
「お洗濯は洗濯機におまかせだから、料理や掃除などのほかの家事と違ってあまり工夫の余地がない」
なんてイメージはありませんか?最近の洗濯機は、洗濯物の重さに合わせて水量や洗濯時間を自動で設定してくれるものがほとんど。洗剤の自動投入機能がついた洗濯機も人気です。
とはいえ、実は自分で洗濯条件を変更するのもアリなのです。洗濯条件とは、洗剤量、水量と洗濯物量のバランス、洗濯温度(水温)などを指し、これらは仕上がりを左右する大事な要素です。例えば、汚れ落ちを良くしたい時に、これらの条件を変更するのも一つの手段。省資源・省エネルギーで環境やお財布にやさしい洗濯につながる場合もあります。今回は、代表的な洗濯条件のカスタマイズについてご紹介します。
5つの洗濯条件
代表的な5つの洗濯条件と、それらを変更した時のメリット・デメリットなどを紹介します。
条件1・洗剤量
洗剤の量は、汚れを落とすための大事な要素です。「あまり汚れていないから、洗剤は少なめで」「汚れがひどいから、たくさん洗剤を入れよう」と、汚れの程度で洗剤量をなんとなく調整していませんか?
洗剤量が増えると、最初は汚れ落ち(洗浄力)も高まりますが、適量を超えるとほとんど変わらなくなります。適量の2倍の洗剤を入れても洗浄力が2倍になるわけではありません。洗剤が多すぎると、すすぎのために余分な水や電気代が必要になるというデメリットが生じてしまいます。
一方、洗剤量が少ないと、汚れの量に関わらず、汚れ落ちが低下する可能性があります。さらに、洗剤には一度落ちた汚れを再び衣類につかなくする効果があるため、洗剤が少ない場合、洗濯機の中で落ちた汚れが衣類に再びついてしまうことも。
通常の汚れの量であれば、商品ごとに表示されている「使用量の目安」を参考に使用しましょう。また、気になる汚れがある時は液体洗剤を塗布し前処理したあとに洗濯機で洗うと、汚れ落ちがUPしますよ。
条件2・洗濯物量と水量のバランス
汚れ落ちを高めるためには、「洗濯物の量」と「洗濯水量」のバランスも重要です。
このバランスのことを「浴比」といい、洗濯物の重さ(kg)あたりの洗濯水の容積(L)で表されます。例えば、「1kgの洗濯物」を「30Lの水」を使って洗った場合の浴比は「30(L/kg)」です。
洗濯物の量に対して水量が少ない場合は「浴比が小さい」といい、反対に洗濯物の量に対して水量が多ければ「浴比が大きい」といいます。
日本石鹸洗剤工業会の調査※1によれば、縦型洗濯機では「17程度」、ドラム式洗濯機では「8程度」が日本の一般家庭の平均浴比です。
浴比が小さすぎる(=洗濯物量に対して水が少ない)と、洗濯物の詰め込みすぎになり、洗濯物がしっかり水に浸かりません。衣類が洗濯機内でしっかり回らないため、汚れが落ちにくくなり、洗いムラの原因となります。
ライオンの調査※2では、約7割の既婚女性が詰め込み洗いをしている実態がわかっています。
一方、一般的に浴比が大きくなると汚れ落ちは良くなる傾向があるのですが、浴比が大きすぎても(洗濯物量に対して水が多くても)、大量の水の中で衣類が泳ぐような状態になり、洗濯機の機械力が洗濯物に対して伝わりにくく、また洗濯物同士の摩擦効果も得られにくくなるため、汚れ落ちが悪くなる場合があります。浴比が大きすぎる洗濯は、1回あたりの洗濯物の量が少なく洗濯の回数が増えることにもつながるため、時間やエネルギーのロスにも気を使いながら、判断すると良いでしょう。
- 1 山田勲,最近の家庭洗濯の実施状況と消費者意識-2010年洗濯実態調査より-,繊維製品消費科学,52巻,12号,763-770ページ,2011年
- 2 ライオン調べ、既婚女性(容量5.0kg以上の洗濯機使用者)、1232名、2014年
- 3 山口庸子ら,家庭洗濯の浴比低下に伴う洗剤使用量の最適化,日本油化学,46巻,9号,991-997ページ,1997年をもとにライオン株式会社で作成
条件3・洗濯温度(水温)
一般的には、水温が上がると汚れ落ちは良くなります。これは、洗剤に含まれる界面活性剤・酵素・漂白剤成分の働きが高まったり、油汚れが溶けやすくなり除去されやすくなったりすることなどによるものです。
ただし、繊維によっては、水温が高いと縮みや風合いの低下が起こる場合もあります。また、温度が高すぎると、血液や食べこぼしなどたんぱく質汚れが固まって落ちにくくなったり、色落ちや色移りがしやすくなったりといったデメリットも。
水温を上げるには電気を多く必要とし、時間もかかります。様々なバランスを考慮すると、洗濯水温は「25〜40度程度」が適当だといわれています※4(おしゃれ着を洗濯する場合には、繊維を傷めないように30度以下としてください)。
温水を洗濯に利用できる場合は、寒い時期などは利用すると良いでしょう。また、風呂の残り湯を洗濯に使うことは、汚れ落ちの点からも、水やエネルギーを効率良く使うという点からも合理的といえるでしょう。ただし、衛生面から、最後のすすぎは残り湯ではなく、水道水を使用してください。
- 4 改訂被服整理学(一般社団法人日本衣料管理協会),34ページ,2017年
- 5 家政学辞典(日本家政学会編,朝倉書店),724-725ページ,1991年をもとにライオン株式会社で作成
条件4・洗浄時間(洗い工程の時間)
一般的には、洗浄時間が長くなると汚れ落ちは良くなります。しかしその一方で、布の損傷が進んだり、一度落ちた汚れが再び衣類についたりといった不具合のほか、エネルギー面・経済面でのデメリットが生じるため、むやみに洗浄時間を長くすることは好ましくありません。
そのような背景から、縦型洗濯機の場合は7〜10分、ドラム式洗濯機の場合は十数分が適切といわれています※6。現在、市販されている洗濯機の洗い時間は、数分〜15分程度で設計されています。基本的には、洗濯機の設定の範囲で洗えば問題ないでしょう。
なお、落ちにくい汚れの場合は、長時間洗いをするよりも、汚れの気になる部分をあらかじめ前処理してから洗濯したり、2度洗いした方が効果的です。
- 6 生活科学テキストシリーズ被服管理学(朝倉書店),20ページ,2012年
条件5・すすぎ回数
すすぎは、繊維上に残った汚れや洗い工程で繊維に吸着した洗剤成分を除去するための工程です。すすぎ効果は、使用する水の量が多いほど、また回数が多いほど高まります。しかし、すすぎの間中、繊維は水の中でもまれることになるため、過度なすすぎでは繊維を傷めるリスクも高まります。
現在は、すすぎ回数が1回でもよい洗剤も販売されています。これらの洗剤は、泡切れがよく、繊維に洗浄成分が残りづらいことが特徴です。お使いの洗剤に「すすぎ1回OK」のマークや、「すすぎ1回」の表示がされているか確認してみましょう。また、おしゃれ着用洗剤にはすすぎ回数が0回でもよい洗剤もあります。すすぎの回数をおさえることで、衣類のダメージを軽減できるほか、節水・節電・CO2削減にもつながります。
みんなはどうしてる?洗濯条件のカスタマイズ事情を調査
普段から洗濯機の設定変更をしている人は、どんなカスタマイズをしているのでしょう?ライオンの調査※7に寄せられた声をご紹介します。
- 7 ライオン調べ、20〜80代、2023年
●洗剤の量をカスタマイズ!
「洗濯物は少ない時は、水量も洗剤も減らしています」
●時間をカスタマイズ!
「デリケートな衣類をやさしく洗いたい時は、洗濯時間を短めにします」
「しわになりやすい服を洗う時は、脱水を短くします」
●浴比をチェンジ!
「洗濯機が自動設定してくれた水量に対して、洗濯物の見た目の量が多いと感じたら、水量の設定を一段階上げます」
「汚れが多く、しっかり洗いたい時に、水量を増やしたり、洗い工程の時間を増やしたりします」
●すすぎの設定を変更!
「時間を短縮したい時、衣類を傷めたくない時は、すすぎを1回にしたり、脱水時間を短くしたりしています」
なかには「毎回、手動で設定。自動おまかせコースを使ったことはない」という人も。
「洗濯物の仕上がりを変えたい」と感じたら、洗濯機の設定を変更してみるのもおすすめです。5つのポイントを知ってカスタマイズすれば、より満足感のある仕上がりが実現できるはずです。
この記事を作成・監修した
マイスター
お洗濯マイスター
片木 徹也
かたぎ てつや
洗濯用洗剤などの製品開発に約15年携わってきました。
日々のお洗濯を楽しく、快適に行っていただけるよう、技術に基づいたノウハウをわかりやすくお伝えしていきます。
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