どうして生えるの?お風呂場のカビのすべてがわかる!基礎知識編

どうして生えるの?お風呂場のカビのすべてがわかる!基礎知識編

黒カビは、目に見えない原因菌のうちから浴室に潜んでいて、温度・水分・栄養の条件がそろうと活発に増殖します。「黒カビが生えた」と気付いたときには、菌糸を網目状に伸ばして成長している状態です。ここでは、そんなカビの特徴・増殖のメカニズムをわかりやすく徹底解説!1年を通して防カビに役立つ基礎知識をお伝えします。

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カビの特徴・増殖のメカニズムを徹底解説!

掃除しても、掃除しても、また生えてきてしまうカビ。カビが気になる梅雨はもちろん、実は秋にもカビが増殖しやすい条件がそろうなど、カビは1年を通して生息するやっかいな存在です。「カビの正体は何なの?」「なぜ黒くなって増えるの?」と、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、カビが「目に見えない原因菌」から増殖するメカニズムを徹底解説!防カビに役立つ、カビの基礎知識をまとめました。今後のカビ対策の参考にしてくださいね。

「カビの正体」とは?

カビは微生物の一種で真菌という仲間に分類されます。カビと聞くと悪いイメージばかりを思いつきがちですが、人間にとって役に立つものもたくさんあります。しょうゆやみそは麹というカビの一種の働きによるものですし、ペニシリンのようにカビが元になった医薬品も多く開発されています。実はキノコも真菌の仲間です。

ちなみに真菌のもうひとつの仲間に酵母(こうぼ)という種類があります。酵母は、乾燥に弱く、常に水のある場所に発生します。ビールやパンを作るのに役立つ種類の酵母もありますし、住まいの中で浴室や洗面台の排水口付近で良く見かけるピンク色のヌメリ汚れの多くも酵母です。カビと異なり、23日で増殖する成長の早さも特徴です。
水のある場所には、真菌だけでなく細菌(バクテリア)も生息しています。カビよりも小さく目には見えません。

カビのライフサイクル

カビはどうやって増えていくのでしょうか?

カビは、ごく小さな種のような「胞子」から始まります。カビの胞子の大きさは、約5μm(マイクロメートル)。μm1mm(ミリメートル)の1,000分の1ですから、とても小さく、もちろん目には見えません。

<カビのライフサイクル>

カビの胞子は、発芽すると糸状の「菌糸」を伸ばして枝分かれしていき、やがて十分に成長すると、その先端などからまた新たに胞子をつくってばらまくようになります。

カビが増殖する3条件は「温度・水分・栄養」

カビは適度に暖かく、水分と栄養のある所が大好きで、「温度・水分・栄養」の3条件がそろうと、活発に増え始めます。

実は、ひとくちに「カビは湿度の高い環境を好む」といっても、種類によって生育に適する湿度は少しずつ異なります。例えば、浴室では黒いカビが、押し入れでは青っぽいカビが生えることがよくありますが、それぞれの場所の湿度が異なるために、生育するカビの種類が違うのです。

家の中に生えるカビの種類

住環境にはいろいろな種類のカビが生育しています。主なカビをイラストにまとめました。カビの名前は、学術的な分類上の名前と俗名(和名)とがあります。俗名は、見た目の色や状態(何に似ているか)などに由来しています。

<家の中に生える主なカビの種類>

※ロドトルラはカビと同じ真菌の仲間ですが、酵母に分類されます。浴室によく生える「ピンクヌメリ」の原因のひとつ。

浴室の黒カビの「目に見えない原因菌」

家の中でもっともカビが気になる場所といえば、浴室。ここからは、浴室のカビについて、ご説明します。

皆さんは、ある日、浴室で小さな黒いカビを見つけた時こそが、「カビが発生した瞬間」だと思っていませんか。でも実は、黒いカビを見つけたときには、もうカビは、黒い糸状の菌糸を網目状に伸ばしている状態です。下の図のように、カビは黒く目に見える前から潜んでいて、段階を経ながら成長していきます。

ライオンでは、目に見えないカビの原因菌が次第に黒いカビになる培養実験の様子を撮影してみました。

  • ※実験方法:黒カビの胞子液を塗布したPDA培地(カビの生育を促進するもの)を、25℃に保った浴室に設置して培養。培地が黒くなっていく様子を定点カメラで撮影した。

壁に貼った培地は、はじめは何もないように見えますが、徐々に黒くなっていく様子がわかります。

<カビの原因菌が黒くなっていく培養実験の様子>

カビが黒く見える前の原因菌のうちに対処することは、カビ対策のポイントのひとつです。

浴室のカビを放っておくと、どんどん広がってしまう!

浴室で黒カビを見つけてしまった時、皆さんどうしていますか。「後で掃除しよう」とついつい後回しにしていませんか?カビは「生き物」なので、放っておくとどんどん広がってしまいます。

下は、タイルの壁に生えた黒カビの写真です。左側の写真は、「あっ、カビが生えてきちゃったなぁ」という程度ですが、10日後には、右の写真のような黒カビがかなり目立つ状態になってしまいます。確実にカビが広がり、「汚いなぁ」という印象になってしまうのです。

<浴室のタイルの壁に生えたカビ>

また、下の写真は、シリコンパッキンにカビを培養して、経過時間ごとにスライスして、断面を顕微鏡で観察したときの様子です。時間が経つに従って、カビの菌糸が、どんどん奥に入りこんでいってしまいます。

<カビを培養したシリコンパッキンの断面の様子>

カビが広がるのをできるだけ早く食い止めるのも、カビの対策のポイントになります。

浴室の黒カビの年間活動カレンダー

カビは梅雨だけのもの、と思っている方も多いのではないでしょうか。たしかに冬の寒い時期などはカビも生えにくい印象がありますが、実態は少し違います。実は、黒カビは一年を通して浴室に生息し続けているのです。

<浴室の黒カビのバイオリズム>

浴室の黒カビも “夏バテ” する ?!

春、気温が25℃に近づくにつれ、カビは潜伏期間から増殖シーズンに突入し、湿度が高くなる梅雨はカビがもっとも気になる季節ですね。

しかし、梅雨が過ぎて夏になると、カビは、増殖が抑えられ夏バテの状態になります。実際に、梅雨、夏、秋を想定したそれぞれの温度でカビを培養してみると、夏を想定した条件(33℃)では、カビの増殖が抑えられています。

<各季節を想定した温度条件での黒カビの培養実験結果>

※1年を通して首都圏の6軒の家庭で測定した浴室内の平均気温(夏のみ最高気温の平均)(2007年ライオン調べ)。 梅雨:25℃、夏:33℃、秋:27℃、冬:16℃

秋になると黒カビは再び活発化!

そして秋になると浴室の黒カビは再び増殖して「秋カビ」シーズンに。実は9月と6月はほとんど同じ平均気温・湿度(気象庁データ、東京の平年値)になっており、9月も梅雨時の6月と同様にカビが生えやすい環境といえるのです。下の写真は、夏を想定した条件(33℃)で培養した夏バテ状態のカビを、秋を想定した条件(27℃)に変化させた実験の結果ですが、温度の変化に伴ってカビの増殖が活発になりました。

ライオンの調査では、秋にカビ対策をする人は梅雨時の3分の1程度と少なく、カビへの意識が低くなる季節です。しかしながら、秋も油断は禁物と言えそうですね。

<夏想定から秋想定に温度を変えたときの黒カビの培養実験結果>

冬でも黒カビは浴室にいる!

冬はカビを見かけることも少なく油断しがちですが、先の図からもわかるように、冬でも浴室にはカビが潜んでいます。冬のカビは気付きにくい状態のものが多いようですが、それはなぜなのでしょうか?

実際に、梅雨を想定した条件(25℃)と冬を想定した条件(16℃)の温度でカビを培養してみると、カビの広がり方やボリュームに大差はありませんが、はっきり差が出たのは「色」。冬想定のカビは梅雨想定のカビよりも薄い色をしています。そのため気付きにくいのです。

<梅雨と冬を想定した温度条件での黒カビの培養実験結果>

このように、カビがまったく生息していない時期はなく、まさに浴室のカビは「年中無休!」カビ対策は一年を通して必要といえます。

カビの基礎知識:まとめ

ここまでカビについての知識を深めてきました。簡単におさらいすると

●カビは適度に暖かく、水分と栄養のある所が大好き!この3条件がそろうと活発に増殖する
●浴室には、目に見えない「カビの原因菌」が潜んでいて、この「原因菌」が成長して黒カビとして目に見えるようになる
●カビを放っておくと、どんどん広がる
●カビは一年中生息していている

つまり、カビを防ぐには、黒カビが目に見えて生えてくる前に、「温度・水分・栄養といったカビが生える条件を取り除くこと」「カビの原因菌を除菌すること」が重要な対策になります。また、黒カビが生えてしまった場合でも、「まずは黒カビが広がるのをストップさせること」がポイントといえます。

カビは生えてから「取る」よりも、原因菌のうちに成長を「防ぐ」ほうが、掃除は格段にラクになりますし、黒カビの出ないキレイな浴室をキープできますよ。

この記事を作成・監修した
マイスター

吉井 和美

リビングケアマイスター

吉井 和美

よしい かずみ

掃除用洗剤の製品開発を約15年、技術者向けの情報発信を約5年経験してきました。
これまでの知識を活かし、掃除に前向きに取り組めるようなコツやノウハウをわかりやすくお伝えしていきます。

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