17万人の育児データから、赤ちゃんの特長や個人差について調査してみた
赤ちゃんがいるママ・パパにとって、我が子の成長する姿を見て幸せを感じる子育て。だけど、夜泣き・授乳・オムツ替えなど、苦労もたくさんありますよね。昨年、赤ちゃんが誕生したライター・ヨッピー夫妻の子育てもさぞかし苦労しているのかと思いきや、想像していたより大変じゃないんだそう。もしかして、育児の大変さって、子どもによっても全然違う?そこで今回、17万人分の赤ちゃんのビッグデータを集めている国立成育医療研究センターに協力してもらい、「平均的な赤ちゃんの実態」を可視化してみました。
息子が爆誕しました!
「くらしとココロに、彩りを。」でお馴染みのLideaをご覧の皆さんこんにちは。
ライターのヨッピーです。
今日は皆さんにお知らせがあります。
実は……、
かわいいかわいい息子が爆誕してしまいました。本当にありがとうございます。
「お前に息子が誕生したことと、くらしとココロの彩り、何が関係あるの?」と聞かれれば「さあ?」としか答えられないのですが、息子氏が爆誕したことによって、酒をかっ食らってゲームをして寝るだけみたいな、荒れた日々を送ってきた僕ですら家事だの育児だのを頑張るようになってくらしに彩りが出てきました。
実は僕、子どもが生まれる前から、Twitterなんかで「育児、大変!」「子育ては地獄や!」みたいな意見がたくさん流れてくるのを見ていたので、子どもが生まれることに対してかなりビビっており、爆誕前から育児本を読み、時短家電を買いあさり、義両親の手を借りるため義実家に居候するなど、ありとあらゆる手を尽くして受け入れ態勢を構築していたのですが、いざ子どもが生まれると確かに家事育児に追い回されつつも、「あれ?思ったより、大変じゃないのでは…?」みたいな感覚になってしまいました。
※なぜなら、我が息子は生まれた直後から「夜寝たら朝まで一切起きない」という特性を装備しているからです。
※「奥さんに家事育児を丸投げしてるから楽なだけじゃないの?」って言われそうなので一応反論しておきますが、家事も育児も両方めちゃめちゃやってます。奥さんに「僕の働きぶりはどう?」って聞いたら「家事80点、育児100点」とのことでした。まあ、すぐに散らかしちゃう癖はあるので……。
生まれてすぐから一晩中寝続ける我が子。マジで手がかからない。ちなみに↑の写真で僕が手袋をしているのは、来る日も来る日も哺乳瓶を消毒しまくったことによる手荒れが原因です。
夜の寝かしつけが終わると、息子氏はずっと寝ながらもお腹がすいてくると体をウネウネ動かして「うー」とか「あー」とか寝言を言い始めるので、そのサインが出たら授乳するなりミルクをあげるなりすると、寝たまんま飲み尽くし、そして寝たまんまゲップしてスコンとそのまま寝ます。オムツを変えても起きない。
なので我が子については「寝言を言い出したな~」と思ったタイミングでご飯を差し上げてさえいれば朝まで寝続けるので本当に手がかからないのです。
赤ちゃんの個人差、もっと解明されてても良くない…?
その一方で「夜中でも1時間ごとに目を覚まして泣いちゃう」みたいな子どももいるわけでして、そういうお子さんを育てるのは確かに大変だろうな、と思うわけです。
つまり、子育てが大変かどうかは、生まれてきた子どもの個人差にすごく左右される!
さらに言えば、赤ちゃんというのは言葉によるコミュニケーションが一切取れないため、赤ちゃんがギャン泣きするたびに我々親は「お腹空いたか!?寒いかな!?風邪ひいたかな!?体勢がつらいかな!?」などと右往左往…。
それで結局、子どもが泣き疲れて寝るまで、「なんで泣いてるのか全然わからんかった…」みたいな結論になりがちなんだとか…。
その点、我が子がギャン泣きする時って
・オムツが気持ち悪い
・お腹がすいた
・眠い
のどれか3つという非常に単純明快なシステムになっております。
オムツでもご飯でもない場合、抱っこ紐を付けて室内をウロウロ歩けば5分くらいでスコンと昼寝します。すごくわかりやすい。
この辺も赤ちゃんによる個人差がものすごく大きいことは間違いのないところです。
赤ちゃんの個人差で子育ての大変さも変わる!
この「赤ちゃんの個人差」こそが「育児」に対する理解をわりかし複雑にしているのかなぁと思っていて、僕が運営している子育て専用のオープンチャットでも、パートナーの「ほかの家は家事も育児も普通にできてるのに、なんで君はできないの?」といった心無い言葉に傷ついてる人もいました。
しかし、この「子どもによって大変さは全然違う」という事実を知った今では「そりゃ育てる子どもが違うんだから、育てる大変さも違うに決まってるじゃん」、って思うのと同時に、「周囲もその辺理解しておかなければいけないよね~」って思うようになりました。
言ってしまえば、家事だって家庭やパートナーによって大変さ加減がかなり違うはずです。
仮に片方が仕事に出ていて、片方が専業主婦(夫)というパターンでも、
① 家事に非協力的なパートナー
仕事に出る側が一切家事をしないどころか自分のこともせず、仕事から帰ったら服は脱ぎっぱなし、食べたら食べっぱなしであちこち散らかす。
② 家事に少し協力的なパートナー
仕事に出る側は基本的に家事をしないが、自分のことは最低限できるので自分の服の洗濯や食べたものの片付けそのほかぐらいはできる。
③ 家事にかなり協力的なパートナー
仕事に出る側も家事に参加し、メインの家事担当は自分とはいえ、分担してある程度の家事は手伝ってくれる。
っていう3つのパターンで同じ専業主婦(夫)でも家事の大変さは全然違うはず。
話し合いもできる大人相手ですらそうなんだから、個人差がむき出しの赤ちゃん相手なら大変さがバラけるのは当然!
そこで僕は思いました。
赤ちゃんの個人差、もうちょっと解明されてても良くない!?と。
そこで、17万人のビッグデータから赤ちゃんの実態を研究している国立成育医療研究センターの鳴海先生にお話をお伺いしました!ビッグデータをもとに「平均的な赤ちゃんの実態」を割り出すことで、我が子の特性をより理解できるのでは?と思ったのです。
鳴海 覚志(なるみ さとし)
国立成育医療研究センター・分子内分泌研究部 基礎内分泌研究室 室長/日本小児科学会認定 小児科専門医 医学博士。アプリを使って集めた大規模なデータを解析して、赤ちゃんの成長や発達の実態について研究している。また、胎児期から生殖年齢期までの内分泌疾患、成長障害、生殖機能障害および先天奇形症候群を主な対象として、ゲノム・エピゲノム解析と臨床的解析なども行っている。
17万人のビッグデータで、最近解明されたこと
鳴海先生!よろしくお願いします!!
いや実はその、育児の大変さ加減って赤ちゃんの個性に左右される部分がめちゃめちゃ大きいじゃないですか。今みたいにテクノロジーが発達してる世の中なら「手のかかる度合い」とかがバーンと点数表示されて、それによって行政から補助が出るよ、とかそういうシステムができても良いんじゃないかと思ってるんですよ。
あーなるほど、良い着眼点ですね。
でしょう!我ながら良い着眼点なんですよ!
我々は小児科のドクターなのでカルテや症例など赤ちゃんのデータはたくさん持っていますが、それは病院に来る赤ちゃんのデータ、つまりは何かしらの病気になっている赤ちゃんのデータで、逆に言えば病気になっていない赤ちゃんのデータはほとんど持っていなかったんです。
風邪もひかずにすくすく育ってる子どもは病院行かないですもんね。
そう。だから健康な赤ちゃんがどれくらい寝て、どれくらいミルクを飲んで、どれぐらい成長して、というようなデータを学問として集めてこなかったんです。
そうなんだ!でも、赤ちゃんの平均身長とか平均体重とか、ああいうのはデータとしてありますよね?
おっしゃる通り、厚生労働省が10年に1度、「乳幼児身体発育調査」という調査を行っていて、数千人の赤ちゃんの発育状態を調べています。でもデータの母数がそもそも少ないですし、10年に1度という頻度も少ないですよね。これが、今では育児アプリによって、17万人というたくさんの赤ちゃんのデータがリアルタイムに入って来るようになって、かなりいろいろなことがわかるようになりました。ちなみに、ヨッピーさんは育児アプリ(※1)入れていますか?
入れてますよ!バリバリ使ってます!
※育児アプリ……赤ちゃんの授乳時間や寝た時間、排泄の回数などを記録するアプリ。「ミルク飲んだのどれくらい前だっけ?」などを夫婦で共有するために使う人が多いそうです。我が家ではミルクの時間と体重を管理しています。
そう、今育児をする人たちは多くの方が使っているようです。また、我々の研究の一環としてデータを提供していただいている育児アプリでは、母乳か粉ミルクか、授乳の回数はどれくらいか、いつ寝ていつ起きたか、体重の増減はどうか、といったデータをユーザーの方々が入力してくれています。
「粉ミルクの方が腹持ちがいい・良く寝る」は本当?
その集めたビッグデータでいろいろな傾向がわかるようになってきました。例えば「母乳より粉ミルクの方が良く寝る」とか。
あー、粉ミルクの方が腹持ちが良いって良く言いますしね。
そうなんです。小児科医ですし、感覚として「粉ミルクの方が良く寝るな」っていうのはわかっていたんですけど、それがはっきりとデータにも現れた、というのが画期的なんです。
「寝る子は育つ」は本当?
例えば、「寝る子は育つ」とか良く言いますけど、それも相関関係があったりするんですか?
「寝る子は育つ」というのはよく聞く言葉ではありますが、睡眠時間の長さと身体の成長はあまり関係ないかもしれません。というのも、赤ちゃんって冬場より夏場の方が睡眠時間が短いんですよ。ベッドに入る時間は夏も冬もだいたい同じなんですけど、夏は明るくなる時間が早いから早く目が覚めるんでしょうね。それなのに、身長は夏場のほうが伸びるんです。
へーー、でも、「寝ると成長ホルモンが出る」とか言いますよね。
はい。夜間に成長ホルモンがたくさん分泌されると言われています。そのため、夜間にちゃんとぐっすり寝るということは大切なのですが、睡眠時間の長さそのものと身体の成長は相関がないんです。
なーるーほーどーーー。
「男の子の育児は大変」は本当?
ほかにもおもしろいデータがあって、男の子と女の子でミルクを飲む量が違うんですよ。平均すると男の子の方が女の子より1日あたり50mlくらい多いんですね。なのに成長するスピードはあまり変わらない。むしろ思春期までは女の子の方が成長が早いくらいなんですよ。これから読み取れるのは、男の子の方が活動量が多い、っていうことなんですね。
「育児においては男の子は元気すぎて大変」って言いますよね。
そう。そういう言い伝え的に言われてきたようなことの裏付けがデータとしても取れた、ということですね。
睡眠時間、授乳回数、排泄回数…、平均的な赤ちゃんの実態とは?
今回、赤ちゃんによって「どれくらい手がかかるか」っていう個人差を可視化できればと思っているのですが、そのへんはわかるんでしょうか…?
起きている時間や授乳、排泄の回数でなんとなく想像はつくかもしれませんね。
例えば、新生児だと睡眠時間がだいたい1日に15時間±2時間ぐらいの幅です。生後2〜3か月くらいでだんだん昼は起きて夜まとめて寝る、という感じになるのですが、そうなると1日に12時間±2時間ぐらいの幅になります。これより睡眠時間が短い赤ちゃんだと起きている時間が長いのでそれだけ手がかかるという事になりますね。
授乳回数も赤ちゃんによってかなり違いがあるんですか?
はい。新生児期の場合、母乳だと1日に10回±2回ぐらいで、粉ミルクだと1日に7回±1回ぐらい。排泄も母乳と粉ミルクで違って、母乳だと4回、粉ミルクだと2回弱なので倍くらい違いますね。これも、「なんとなく経験としては知っていたけど、きちんとしたデータで出てきた」ということなんです。
その話を聞くと母乳の方が粉ミルクより大変そうですね。でも免疫的にはやっぱ母乳で育てる方が良いとされてるんですよね。
はい。WHOも粉ミルクより母乳での育児を推奨していますしね。ただ、無理してまで、母乳にこだわる必要はないと思います。母乳の出やすさについては、お母さんの個人差もあるんですよね。母乳がたくさん出るお母さんなら粉ミルクを作るよりも母乳の方が楽という人もいますし、逆に母乳があまり出ないお母さんなら何度も何度もちょっとずつ授乳させなきゃいけないのですごく大変になります。
何度も授乳するのは大変そうですね…。
だからあまり「絶対に母乳で育てるぞ!」などと自分を追い込まずに、母乳が足りない分をミルクで補うとか、睡眠が取れなくてつらい時はミルクを利用して夜間の授乳を夫側にお願いするとか、母乳とミルクを工夫して使い分けるのが良いかと思います。
ビッグデータによる研究で、これからの育児はどうなるのか?
先生の研究が進んでいくとどうなるんですか?
そうですね。デバイスがどんどん進化しているので、もっと詳細なデータを取れるようになるのではないかと思っています。
確かに。今、大人用だと活動記録や睡眠時間の計測、血中酸素飽和度を測ったりできるようなスマートウォッチがありますもんね。あれの赤ちゃん用がないのが不思議。
そのうち出てくると思いますよ。血中酸素飽和度がわかれば赤ちゃんの窒息事故を未然に防ぐことができますし、睡眠時間のログや加速度センサーによる活動記録データが取れれば、赤ちゃんが潜在的に持っているリスクなどが可視化できるようになるかもしれないと思っています。病気の早期発見にもつながるかもしれません。
昔は、育児っておじいちゃん・おばあちゃんも含めてやっていたんですよね。あとは近所の人たちとのコミュニティもあったので、手が足りない時に手伝ってもらうことができました。ですが、今の時代は夫婦だけで育てるケースが多いので、頼る先もないし、どうしても孤立しちゃうんですよね。
あーたしかに!育休取って家でずっと子どもと一緒に暮らしてると「社会から孤立してる……」って思う人も多いみたいで。
今回の話で言うと、夜あまり寝ない、授乳の回数も多い赤ちゃんだと特に大変なのに、そのことを知らないと自分を責めたりしがちじゃないですか。だからデバイスが進化して、育児の大変さが可視化されることで、「そんなに自分を責めなくてもいいんだ」と気持ち的にも少し楽になるのではないかなと思います。
なるほどー。
あと、個人的にすごく興味があるのですが、素晴らしい実績を残したアスリートの方、例えば大谷選手みたいな方が赤ちゃんの頃にどういう過ごし方をしていたのか、というログが取れるようになると面白いな、と思っています。
おお。赤ちゃんの頃から運動が得意だったのか、とか。
そう。どれくらいでハイハイしたのか、どれくらいで歩くようになったのか、など。そういったデータが残っていれば「どうも、こういう成長の仕方をしている赤ちゃんは運動選手に向いているらしいぞ」ということがわかってくるじゃないですか。それは赤ちゃんの成育を研究する者として非常に興味がありますね。
なるほど!いやー。技術が進化して育児がどんどん楽になると良いなぁ~。今日はありがとうございました!
今後の赤ちゃん研究の進化に期待!
というわけで、いかがだったでしょうか?
今回、平均的な赤ちゃんの実態を割り出してみた結果、皆さんの中には、「我が子は深夜の授乳回数が多いな…」とか、「睡眠時間が短いな…」と思った人もいるかもしれません。一度、「平均と比べてウチの子はこういう傾向があるみたい」と家族で話し合ってみるのも良さそうです。
そして、テクノロジーの進歩によって「赤ちゃんの実態はだんだんわかるようになりつつある」っていう過程にあるようです!個人的には赤ちゃんの手首に装着するバンドみたいなやつで、血中酸素飽和度をはかりつつ、加速度センターによる活動記録とか睡眠時間の計測とか、あとは泣き声を感知して1日にどれくらい泣いてるかとか、そういうのが記録として残るようになれば良いのになーと思っております!泣き声の様子をAIで解析して「なんで泣いてるか」を分析する研究も進んでるみたいだし!
このジャンルの研究、もっと進んでくれ~~~!
・当記事に掲載の情報は、執筆者、取材対象者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
ヨッピー
ライターのヨッピーです。「息子がかわいすぎる」みたいな話をあちこちでしてたら「もういい加減にしてくれ」みたいな顔をされるようになりました。
X(旧Twitter):@yoppymodel
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下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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