歯の着色汚れ(ステイン)の原因と対策~美しく白い歯のために自宅でできること~
歯の着色汚れ(ステイン)を防ぐには、毎日の歯みがきをきちんと行うことが基本です。清掃剤入りのハミガキを使ってみがきましょう。さらに、着色汚れ(ステイン)を浮かせる働きを持つ成分や、歯の表面の光沢を高める成分などが配合されたハミガキを使うのがおすすめです。
「明眸皓歯(めいぼうこうし)」という言葉を聞いたことはありますか?「澄んだ瞳と白い歯」という意味で、古代中国の詩人・杜甫が、非業の死をとげた楊貴妃をしのんで作った詩の一節です。転じて「美人」を表す言葉として用いられます。
現代では「むし歯のない白い歯」「健康的なピンク色の歯ぐき」「美しい歯並び」の3つが、キレイな歯の3条件となっています。歯は第一印象を決める、大切なポイント。美しい歯と口元が、笑顔をよりいっそう輝かせます。
そこで、美しく白い歯を守るために知っておきたい、歯の色に関する知識や、歯の着色汚れ(ステイン)を自宅でケアする方法をご紹介します。
「歯の色」は1人1人違う
よく「白い歯」といいますが、歯を鏡で見てみると、真っ白ではなくやや黄色く見えます。
歯は、黄色みを帯びた象牙質がエナメル質で覆われた構造をしています。エナメル質は半透明で象牙質が透けて見えるため、歯本来の色は黄色みを帯びているのです。
肌や髪の色が人によって違うように、実は歯の色も1人1人違います。象牙質の色やエナメル質の厚さには個人差があり、それが生まれつきの「歯の色」の違いとなってあらわれます。
さらに、このような各人固有の歯の色に、様々な原因による着色が重なることで、見た目の歯の色に違いが出るのです。
歯の着色原因
歯の着色の原因には、
・外部からの汚れにより歯の表面が着色する「外因性」のもの
・歯の内部からの着色や変色による「内因性」 のもの
があります。
外因性の着色は「着色汚れ(ステイン)」と呼ばれ、チョコレートやコーヒー・紅茶などの食品や飲料、タバコなどに含まれる着色原因物質(ポリフェノール、タールなど)が歯の表面に付着した状態です。
内因性の着色には、歯がつくられる時に着色成分がエナメル質や象牙質に移行して生じる場合や、歯が生えたあとに外傷などで歯髄(神経)が出血するケース、加齢などにより象牙質が着色・変色して生じるケースなどがあります。
着色汚れ(ステイン)が歯に付着する仕組み
内因性の着色は歯みがきでは落とせませんが、外因性の着色なら歯みがきで落とすことが可能です。
そこでここからは、外因性の着色の1つである、飲食物による着色汚れ(ステイン)の原因とケア方法をご紹介します。
まず、着色汚れ(ステイン)はどのように歯に付着するのでしょうか。
通常、歯のエナメル質の表面は、唾液が付着してつくられる「ペリクル」という薄い膜で覆われています。そのペリクルに、食品に含まれるポリフェノールなどの着色原因物質が、唾液中に含まれるカルシウムなどと結びついて蓄積していきます。これが、着色汚れ(ステイン)の正体です。
着色汚れ(ステイン)を防ぐハミガキ選びのポイント
毎日のブラッシングで着色汚れ(ステイン)を防ぐには、ハミガキ選びが重要です。ここでは、着色汚れを防ぐために効果的なハミガキの選び方を紹介します。
1.清掃剤入りのハミガキを使う
歯の着色汚れ(ステイン)を防ぐには、清掃剤の入った「ハミガキ」で歯をみがくことが大切です。清掃剤は、何もつけずにハブラシでみがくだけでは対処しきれない、日々の着色汚れ(ステイン)の蓄積を防いでくれます。
清掃剤の入ったハミガキを使わず水だけで歯をみがいていると、下の写真の左の状態から徐々に歯に着色汚れ(ステイン)が蓄積していき、右の写真のように見た目にも着色汚れが目立つようになり、時間の経過とともに落ちにくくなってしまいます。
2.「キレート剤」入りのハミガキで着色汚れ(ステイン)を浮かせて落とす
ハミガキには、着色汚れ(ステイン)を浮かせて落としやすくする成分(キレート剤)が配合された製品があります。
キレート剤が歯の表面と着色汚れの間に入り込み、汚れを浮かせることで、着色汚れを落としやすくします。
ハミガキに配合されるキレート剤には、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等、色々な種類がありますが、ここでは「無水ピロリン酸ナトリウム」が、着色汚れ(ステイン)を浮かせて落としやすくするメカニズムをご説明しましょう。
ステインは、歯の表面のカルシウムイオンとしっかり結合しています。それは、ステインは(-)、カルシウムイオン「Ca」は(+)の電荷を帯びていて、互いに引き合っているためです。
ステインとカルシウムイオンがしっかり結合しているところへ、無水ピロリン酸ナトリウムを与えると、ピロリン酸イオン「PP」(―)がステインと歯の間に浸透していきます。
ピロリン酸イオンは(-)の電荷を帯びた陰イオンで、(+)の電荷を帯びた陽イオンであるカルシウムイオンと、より結び付きやすい性質があります(キレート作用)。これにより、ステインのかわりにカルシウムイオンと結合して、ステインを浮き上がらせるのです。
歯の表面から浮き上がったステインを、ハミガキの清掃剤とブラッシングによりしっかりと取り除き、歯本来の白さを引き出します。
3.「光沢剤」入りのハミガキで歯の光沢感もアップ
くすみのない白い歯を目指すなら、歯の色(白さ)だけでなく、輝いている(光沢感がある)ことも大切です。
人の歯の場合、着色汚れ(ステイン)が歯に付着していると、着色汚れ(ステイン)が光を吸収して光反射が起きにくいため、歯がくすんでいる印象を与えます。また、歯をみがいて表面の着色汚れ(ステイン)が除去されても、細かいキズに着色汚れ(ステイン)が残っていると、やはり着色汚れ(ステイン)が光を吸収して、歯がくすんで見えます。
細かいキズに入り込んだ着色汚れ(ステイン)を除去する成分「光沢剤」が入ったハミガキを使用して、歯の光沢感をアップさせることも、美しく白い歯を目指すポイントです。
歯の着色汚れ(ステイン)を防ぐために効果的な歯のみがき方
着色汚れを防ぐのには、もちろんブラッシングの方法も大切です。
歯をみがくときは、歯の面にブラシの毛先をきちんとあて、毛先が開かない程度の軽い力でブラッシングしましょう。
着色汚れ(ステイン)を落とそうとして強い力でゴシゴシみがくと、毛先が開いて歯面にきちんとあたらず、かえって汚れが落としにくくなったり、歯や歯ぐきを傷つける可能性もあります。
着色汚れ(ステイン)が付きやすい飲食物をとった後は歯みがきや口すすぎでケア
食べ物や飲み物によっては、ポリフェノールなどの着色原因物質を多く含むものがあります。そのような食品を食べたり飲んだりした後は、特に注意が必要です。歯みがきができればよいですが、歯みがきできない時でも水や洗口液(マウスウォッシュ)などを利用して、お口に残った汚れを洗い流すようにしましょう。
美しく白い歯を保つためには、「食べたらみがく」ことが大切です。
その際、着色汚れ(ステイン)を落としやすくする成分や、歯の光沢度を高める成分を配合したハミガキを使って、きちんと歯をみがき、着色汚れ(ステイン)の蓄積を効果的に防ぐといいですね。
まずは着色汚れ(ステイン)の元となる汚れをしっかり落とし、自分本来の歯の色を取り戻して美しく白い歯を目指しましょう!
TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!
もっと歯を白くしたい!どんな方法があるの?
クリーニングなど、歯科医院のプロケアで歯を白くする方法があります
歯の表面についた着色汚れ(ステイン)は、美白ケア用のハミガキを使ったブラッシングでケアしましょう。それでも着色が気になる場合は、歯科医院で本来の歯の色に戻したり、元の色より白くすることも可能です。
それには、いくつかの方法がありますが、自分に適した方法は着色の原因により様々です。
飲食物による着色汚れ(ステイン)なら、クリーニングが適しています。自分の元の歯より白くしたい場合はホワイトニング、著しい変色にはラミネートベニアなどの方法もあります。
ここではそれぞれの内容を、簡単にご説明します。詳細は歯科医院にご相談ください。
クリーニング
歯科衛生士が専用の器材を使い分け、歯科医院用のクリーニングペーストを用いて、日常の歯みがきでは取りきれない着色汚れ(ステイン)を取り除き、本来のキレイな歯面や歯の白さを取り戻します。着色汚れ(ステイン)とともに、歯石も取り除いてもらうといいですね。
ホワイトニング
専用の道具や薬品を使って、歯を漂白する方法です。自分の本来の歯の色よりも、白く美しい歯になります。
歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、歯科医の指導のもと自分で行うホームホワイトニングがあります。
ラミネートベニア
歯の表面を軽く削り、薄いセラミック製の板を張り付ける方法です。ホワイトニングでは白くできないほどの変色もカバーでき、自分の歯と見分けがつかないほど、自然な白い歯に仕上がります。
この記事を作成・監修した
マイスター
オーラルケアマイスター
平野 正徳
ひらの まさのり
オーラルケア関連の基礎研究ならびに開発研究に20年以上携わってきました。 これまで得た知識と経験を活かして、歯とお口の健康に関する情報をお伝えします。
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