ボーッとする時間がひらめきを生む!? 精神科医に聞く「上手な休み方」
ふとした時に頭がボーッとしてしまうことってありませんか?なぜ何も考えない「ボーッとタイム」が突然やってくるのか?疲れのせいか、現実逃避のせいか、はたまた動物の性(さが)なのか...、夫婦共にゆったり過ごしているライターの斎藤充博が、その真相を探るべく精神科医の西多昌規先生への取材を実施!のんびり屋さんのご夫婦だけでなく、慌ただしい毎日を過ごしているご夫婦も、ぜひ生活に取り入れて欲しい「上手な休み方」についても聞いてきました。
休憩は大切なのですが…
こんにちは。ライターの斎藤充博です。僕はこれまでにLideaで日常の生活に関するさまざまな疑問を解決する記事を書いてきました。
例えばですが…
こうして振り返ると「人間の体」に関わるような疑問が多いですね…。
さて、今回の疑問は「ボーッとする」ことについてです。
というのも、僕は妻と二人で暮らしているのですが、二人ともボーッとしているタイプ。夫婦でボーッとしてしまっていることが多いんです。
休日などは、こんな風になっていることもしばしば。ボーッとすることは好きだし、決して悪いことではないと思っています。でも周りの人に話を聞くと、家の中でもけっこう忙しくしている人が多いよう…。
「はたして、おれたちはこんなボーッとした生活で本当にいいんだろうか…」と、不安になることも。「ボーッとする」はヒトにとって必要なのか?それとも、時間の無駄使い?
そこで、今回はヒトがボーッとしてしまう理由や脳のメカニズムについて、「ボーッとする」のスペシャリストである精神科医の西多昌規先生にリモートでお話をうかがってきました。
このインタビューにより、僕たち夫婦は図らずも「上手な休み方」のプロフェッショナルであることが判明してしまいます……。
西多 昌規(にしだ まさき)
精神科医(医学博士)、早稲田大学准教授。精神科医として、主に大学病院にて数多くの患者を診察・治療してきた。睡眠障害やうつ病の最新治療にも詳しく、睡眠医療専門医としての経験も豊富である。著書『ぼんやり脳!』など多数。
ボーッとする時間が「ひらめきの種」を刺激する!?
…というわけで、我々夫婦はわりとボーッとしていることが多くてですね……。これでいいのか?と思っています。
なるほど。
ずばり、ボーッとするっていいことなんでしょうか。
そうですね。人間というのは、ボーッとしていると、アイデアがひらめきやすくなるんですよ。
えっ。どういうことですか。
ボーッとしているというのは、脳が警戒をしていない状態なんですね。そういった時には、「マインドワンダリング」という現象が起こりやすくなっています。
マインドワンダリング…?
マインドは「心」で、ワンダリングは「フラフラする」という意味です。つまり心が目的もなくフラフラとさまよう状態のことですね。こういう時に、人間は何も考えていません。ただ、「考える以前の状態」というか、何かイメージをしていることがあります。
なんとなくわかりますね。
アイデアって、意外な結びつきから生まれませんか?たとえば「AとB」くらいの近いところなら普通に考えていても結びつきます。でも「AとZ」くらい遠いと、考えていても結びつかないんですよね。マインドワンダリングの時はこうしたひらめきが起きやすいんです。
すると、僕はボーッとする時間でアイデアをひらめいていたのか…。僕のマインド、めっちゃワンダリングしてますね。
頭の中には、自分で意識しているような動きではなくて、自分で意識してないような動きがけっこうあるって言われているんですね。
なるほど。思えばLideaで「『めんどくさい』の正体を脳科学者に聞く」みたいなヒット記事や、「二度寝はもうしない。『牛肉の写真』で完全に目が覚めることがわかった」みたいなおもしろ記事が執筆できたのも、ボーッとする時間があればこそだったのかもしれない…(ブツブツ)。ちなみに、ボーッとすることは他のいいこともあったりするんでしょうか。
疲れにくくなるということもあると思うんですよね。ボーッとしていない時間って、現代人は何か作業をしているか、そうでなければスマホを見ているでしょう(笑)。そうしたことをしないだけでも、目の疲れや、気持ちの疲れが抑えられる。
ボーッとするの、最高じゃないですか。
作業中よりボーッとしている時の方が、脳のエネルギーを使っている!
お話を聞いていて思ったのですが、脳ってボーッとしていても、けっこう働いているんですね。
それはおっしゃるとおりですね。ボーッとしているときに脳は「デフォルト・モード・ネットワーク」の状態にあると考えられています。
デフォルトモード…???
ボーッとしているときって、脳は活発に活動しています。ところが「特定のこの部分が活動している」とは言いにくいんですよ。回路のように、さまざまな場所が少しずつ活動している。例えばですが、「東京都の豊島区」というような区切りではなくて、「町田市と川崎市が連携している」、というようなイメージです。
なるほど……。なんとなくわかります。北関東に「両毛地域」という場所がありますが、あれは栃木県と群馬県の一部です。
余談ですが…
両毛地域とは、栃木県と群馬県の県境付近に広がる地域。上毛野国(かみつけのくに/現在の群馬県)と下毛野国(しもつけのくに/現在の栃木県)を併せた地域を指す地名のことです。
そうそう。あのあたりって茨城県も微妙に入ってますよね?
なぜか北関東トークになってますね…(笑)。話を戻しましょう。
面白いのは、作業をしている時や考えているときよりも、ボーッとしているデフォルト・モード・ネットワークの方が脳の消費エネルギーは多いんですよ。作業中の約15倍ものエネルギーが、ボーッとしている時に使われていると言われていて…。
15倍!それはすごいですね…!
デフォルト・モード・ネットワークの時は広範囲にわたって脳が活動しているため、雑多な記憶やイメージが整理・結合されやすく、アイデアのひらめきが生まれやすいんです。
なるほど。脳を広範囲に活動させることが、アイデアの誕生につながるんですね。
逆に何かに集中している時は、脳を効率的に使うため活動する領域を減らしているんです。数学の名人と素人が問題を解いているときに脳波を測定すると、名人の方が脳の活動している領域は狭かったそうです。いかにプロフェッショナルが脳を効率的に使っているかということを表していますね。
スポーツでも力んでしまうと、本来のパフォーマンスを発揮できないということがありますが、それに似ているかも。
家事の合間に「ボーッとタイム」を!上手な休み方とは?
ボーッとするにはどうしたらいいでしょうか?僕はいつもボーッとしているんですが、意識したらできなくなってしまいそうに思えてきました。ボーッとするテクニックを教えてほしいです。
まず、積極的に体を動かすことですね。それもスポーツではなくて、家事をやったりとか、歩いて買い物に行ったりとか、日常的なことです。そうすると体が疲れるじゃないですか。すると自然と休む時間が増え、ボーッとしやすくなります。
(買い物に行くし、家事も普通にやっているな…)
そして実際にボーッとしようと思ったら、やわらかい物の上にゆったりと座ることですね。家の中に置くとしたら、ビーズクッションなど最適だと思います。
(それ、うちにあるぞ…)
あとは、植物を置いたり、アロマを焚いたりするのもおすすめです。好きな音楽をかけるのもいいですね。照明は明るすぎず、暗すぎずがいいでしょう。
(最近妻が観葉植物とアロマを導入してたな…。僕は最近サウンドバー(スピーカー)を買った…。それから妻が間接照明を買おうとしていたっけ…)
…僕ら夫婦がボーッとしている理由が完全に分かりました。気がつかないうちにボーッとする環境を整える方向に向かっていたようです。
そうですか(笑)。ちなみに、ボーッとするのを夫婦でお互いに共有できるのはいいですね。そういう価値観の理解や関係性があるのが前提になりますからね。家の中で片方だけがボーッとしていたら、もう片方が忙しいときにそれを見てイライラしちゃう可能性もあります。
「ボーッとする」の天敵はスマホ。お風呂で遠ざける
他にもボーッとするコツはありますか。
最後に、私が一番お勧めしたいのはお風呂や銭湯ですね。現代人はどうしてもボーッとしている時間をスマホに奪われがちです。銭湯ならスマホを持ち込めない。
スマホは確かに奪ってきますね。なんとなくSNSを見ていたら、仕事の通知が入ってきたりして……。いますぐやらなくちゃいけない仕事でもないんだけど、一度確認しておきたくなる。
そうでしょう。それがあると休んでいるはずの時間でも、休めていませんよね。最近では仕事でも即レスしなくちゃいけないような雰囲気があるので、仕事せざるを得ない。スマホのせいで、僕だってボーッとはしていられません(笑)。
先生もそうなんですね。スマホは強いな……。
スマホの話をしてしまいましたが、お風呂自体もいいと思っています。お風呂に入ったらフワッと深く息を吐きますよね。お風呂の水圧や、副交感神経が優位になることでそうなると思うのですが、これは非常にリラックスできる。
息は吐きますね。なんとなくおじさんっぽいと思っていたけど、遠慮なくやろう(笑)。そういえば、「銭湯」や「サウナ」のブームって長くありますよね。無意識にボーッとする時間をみんな求めているのかな。
極めろ!「ボーッとタイム」
ボーッとしている時に実は脳が動いていて、アイデアが出てきやすくなる。意外に感じましたが、言われてみると思い当たるフシもあります。忙しくしているときや、一生懸命に考えている時って、いいアイデアが出てきにくいのです。
僕は10年くらいライターをしています。これだけ長く続けられたのは、自分自身のボーッとするクセや、一緒にボーッとしてくれている妻のお陰なのかも。
これから僕はもっともっとボーッとしていこうと思っています。…でも、それはサボっているのではなくて、「デフォルト・モード・ネットワーク」を活用し、「マインドワンダリング」を引き起こしているということですので、なにとぞご了承ください(←カタカナを連発すると説得力が増すと思っている)。
そして、今日のような話を聞いた後は「他人がボーッとしている」状態にも寛容になれるのではないでしょうか。
そして、みんながボーッとしている世界が実現したらいいなーと思います。ヨダレをたらすのはやり過ぎかもしれないけど…!
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
斎藤充博
1982年生まれ。マンガを描く指圧師。はりきって仕事をしたいのに、食後の昼寝がやめられない。毎日気がつくと夕方になっている。もう動物園の動物になりたいです。
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