何もしないからこそ得られる満足感! 元プロニート直伝・ダラダラ休日の極意
充実させたいがゆえに、あれもこれもしたい!とつい欲張ってしまう休日。しかし実際には、ぼんやり過ごしてしまい、時間を無駄にしてしまったような後悔や焦燥感にかられてしまう人もいるのでは。今回は、ライター・ツマミ具依が 京大卒の元ニートのphaさんに、予定を詰め込まなくても充実する休日の過ごし方を伝授していただきました。これを読めば休日の概念がきっと変わります。
こんにちは、ライターのツマミ具依です。皆さん休日はどう過ごしていますか?
私は、朝早起きてして家事をこなし、昼は気になるイベントやジムに行き、夜は自宅でゆっくりスキンケア…という1日を過ごすはずが、結局今日もできませんでした。起きたら昼過ぎ。またやってしまった…。せっかくの休日なのに後悔が残るような過ごし方はもう嫌!
そんなことを考えるうちに、“休むって何…?”と、休日のあり方について考えるように…。休日の過ごし方を見直そうと思っていたところ、京大卒の元ニートのphaさんの存在が頭に浮かびました。
ニートだったら毎日が休日!きっとphaさんなら、後悔しない休日の過ごし方やマインドを知っているのでは?
phaさんと一緒に「充実した休日」について考えてみることにしました。
pha(ふぁ)
1978年大阪生まれ。京都大学卒業後、就職するも社内ニート(仕事がないため社内でほとんど働いていない状態)を3年続け、退職。その後もずっと就職せずにふらふらと暮らしている。インターネットが好きな人が集まって住むシェアハウス「ギークハウスプロジェクト」提唱者。『しないことリスト』(大和書房)『がんばらない練習』(幻冬舎)など著書も。
phaさん流の休日定義「予定がある日は休日じゃない」
今日はよろしくお願いします。いきなりですが、phaさんは、休日をどんな風に過ごしているんですか?
僕は予定があるのが嫌なので、できるだけ予定を入れません。何か予定が入っていると、それは休日じゃないって思います。
え!?休日こそ何か予定を入れるものだと思っていました。仕事の日は、自分のプライベートを捧げているわけじゃないですか。それを取り戻すのが休日かなと思うんです。
休日で意識しているのは、1つも予定を入れないことです。
では、予定を入れずにphaさんは何をしてるんですか?
なんだろう…。まずは、寝たいだけ寝る。飽きるまで寝て、なんか寝るのとか家にいるのに飽きたら外に出る。とはいっても目的地は決めず、ぶらぶら歩いて歩き疲れたら帰る、みたいな。
ずいぶんと野性的ですね。野良猫みたい…!でも何かしら予定が入る日もありますよね?
そうですね。この間は、友人に誘われて登山に行ってきました。楽しかったけど、結構疲れましたね。寒かったし。
疲れちゃったんですか(笑)、その「疲れた」って充実感とは違うんですか?
楽しいことは好きだけど、予定を入れすぎると疲れてしまって楽しむ余裕がなくなっちゃって、もったいないって思うんですよね。予定があるとちゃんと行かなきゃと思って、30分前に着いちゃったり、わりとがんばりすぎてしまうのもあるし。だから何も決まっていない休日が最高なんですよ。
でも何も予定を入れないといっても、やらなきゃいけないことってあるじゃないですか。家事とか用事とか。どうしてるんですか?
家事をしたら僕にとって完全な休日ではないですね。昨日の予定は歯医者で、それしか行かなかったんだけど、自分としてはよくがんばったって感じです。
歯医者だけで、ですか?
歯医者は行かなくてはいけない場所なので、仕事みたいなものです。
1日に予定を2つ以上入れるのも無理ですね。忙しすぎる。1日1つでもそれが2日連続すると「ウッ」てなるので、1日予定入ったら次の日は何も入れないようにしています。
同じ国の話とは思えない(笑)。例えば、連休は予定を入れるのが普通っていう空気が世間にあると思うんですよね。「ゴールデンウィークどこか行くの?」とか話題にするじゃないですか。空白にしようという選択肢は発想にないというか。
そうなんですかね?なんか怖いですね、世間は(笑)。
出家でもしました(笑)?
でも思い返せば、会社員の時はそういうノリに乗っていたかもしれないですね。せっかく休みがもったいないからって、もっといい過ごし方があるかもと模索していました。何をしたらいいかわからないから、バックパッカーっぽいことをしてアジアに行ったりとか、合気道を習ったりとか。
合気道!意外ですね。phaさんにも、会社員時代は予定を入れるべきという人間らしい発想があったわけですか…。
どこか無理してましたね。こういう過ごし方、向いてねぇなって思いました。自分が本当に必要なものがわかってなかったというか。そのうち自分は部屋でだらだらしているのが好きだなと気づきました。
なるほど、自分に向いている休日か…。自分らしい休日を過ごすためには、予定を入れるものだと思っていましたが、その前提から凝り固まっていたかもしれません。
予定を詰め込んだ休日は、「これ、仕事じゃん」
私は休日に予定を入れるものの、結局ぐうたら過ごして「何もできなかった」と後悔しちゃうんですよ。なんとかそのループを抜け出したいって思ってたんですけど…。
どんな過ごし方なんですか?
こんな感じですね…。いや~お恥ずかしながらダメ休日すぎる…。
ダメな休日、完璧じゃん(笑)。
えぇ!本当ですか!?
僕もこんな感じですよ。
私は、こうなった休日の自分をすごく責めてしまうというか、休んでいるつもりなのにストレスがたまっているんですよ。悲しいことに。
単純に疲れているんじゃないですか?
えーそんな疲れているはずはないんですが…。あれ、なんか心療内科の相談みたいになってきたぞ…。
体力、気力を回復する日ってことでいいじゃないですか?
でも理想は違うんですよ。自分の理想の休日は、朝から晩まできっちり動いて、やるべきこととやりたいことを半々くらいこなしていくんです。こんな感じで!
これは理想が高すぎますよ。自炊もストレス解消になればいいですけど、無理してやることないですね。ダメな休日の「食事(雑)」でいいと思いますよ(笑)。
そうですか…。どうしても遊びも仕事も全力!みたいな人に憧れてしまうんですよね。ルーティン動画とか流行っているじゃないですか。だから私なりに朝のルーティンを組み立ててみたりとか。phaさんってルーティンとかありますか?
なんだろう?朝起きたら……。
朝起きたら?
……。
??
特にないかな。
なかった(笑)
あ、目を覚ますためにカフェオレを飲むとか。でもそれさえも、だらだらしていたい時は飲まない日もありますね。
私なんて決めたルーティーンは定着しないし、時間管理アプリを使ったり、ライフハック情報を取り入れたりしては挫折していて…。
phaさんは時間をフル活用できる人になりたいとは思わないですか?
あ~全然ないなぁ。そういう考えの人は違う生き物だと思ってるんで。人と比べて焦ったりはしないです。別に人のできることをやりたいと思わないし、自分にはそれが無理だってわかってるしって感じですね。
なるほど…。phaさんのように悟りを開くにはどうしたらいいんでしょうか。
僕は全然こうありたいっていうものがないんです。向上心がないというか、ありのままを受け入れているというか。だからですかね。
カルチャーショックです…。もしphaさんが私の理想の休日スケジュールを実践することになったら…?
お金ほしいなって思います(笑)。これ、仕事じゃんって思うんで。1日1万円くらいもらえるならやってもいいです。
仕事!これは仕事みたいな休日だったのか…。
充実感はあるかもしれないけど、気力がある時しかできない感じがする。
あぁ〜。まれに活動的な日になれるんですが、確かに気力が溜まった時だけですね…。本当極端で、ダメな休日には「何をしたかさえ覚えてない」時間があるんですよ。
あるある~。
気づいたら夜中になってたとか。これをした、というよりただただ時間が過ぎていった感じだから、振り返ってみると謎の時間になっちゃうんですよね。
世の中の人はちゃんとしているようで、結構みんなダメな休日みたいな感じなんじゃないかな〜って思いますけどね。ほとんどの人はダラダラしている気がするけどな。
でも、SNSとか充実したネタとか入ってくるじゃないですか。自分のダメな休日との差ってどう受け止めたらいいんでしょうか。
その充実した人たちは、それ以外は、家でだらだらしてるとかのを想像すればいいと思います。リア充っぽいけど、そう見えているだけだというか。見栄っ張りだな〜くらいに思って。
そうか…。充実しなければならないという外圧に振り回されていたかもしれないですね。
phaさんから休日の過ごし方を伝授してもらいたい!
phaさんと話して、休日の捉え方が変わってきました。ダラダラ過ごしてもいいんだって。私もphaさんのように休日を過ごしたいので、ズバリ「休日の過ごし方5カ条」みたいなものを教えてくれませんか?
ズバリ、5つもないです。「予定を立てずに、起きてから決める」ただそれだけです。
超シンプル…!
言い換えるならば、ひたすら無理をしない、あえて何も決めない、気が向いたことだけするってこと。何もやらないというわけではなくて。決めたスケジュール通りに動かないということです。
なんか、“逆修行僧”みたいな感じですね。どんな1日になるんだろう…。未知です。
まず、起きる時間も決まってないので、目覚ましはかけません。寝たいだけ寝てください。誰かが割り込んでくる状況はよくないので、スマホはサイレントモードにして通知を消します。僕は家のインターフォンも切ってますよ。
インターフォンまで!?
はい。電池を抜けば切れます(笑)。
あとは、気が向いたら3分でもいいから、行く当てもなく外へ出るのもおすすめです。降りる駅も決めずに電車に乗って、飽きてきたら知らない駅で降りてぶらぶらして帰るみたいな。
えー!どんな風に降りる駅を決めるんですか?
みんな降りてるから降りようとか。駅名が気になったとか。降りる気にならなかったらずっと乗ってもいいし、僕は中央線をずっと辿っていったら長野県まで行ってしまって、そのまま泊ったことがありました。次の日予定があっても朝帰ればいいや、って。
ふむふむ。思いつくまま行動するということですか。逆にクリエイティブな活動なのかもしれないですね。
あー、クリエイティブにつながるかもしれないけど、クリエイティブをあまり追い求めすぎると何も決めないという趣旨が変わってしまうので。あくまでも何もしないでぼ〜っとして、何か降りてくるかも、くらいでいてください。
ハッ!ついつい、目的や意味を見出そうとしてしまいました。もっと純粋に何がしたいかを実行するということですよね。
何かぼーっと考えたりとか。考えなくてもいいんですけど、そういう精神を自由に遊ばせていくのはどうですか?これをやりたい、やりたくないという感覚を敏感に感じとって、過ごしてみてください。
なんとなく悟りが開く予感がします。やってみます!今日はありがとうございました。
phaさんみたいな休日を送ってみた
取材後の休日、phaさんに教えてもらった「何もしない日」を過ごしてみることにしました。
まず、目覚ましをかけずに寝たいだけ寝ることを意識して入眠。油断するとすぐ惰眠を貪るので「好きなだけ寝る!」と決めることは、逆に抵抗があってやってきませんでした。
起床してみると…、明らかに睡眠の質が違う。すごい。いつも「あれをやってない」「これをやらなくては」というのが頭のどこかにこびりついていたのですが、今回の睡眠では全部リセットして臨んだのがよかった気がします。しっかり寝た!という満足感が段違いでした。
時計を見てみると、昼の12時過ぎ。どうしよう、でも今日は好きなだけ寝ていいんだ
サイレントモードのスマホをいじって、うだうだ過ごしていたら15時過ぎに。あ~時間過ぎるの早ッ。でも今日は自分を責めません。あ、こういう時こそ、phaさんが言ってた「3分でもいいから外に出てみる」をやってみようかな。
行き先を決めずに外へ出ると、無意識に最寄り駅に向かっていました。何も考えずにいると日頃の行動を取ってしまうものなんですね。ものすごくお腹が減ってしまったので、どこか外食をしよう。あ、駅前のそば、食べたい。でもせっかくなら普段行かないところへ行こう…。そば屋を横切って我慢、我慢っと…。
あ、バス。電車よりバスに乗りたいな。練馬駅行き。練馬、あんまり行ったことないな。よし、これに乗ろうっと。
でもやっぱり……お腹減ったわ。バスに乗ろうとしていた私は、そば屋に引き返しました。うん、そば、美味しい。いつものそばだけど、今これが食べたかった。
そばをすすりながら、無意識のうちに効率や意味を見出そうとする自分を自覚しました。それに惑わされず、本能や感覚に従ってみると、雑念が消え、五感がクリアになったみたいです。なんだか澄んだ空気を吸い込んでいるような不思議と清々しい気分になれます。
さて、乗ろうとしていた練馬駅行きのバスに乗ります。目的地を意識せずに車窓を眺めると、街の風景や人の様子がいつもより色濃く映ります。バスに揺られていたら、途中で眠くなってしまいました。目が覚めたころには終点の練馬駅。バスを降りて、何がしたいかなと感覚に任せると、違うバスに乗っていました。荻窪駅行きです。
荻窪駅へ向かう間に、西日が差していた街は薄暗くなり、日が暮れました。目に入る自然を受け止めるだけでも、心が豊かになるのがわかります。遠出しなくても自然の良さって身近にあったみたいです。
荻窪駅周辺をちょっと散策。19時くらいになると、帰宅したくなったので自宅方面に行くことに決めました。バスの運転手さんに聞くと、どうやら途中下車して乗り換えが必要とのこと。
ちょうど帰宅ラッシュの時間だったので、住宅地へ向かう下りのバスはやや混んでいました。乗換のバス停で降りると、素敵な洋食屋さんが目の前に。普段の生活では、まず出会えなかったお店です。今日はここで食事をすることにします。
おばあさんの穏やかな接客が、初めての店なのにホッとさせてくれます。注文したハンブルグステーキのセットはとても美味しく、いつもは早食いの私ですが、一口一口をゆっくり味わっていただきました。
帰宅したのは22時過ぎ。いつもの外出とは違い、ハンモックに揺られているような心地良くて気ままな時間でした。
予定のない休日を過ごしてみたら、「何もしない」という逆説的な充実感を知りました。時の流れに身を任せるってこういうことなのでしょうか。予定を空っぽにすることで、その分、普段だと取りこぼしてしまうものを感じることができるんですね。知らず知らずのうちに「なんのために?」「どうするべきか?」という意識が占拠していて、自分の気持ちや周囲に目を向ける余裕がなくなっていたことに気づきました。何も決めない休日は、その余白が自分と向き合う時間になるようです。
頭の中がほぐれた感じがして、身体の芯から求めている栄養を与えているような1日でした。phaさんの悟りに少しは近づけた気がします。何もしない充実感、一度体験してみると休日の考え方が変わるはずです。
編集:ノオト
撮影:小野奈那子(2、11〜14枚目を除く)
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
・この記事は2020年2月に取材しました。
この記事を書いた人
ツマミ具依
企画や体験レポートを好むフリーライター。過去の企画は「渋谷のハロウィンで“もらった仮装”を集めて着たら大変なことになった」など。旅行・おでかけサイト『SPOT』、雑誌『週刊SPA!』など執筆。週に一回、歌舞伎町にてバーテンダー的なことをしている。
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下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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