「きちんと寝る」だけで-15kg!睡眠コンサルタント友野なおさん流「ぐっすり習慣」とは?
朝はすっきり目が覚めて、夜になれば眠くなる。そんな正しいリズムと質を意識した眠りで「やせ体質」が作れます。食事制限や定期的な運動はなかなか続かないけど、毎日の睡眠時間をダイエットの時間に変えられたら、ストレスを感じず習慣化できる気がしませんか? 「眠りを改善しただけで15kg痩せた」という経験をもつ睡眠コンサルタントの友野なおさんに、睡眠とダイエット、さらには美容との目からウロコな関係性、そして具体的な睡眠習慣の改善法について伺いました。
はじめまして、ライターの常松亜子です。「好きでやっているからこそ手は抜けない!」。そんな心意気で筆を動かす(PCに向かう)日々を送っていますが、気付くと深夜0時、マウスの代わりに握っているのは甘いもの…。ダイエットって本当に大変です。そんななか、「睡眠を改善するだけで健康的にやせる。さらには美容にも効果あり」という噂をキャッチ。やるべきことは、より気持ち良く熟睡できる環境づくりを始めるだけ。そんな夢みたいな話、あるんですか?さっそく、友野なおさんにお話を伺います。
友野 なお(ともの なお)
睡眠コンサルタント。株式会社SEA Trinity 代表。千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会 正会員。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 修士。眠りのプロとして全国での講演活動、企業のコンサルテーションなどを行う。著書は『毎朝、目覚めるのが楽しみになる 大人女子のための睡眠パーフェクトブック』(大和書房刊)など多数。
「ラーメンや菓子パンが食べたくなるのは寝不足のせい」
万年ダイエッターの私からすると「眠ってやせる」と聞いても、あまりピンとこないのですが…。
私も、実は眠るとやせるなんて夢にも思っていなかったです(笑)。ですが、自分自身の経験がきっかけで、睡眠とダイエットについて考えるようになりました。
どんな経験だったんですか?
20代の終わりのころに重度のパニック障害でとても苦しんでいたのですが、当時は食生活もひどく乱れていて、あっという間に体重がみるみるうちに増えてしまったんです。でも、睡眠を改善したらパニック障害が治っただけでなく、半年で7kg、1年で10kg落ち、今ではマイナス15kgを出産後もキープできています。
そんなに…!食事制限や運動だけでそこまで体重を減らすのは大変ですよね。ぜひ睡眠とダイエットのメカニズムを教えてください…!
ダイエットと睡眠に関する科学的な研究はたくさんあって、「寝不足だと太る」ということがはっきりわかっています。例えば、7時間寝る人に対して4時間以内しか寝ない人は肥満率が73%高くなることがわかっています。
73%高くなる、ということは約1.7倍でしょうか?すごい差…!
はい。最大の理由は、眠らないと「グレリン」という食欲を行進させるホルモンが増え、同時に「レプチン」という満腹中枢を刺激するホルモンが減ります。こうして食欲の中枢が乱れてしまうということが原因に挙げられるんです。
寝不足だと、体内のホルモンが「食べてくれ」という指令を出している…。
そういうことです。寝不足のときについ食べ過ぎてしまう、ということはありませんか?それは「意志」の問題ではありません。また、糖質や脂質に対する欲求も非常に強くなります。
(思い当たる節あり…)
ラーメンや菓子パンといったものが食べたくなるのは、睡眠不足に起因している可能性が十分にあるんです。さらには、寝不足だとパワーダウンして活動量が減少することも、肥満を助長するファクターの一つとなっています。
逆にいうと、いい睡眠がとれれば、日々の食の選択と生活が変わって結果としてやせていくんですね!
私自身、体重が15kg落ちたのは、まさに食べるものがガラッと変わったことにありました。睡眠ダイエットのすごいところは、ホルモンの分泌によって食欲の中枢が整い、特に糖質などへの依存や欲求が収まっていくところ。一番ストレスなく、お金もかからずにやせられる方法だと思いますよ。
ちなみに、たくさん眠ればやせる、ということですか?(そしたら一日中寝ていたい…)
いえ(笑)。睡眠は「適正な時間」と「質」両方を整える必要があるんです。
よい眠りは「7時間&熟睡」が目安
ベストな睡眠時間は個人差あり
適切な睡眠時間に関してはかなり個人差がありますが、ダイエットないしは寿命、病気の罹患(りかん)率などからみると、20代から4~50代の人は一日7時間から9時間の睡眠時間をとるのが理想といわれています。
寝る時間帯についてはどうですか?
ホルモンの分泌や体温のリズムといったことを総合的に見てみると、0時から6時は眠っていたほうがいいとされています。なので0時から7時、もしくは23時から6時の間寝ていられるのが一番理想的です。
睡眠の質=「熟睡感」
では続いて、睡眠の質について伺いたいのですが、睡眠の「質」って何ですか?
「質」というのはその人が感じる「熟睡感」のことで、はっきりと数値化できるわけではありません。そのため「質」をいかに高めるかは、睡眠の準備や環境づくりにかかっている、と言っても過言ではありません。
適切な時間の間、いかに熟睡できるか、ということが睡眠の質を左右するということなんですね!
起床後の身体のサインで「睡眠の質」をチェック
「時間」については自分で管理できそうですが、「質」については自分の現状を理解するのが難しそう…。
まずは、起床直後の自分の体のサインを確認してみてください。体のサインというのは、寝起きから体が重い、目覚めが悪い、目が充血している、大きなクマがある、口角が下がっている、フェイスラインがたるんでいる、などといったこと。
自分の感覚でいいんですね…!
睡眠時間というのは、自分の体をメンテナンスする時間。ですから今挙げたような症状があるのであれば、少なからず睡眠を改善する余地があるということになります。
友野さん流:朝のチェックポイント
・スッキリ起きられましたか?
・排便はありましたか?
・化粧ノリは悪くありませんか?(鏡で顔の状態をチェック)
起きてから家を出るまでのルーティンの中でできるチェックを毎朝忘れないことが大事です。このくらいであれば、忙しい朝のルーティンの中でも意識しやすいですよね。朝の時間に昨日の睡眠の答え合わせをするということを習慣づけましょう。
「成長ホルモン=天然美容液」で心身をメンテナンス
睡眠の質を上げるとさらにいいことがあるんですよ。
え、やせるだけでなく、まだ?
睡眠の質が上がると「成長ホルモン」という物質がたくさん分泌されるんです。
「成長ホルモン」って子どものころに出るものじゃないんですか?
そう。子どものころにたくさん出るんですが、大人になっても分泌されているんですよ。日中に傷ついた細胞を修復し、「若返りホルモン」とも呼ばれています。例えば肌のターンオーバーを促したり、体の代謝をサポートしたり。健康やキレイをサポートしてくれるので、別名「天然美容液」ともいわれているんですよ。
天然美容液…!
成長ホルモンは、入眠後3時間に集中して分泌されます。なかでも、最初の90分が最も大量に出ているんですね。ですから、入眠後3時間にいかに深く眠るかがカギになるんです。
なるほど!主にこの成長ホルモンによって、睡眠時間が自分の体をメンテナンスする時間になるんですね。
ただ、入眠後3時間眠ればOK、というわけではありません。3時間以降の眠りについては感情や思考、そして記憶の整理にあてられます。
睡眠中は脳が眠らず情報を整理しているんですね…。
私たちの健康や美容のベースになるのは心の健康。十分な睡眠時間を確保することがすごく大事なんです。
五感を整え、睡眠の質UP
スムーズな眠りについて、質のよい睡眠をとるためにはどうしたらよいでしょうか?
「視覚」「嗅覚」「聴覚」「温熱感覚」「触覚」という5つの感覚からアプローチしましょう。これを「睡眠五感」と私が言っています。眠りは「準備」が大事。帰宅してから眠るまでの間の過ごし方、そして睡眠中の環境づくりはこれを重視してください。しっかり準備をすることで体・心・脳の準備が整います。まずはできるところからで良いので、少しずつアプローチしていってみてくださいね。
自分の心身の状態に意識を向けることをクセづければ、行動につなげやすくなって習慣化できそうです…!
ここからは友野さんが教えてくれた睡眠の質の上げ方や習慣化について解説していきます。
視覚:最も大きな影響を及ぼすのは「光」
昼間はなるべく太陽の光を浴び、就寝1時間前からはやや暗めの暖色系の照明の下で過ごしましょう。この時にスマホやテレビ、パソコンなどのデバイスを見るのはNG。睡眠ホルモンの「メラトニン」の分泌をブルーライトが抑制してしまいます。代わりに本を読むのはOK。
就寝中は、真っ暗な部屋が理想。暗い部屋が苦手な人はフットライトを試してみてください。寝具の色はコントラストの強いものをなるべく避け、パステルカラーなどの優しい色にしましょう。
嗅覚:好きな香りでリラックス
良い香りはリラックスしたときに優位になる副交感神経に働きかけるため、質の高い睡眠に導いてくれます。おすすめはラベンダー系。自分の好きな香りを楽しみましょう。
聴覚:音楽を聴くなら寝る前までに
就寝中は、図書館並みの静けさを保つのが理想。寝る前に音楽を聴きたい場合は、風の音色やさざ波の音といった自然界の音、あるいはヒーリング音楽、クラシック、オルゴールなどがおすすめ。
寝ている間はなるべく静かなのが望ましいので、寝る前に切るか、タイマーをセットしましょう。
温熱感覚:寝やすい温度・湿度を保つ
日本には四季があるので、季節に合わせ寝室の温度や湿度の調整、寝具の衣替えはマスト。
暑さや寒さは睡眠の質の低下につながります。暑い季節の間、注意したいのは冷房などによる冷え。とくに足首は冷えやすい場所なので、レッグウォーマーなどを活用しましょう。
触覚:シーツ、枕、パジャマ…とにかく心地良いものを!
肌に多く触れるパジャマは、触り心地が良いものを。素材は綿やシルクがおすすめ。枕や布団カバー、ベッドマットなど、自分が居心地良いと感じるものをそろえましょう。
人はひと晩で20~30回程度寝返りを打っているんだとか。しっかり寝返りをうつことで体液の循環を促し、体のリズムを整えています。そのためには寝返りを打ちやすい寝具が重要。摩擦ができるだけ少ないものを選んでください。
習慣化のポイント:寝る前に「入眠儀式」で睡眠モードに切り替える
質の良い睡眠をとるためには、スムーズな「入眠」も重要。そこで「入眠儀式」と呼ばれる、眠りのスイッチを入れるための習慣付けをしてみましょう。
たとえば「パジャマを着る」「アロマオイルの香りを楽しんでゆっくりする」など、睡眠前に必ず行うことを決めてみましょう。すると体が自然と睡眠モードになるので、スムーズに入眠できるんです。まずは気に入った「睡眠グッズ」をそろえることから始めて楽しく習慣化してみましょう。
パジャマを着ただけで「おやすみモード」に
友野さんに今回教わったことを早速、実生活に取り入れてみよう! ということで、まずは手軽さ優先…。睡眠グッズを買いに走りました。私が選んだのは、肌触りの良いパジャマとアイピロー。パジャマを着るなんて、恐らく小学生以来です…。
半信半疑でしたがいざ着替えると、不思議。「さぁ、ぐっすり寝るぞ!」という気持ちに。スマホをいじるかわりに、部屋の灯りを落として今日一日を振り返りながらベッドの上で軽くストレッチをすることに。部屋着でダラダラしながら何となく寝るのと違い、パジャマに着替えることが一日の終わりを実感させてくれるんですね。
アイピローも適度な重みが心地良く、なんだか安心させてくれました。起きると必ず頭の脇に落ちていますが、これもしっかり寝返りが打てているという証拠ですよね(笑)。
パジャマを着てアイピローを使うという、たったそれだけのことですが、熟睡感がぐっと増したような気がします。ぐっすり気持ちよく寝られたときこそ、「睡眠ってやっぱり大事だ…」と実感できると思うのは私だけでしょうか? 熟睡できていると仕事もはかどるし、一日の予定がスムーズに進むので食事の時間もしっかり確保できる。すると食べるものを選ぶ余裕が生まれ、気のせいか(いえ、ホルモンのせい)糖質や炭水化物ばかりのジャンクな食事に対する欲求が薄まった気がするんです。これぞまさしく一石二鳥、いや…一石三鳥!
「毎日の睡眠を改善するとやせる」。初めは意味がわからなかったこのフレーズ、今なら全力で頷けます。「睡眠五感」を意識した環境づくりと「入眠儀式」を、皆さんも早速実践してみてください!
・当記事に掲載の情報は、執筆者・監修者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
常松亜子
編集ライター兼翻訳者。小学生時代に神奈川県藤沢市から米・ロサンゼルスに引っ越し、シンガポールを経由して、東京に落ち着いて早十余年。フリーランスで雑誌やWEBメディアを中心に活動中。音楽フェスに合わせて、どこかしらの土地へと旅行に出かけるのが毎年の楽しみ。
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よろしいですか?
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