どこまで子どもに干渉してる?専門家に聞く!「見守る子育て」のコツ
我が子には「自分のことは自分でできる、自立した大人になってほしい」と願う漫画家のモチコさん。小学校1年生になった息子さんに対して、親がどこまで干渉すべきか?というのが目下の悩みです。特に気になるのは「新しい交友関係」や「学校の宿題」についてどこまで聞くか、手伝うか。そこで、「見守る子育て」を推奨する教育家・小川大介先生に聞いてみました。
息子の二太郎が小学生になりました
こんにちは!関西人漫画家&イラストレーターのモチコです。
ひょうきんで夢見がちな娘・イチコ(9歳)と甘えん坊でシャイな息子・二太郎(6歳)を育てています。この春から、息子も小学生になりました。
連絡帳があり、何かあれば先生が息子の様子を教えてくれた幼稚園。でも、小学校に上がるとそうはいきません。娘が入学した3年前はコロナ禍真っ只中だったこともあり、何が例年どおりで、何がコロナ禍でイレギュラーになったのかわからず、「小1の母」は2回目の経験でもほぼまっさらな状態…!オープンな性格な娘と、外面を作るタイプの息子じゃ対応も違ってきそうで、親としては、新たな悩みが生まれそうな予感です。
子どもになるべく干渉し過ぎない方が、子どもものびのび過ごせるし、私も仕事や家事に専念できるはず…。そうすれば結果的に子どもも私も、とってもハッピーになる気がすると思っていますが、もちろん親として最低限のおさえるべきポイントは知っておきたい!
そこで、今回は一児の父で「見守る子育て」を実践してきたという教育家・小川大介先生にいろいろと相談させてもらいました。
小川 大介(おがわ だいすけ)
教育家。見守る子育て研究所 所長。京都大学卒業後、コーチング主体の個別指導塾を創設し、6000人を超える受験生の相談に乗ってきた。受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスを行う。子ども本来の力を見つけ引き出し伸ばす「見守る子育て」を日本の常識にすべく奮闘中。著書に『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)他多数。
「見守る子育て」は子ども本来の力を引き出す
今日はよろしくお願いします。さっそくですが、新小学1年生になったばかりの息子との距離感について先生に相談させていただきたいです!小川先生が提唱されている「見守る子育て」とは、どういう子育てのことをいうんですか?
「大人が教育に良いと考えるものを子どもに与える」のではなく、それぞれの子どもが本来持っている力を発見して、引き出して、発揮できるようにお手伝いすることを「見守る子育て」と呼んでいます。「主体は子ども本人にある」というのが軸となる考え方ですね。
子どもの成長を促進する!といった情報を目にすると、親としてはあれもこれも子どもに与えたくなってしまいますが、大人が与えるのはダメなんですか?
「大人が渡したものが子どもの中で芽吹く」というのは間違った発想で、人はもともと育つ力を持っているんです。本人の特性を発見して、それに適した環境と機会を整えるという意味では、親は能動的に関わる必要があります。でもその前に、子どもが本来持っている力を見つけるために「まずは子どものことをしっかり見ましょう」ということです。
まず見る…何かコツはありますか?
子どもを大事に思うあまり親御さんは誰しも、人と比べたりいろいろな評価軸を混ぜたり、自分の価値観のフィルターをかけたりしてしまいがちですが、できるだけそのままの状態を見ようとすること。子どもの言動や考え方に対して良い悪いとか、「こうだと思うよ」と意見するのではなく、「そうなんだ」とまず認める。自分をありのまま受け止めてもらった子どもは、「自分はこのままで大丈夫だ」という安心感が生まれるんですよね。
子どものありのままを見て、受け止めること…。意外とできていなかったかも…。
それぞれの子が持っている特性は、先天的なものもあれば、生まれ育った環境によるものもあります。ですから、自然と育まれるものを大事にしつつ、子どもだけでは発揮し得ない特性があったら、大人が意識的にきっかけを渡したり提案してあげたりすると良いでしょう。
子どもが興味を持たない場合もあると思うのですが、その時はどうしたらいいでしょうか。
もちろん、おもしろいと思うかどうかは子どもが決めますよね。今はおもしろいと思わなくても来年はおもしろいと感じるタイミングが来るかもしれないので、子どもの主体的な感覚を大事にしつつ、様々な知識や技術を渡してあげながら力を伸ばしていくといいと思いますよ。
それらを実践することで、どんな子に育っていきますか?
無理なく楽しく、自分の中から生まれてくる強みや存在感を発揮できるようになります。脳の使い方には人それぞれクセがあるので、自分が心地良いと感じる学び方や情報の取り入れ方をした上で、「できた」「得意だ」という達成感を積み重ねると、自分らしさや自己肯定感が育まれていきます。
なるほど〜。見守る子育ては、子どもにとって大きなメリットがありそうですね。子どものためと思うと、ついあれもこれも干渉したくなりますが、子どもの主体的な感覚を信じることが大切なのですね。
そうですね。親はつい「自分のがんばりが子どもの将来を決める」と考えてしまいがちですが、親と子どもは別人格なんです。そのことを改めて認識できるようになると、適切な距離感をつかみ、干渉にも放任にもならない、お互いを信頼し合える人間関係が築けるようになります。
子どもも自分のことを自分で選択して生きていくので、仮にうまくいかないことがあったとしても、それは力の発揮のしかたが間違っているだけだと思える。すると、次のチャレンジに繋がりやすくなり、メンタル的に崩れにくくなります。
親と子どもは別人格…。そこが認識できていないと過干渉になってしまうというのは納得です。具体的にどんなふうに実践すれば良いのでしょうか?教えてください小川先生〜!
子どもの新しい交友関係を上手に聞き出すコツは?
…という感じで、幼稚園の頃は、送迎の際に先生に園での様子を教えてもらえたのですが、小学校では子ども自身で登校するので、学校でどんなふうに過ごしているのかわからないんです…。「今日どうだった?」って聞いても「別に普通」みたいなクールな反応をされることが多くて…。子どもにどんな聞き方をしたらいいんでしょうか。
それは「子どもが教えてくれない」んじゃなくて、聞き方がヘタ過ぎるんですね(笑)。
ドキッ…!
親は子どもがどんなふうに学校で過ごしているかを知りたいんだ、ということ自体、子どもは知らないんです。親の気持ちを汲みとることができる小学校1年生って滅多にいないですよね(笑)だから、まずは「小学校の中がどんな感じか知らないから、知りたいんだ。教えてね」と伝えるところから始めてみましょう!
ああ…。確かにそうですね…!
子どもは、朝起きてから寝るまで、常に新しいものを見聞きして過ごしています。だから、「今日どうだった?」と聞かれても、「いつ」「何」を伝えればいいのかわからないから、「普通」としか言いようがない。
な、なるほど!ピンポイントで聞いていく必要があるんですね!確かに、子どもだけじゃなく、大人だって「今日どうだった?」と聞かれたら困ってしまうかも…。
まずは学校へ行く前に、「先生が今日お知らせしたことを聞いてきてね」とか、「お昼休みに何をして遊んだか教えてね」、「お友達が誰か知りたいからお名前教えてね」など、具体的に示してあげましょう。そうすると、ちゃんと覚えて帰ってきて教えてくれるはずですよ。
子どもへの質問は具体的に!
×「今日どうだった?」
○「お昼休みに何して遊んだ?」
初めて聞く友達の名前が挙がった時、どういう子なのか気になるんですが、親はどこまで口出ししていいものでしょうか?
子どもの交友関係で気になることは何ですか?
親としては、乱暴な子が側にいたらちょっと心配だな…って気持ちがあります。
なるほど。まずは、「何が好きな子なの?」「何が得意な子なの?」といった話題を入り口にするのがいいと思います。その中で、もし「どちらかいうと、いつも怒られてるの」という話が出てきたら、「どんな時先生に怒られているの?」と聞いてみる。ポイントとしては、「その子がどういう子か」じゃなく、「何をしたことに対して怒られるのか」、行動について聞くんです。
例えば「◯◯ちゃんを後ろから押して怒られてた」と言われたら、親は何と返せばいいんでしょう。
「どういう時にその子は押しちゃうの?」と聞いてみると、急いでいて目の前の子を押しちゃったのか、何か言われてイヤになって押しちゃったのか、その行動のきっかけや原因がわかるはずです。
なるほど…!
そこに対して「あなたはどう思ったの?」と、子ども自身がお友達の様子に対してどんな感想を持っているかを問うのがいいと思います。これらのやり取りで大事なのは、お友達の話を聞いているけれど、「ママの関心はあなたですよ」と一貫することですね。
子どもがどう感じているかがわかると、本人なりの付き合い方が見えてくるかもしれないですね。
親から見て望ましい子を選ぶというのは干渉し過ぎで、人間関係も本人が選ぶもの。本人なりの判断基準があるのかを聞けばいいと思います。その上で、親として気になるお友達の言動があれば「あなたは〇〇ちゃんのこういうことがおもしろいと思っているのね。それはいいんだけど、その行動を真似するのは違うと思うから、それはやっちゃダメよ」とか。
子どもの人間関係は親ではなく本人が選ぶもの。お友達がどんな子なのかではなく、子ども自身がお友達の様子に対してどんな感想を持っているかを聞こう!
×「その子はどういう子なの?」
○「(お友達の行動に対して)あなたはどう思ったの?」
友達との付き合いについて口を出すのではなく、あくまでも本人の考え方について話すということですね。ちなみに、子どもたちだけで外出する機会ができると思うのですが、親はどこまでついていくべきでしょうか?
家庭内で基準を決めておく必要がありますよね。基本的には、とにかく致命傷にならないところを設定しておく。これは住まいのエリアによって安全を確保するための距離感は変わりますね。
どんなエリアだったら、子どもたちだけで遊んでも大丈夫そうでしょうか?
顔見知りの大人たちが街にいて、公園で遊んでいても誰かの目が常に届いているようなエリアであれば、緩やかに守られているのでOKだと思います。
そういった人間関係がないところで、子どもたちだけで遊ぶ場合は、注意したほうがいいですよね。
大人の目が届くことは条件に入れたほうがいいでしょうね。もちろん、お子さんのタイプや、管理能力、成長度合いによってケースバイケースですが、「誰と遊ぶ」「何時に帰ってくる」「何をして遊ぶ予定か」をあらかじめ報告してもらうなど、ルールを決めておく必要があると思います。
やっぱりまだまだ、公園までついていって見守るのが安心ですね…。
一方で、子どもがパーソナルスペースを持ったり、秘密基地を作ったり、親の知らない自分たちの世界を持つことも大事です。よって、一緒には行くけれど、「ママは本を読んでいるから好きに遊んできて。何をして遊ぶかまでは口は出さないよ」と、本人の自由や自主性を邪魔する気はないことを伝えておくことも大切です。
親が知らない世界って確かに子どもにとって大切ですよね。心配はするけれど、あえて踏み込まないことも大切なんですね…!深い!
毎日やらないといけない学校の宿題、どこまで見る?
…という感じで、子どもの宿題にも悩んでいます…。子どもの宿題をチェックするのは親の役割だと思いますが、どこまできっちり指導、指摘をするべきでしょうか?
子どもがちゃんとやっていないように見える時には、実は3つのパターンがあります。「これでいいんだ」という意思を持って意識的にやらない場合。「やりたいけどできない」と困っている状態。そして、単にやるべきことに気づいていない場合です。
「やっていない」にも種類があった…!
ですので、親がいきなり「ちゃんとやりなさい」から入ると、できないで困っている上に、傷つけられて自信を失ってしまうことがあります。「やらない」のか「できない」のか「気づいていない」のかを知るためには、やっぱり宿題をしているそばで見ていてあげることが望ましいですね。ひらがなドリルを書き直しているようなら、その子なりにやろうと思っているけれど、できないで困っているんだなとわかるはず。
そうか!できないで困っている様子なら、一緒に練習してあげればいいですね。
そうですね。でも、例えば間違えた文字を書き直す素振りがなく、本人が気づいていないようなら、お手本の真似をして読みやすい字にした方がいいと教えてあげた方がいいですね。
もし「ドリルの字は汚くていいんだ」って意思を持っている場合は、「それは違うんじゃないか」って、話し合いが始まるわけです(笑)。そうやって関わっていくのが大事ですね。
「やってない」には3種類ある!
・「これでいいんだ」という意志を持って意識的にやらない場合
・「やりたいけどできない」と困っている場合
・やるべきことに気がついていない場合
まずは、どの場合に該当するのか子どもの様子を見てみよう!
ちなみに、息子はタブレットを使った学習は好きなんですが、紙のドリルに興味を示さないんです…。これはそのままでいいんでしょうか?
そのままでは良くないですね。というのも、タブレットを使った学習が楽しいっていうのは結局、受身なんですよ。反応が返ってくるので刺激がわかりやすくて食いついているように見えますが、実は頭の動きは受動的なんですね。紙の場合は自分で読み取って書いてと、能動的にならなきゃいけないから大変ですが、頭に残りやすい。
やっぱり紙での学習も促していったほうがいいんですね。
もちろん、その場ですぐに反応することや、情報の広がりなどはタブレットの方が効率が良いので、うまく取り入れて両立させるといいでしょうね。まずはお子さんに、タブレットは面白くて紙はいまいちなのは、どこが違うのか聞いてみては?
良し悪しではなく、タブレットと紙の良さをうまく取り入れてバランスをとることが大切なんですね。まずは子どもの話を聞くところから始めてみます。小川先生、ありがとうございました!
「見守る子育て」を通して、親も子どもと一緒に育つ
子どもとフラットに接しているつもりでも、小川先生と話すことで、自分の価値観のフィルターを通して接していることに気づきました。親が子どもを育てているようで、実は親も一緒に成長しているんですね。
今は様々な教育論があるので、あれもこれも取り入れないとまずいかも?と焦ってしまっていましたが、「子どものありのままを見て、受け止めること」から始めてみようと思います!
自分の価値観抜きで子どもを見守ること…簡単なようで、いろいろな思惑が入ってしまいそうで、むずかしい!ただ凝り固まった自分の思い込みやしがらみをとくチャンスでもあるのかも。
私よりはるかにやわらかい頭の持ち主である子どもから、いろいろなことを学びたいと思います!すくすく自分らしく育て、子どもたちよ〜!そして私も!
子育て中のママさん、パパさん、ともに子どもたちを見守っていきましょう!
執筆&編集:栗本千尋+ノオト
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、全てがライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
モチコ
関西人漫画家・イラストレーター。二児の母。ひょうきんな長女・イチコちゃんと甘えん坊の長男・二太郎くんと過ごす日々を「親バカ」目線で綴ったコミックエッセイ『育児ってこんなに笑えるんや!』『育児ってこんなに笑えるんや! 二太郎誕生編』(ぴあ)が好評発売中。
Instagram:https://www.instagram.com/mochicodiary/
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