なぜ子どもは高熱でも元気なの?小児科医&病児保育室スタッフに「その理由」と「正しいケア」を教えてもらった!
高熱があるのにどうして子どもは元気なの?体力が有り余って大人しく寝てくれない子どもの不思議を有明こどもクリニック理事長・小暮裕之先生に伺います。また、病児保育室フローレンス豊洲スタッフ・小森明美さんに、子どものからだに負担がかからない遊び方などを教えてもらいました。
初めまして、3歳の娘を育てるワーキングマザーの吉野ユリ子です。小さなお子さんがいるご家庭ならわかると思うのですが、子どもって熱があってもやたら元気ですよね。でも、37.5℃を超えると有無をいわさず保育園は登園禁止。なぜかお祭りムードの娘にまとわりつかれながらパソコンを打つ大変さといったら…。
子どもってどうして高熱でも元気いっぱいなの?ひょっとして子どもと大人って、そもそも熱が出るメカニズムが違うのでしょうか?実態を知るべく、共働き世帯が多い、都内の湾岸エリアで4院を営む有明こどもクリニックの理事長・小暮裕之先生にお話を伺いました。
小暮 裕之(こぐれ ひろゆき)
獨協医科大学卒業後、小児科医として勤務。医師8年目に有明こどもクリニック設立。現在は、有明院・豊洲院・勝どき院・田町芝浦院の4院を開設する。「笑顔で安心して出産や子育てができる社会を創る」という想いのもと、病児保育に取り組む。
熱があるのに子どもが元気なのは、なぜ?
今日は子どもが熱を出した時、からだや心に何が起きているのか、そしてどう対処するべきか教えてください。よろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。何でも聞いてください。
うちは3歳児がいるのですが、熱が38℃近くあっても走り回ったり、おままごとをしたり、やたら元気なんです。大人だったらもう朦朧としている体温だと思うんですが。そもそも大人と子どもって、熱が出る原因が違うのでしょうか?
年齢に関係なく、発熱の原因のほとんどはウイルスや細菌など、人から人へうつる「感染症」ですね。
原因は、ほとんど一緒なんですね。
ただ、そのウイルスに対して免疫があれば、高熱に至らないこともあります。大人はそれまでの人生でいろんなウイルスにかかっていますから、多くのウイルスに対して過剰に反応しないんです。
なるほど。
例えば、秋から冬に流行する代表的な「RSウイルス」は、赤ちゃんや子どもだと咳や鼻水がたくさん出たり、40℃くらい発熱したりすることも。一方大人は、ちょっと風邪気味かな?という程度で終わってしまうことも多いですね。
同じウイルスに感染しても、症状の出方が違うということですね。
はい。発熱は免疫がウイルスと戦っている証拠です。子どもの免疫は活発で、ウイルスに対して反応が良いために、すぐパーンと熱が上がりやすいんです。
熱の上がりやすさも若さゆえだったとは…(笑)。
体温だけでなく、いつどのように「食う」「寝る」「遊ぶ」ができているか確認しよう!
子どもは、熱がパーンと上がる分、治りも早いのでしょうか?
熱が上がれば治りが早いかというと、それはちょっと違うんです。確かに「熱が上がるとウイルスや細菌が活動しにくい」という説はあります。でもこれは変温動物の話で、実はヒトのような恒温動物の1〜2℃の差でも同じことがいえるのか、ということは立証されていません。
え〜、そうなんですか!熱を出して汗をかけば早く治るみたいなことも聞いたことがあるような…。
残念ながら今のところそれはいえませんね。また、子どもが日常生活同様に、「食う」「寝る」「遊ぶ」ができていれば、無理に解熱剤で熱を下げる必要はないんですよ。
なるほど〜、高熱はウイルスを倒す武器でもなければ、叩き潰すべき敵でもないんですね。では、熱を下げる必要があるのはどういう状態の時でしょうか?
熱が高くて食欲がないとか、苦しくて寝つけないということであれば、氷枕や冷却ジェルシートなどで冷やしてあげましょう。解熱剤は、39℃でも元気なら使う必要はないし、37℃台でも辛そうなら使って良いと思います。
熱がからだに悪さをしているなら、下げたほうが良いということですね。
そうですね。風邪の場合、症状を緩和させる薬はあっても、最終的には自分の免疫で戦うしかない。免疫の状態を万全にするために、食事や睡眠が必要です。
先ほど「食う」「寝る」「遊ぶ」とおっしゃっていましたが、遊ぶことも回復のためには必要でしょうか?
いえいえ、遊びはからだの状態の指標ということで、回復のために必要というわけではありません。基本的には体力を消耗する遊びはやめたほうがいいですね。症状が軽ければつい遊びたくなるでしょうが、できるなら安静にすべきですね。
ちなみに、うちの子は夜中に高熱を出すことがあって、翌日の仕事のことを考えると、熱を下げる努力をすべきか迷うのですが。
すやすや寝ているなら心配いらないでしょう。ホルモンバランスの影響で、朝や日中よりも、夕方から夜にかけて熱が上がりやすいんですよ。
いつも以上に元気に見えるのは、大人の勘違い⁈
子どもって熱が高いと、いつも以上に元気に見えるのですが、熱がメンタルに及ぼす影響も、大人と子どもで違いがあるんでしょうか?
いつも以上に元気に見えるのは、あくまで「こんなに熱が高いのに」という大人のイメージのせいでしょう。ただし、メンタルが体調に及ぼす影響はありますね。
「病は気から」ということ…?
大人は熱に対してネガティブなイメージを持っているために、高熱があるという事実を認識しただけで辛くなってしまうんですよね。一方、子どもは体温の目安を理解していないので、メンタルに影響を受けないんだと思います。
大人は数字に振り回されすぎ、ってことなんですね。
子どもの場合、注意すべきは体温よりもぐったりしているかどうかです。
じゃあ、保育園登園のボーダーラインの37.5℃っていうのは一体…。
医学的に「発熱」の定義を37.5℃以上としているからでしょうね。でも、熱がなくても、咳や鼻水が出ていればウイルスは他の人にうつります。
子どもなんて年がら年中鼻水を垂らしているし、熱がなければいいやと思って、つい預けちゃいます…。
実際、保育園等の集団生活を始めて1〜2年の子どもは「感染症に全くかかっていない状態」の時期のほうが少ないくらいなんです。風邪で発熱するほど体調が悪いのは1〜2日だとしても、その後、咳や鼻水が出続けていることは、しょっちゅう見られます。
病院に行くべきベストタイミングはいつ?
では、発熱以外にどんな症状があれば病院に行くべきですか?
いつもと様子が違う点があれば、自己判断をせず、医師の診察に委ねてください。医師は、「食う」「寝る」「遊ぶ」の全身状態に加えて、呼吸の数や心拍の数など、年齢に応じたバイタルサインや、喉、耳、肺などの状態を診て判断します。
ちょっとでも疑わしければ、とりあえず病院に行くべき…?待合室で他の病気をもらってしまうのも怖いなと思ったりするんですよね(笑)
ある程度元気なら、まずは家で様子を見ていても良いでしょう。1〜2日経っても熱が下がらなければ受診してください。インフルエンザなど48時間以内に治療をしなければならない場合もありますので。
お、では48時間というのはひとつのボーダーラインですね。
ただ、発疹が出ている場合はもっと早く診断を受けてほしいですね。というのも、手足口病などのウイルスは咳や鼻水からうつる「飛沫感染」なのですが、麻疹と水疱瘡は、5〜6m離れていてもうつる「空気感染」なので、周囲への影響が出るのが早いんです。
子どもの病気の対処法は、「いつも通りに過ごせているかどうか」と「発疹があるかないか」がカギなんですね。今日はしっかり勉強させていただきました!ありがとうございました。
病児保育の先生に、おすすめの遊び方を聞きました
小暮先生に基本的な知識を教えていただいたところで、実際に、発熱など体調に不安のある子どもたちを預かる病児保育ではどんな風に子どもたちをケアしているのか気になったので、認定NPO法人フローレンスが運営する「病児保育室フローレンス豊洲(以下、フローレンス豊洲)」の小森明美さんにお話を伺いました。
小森 明美(こもり あけみ)
認定NPO法人フローレンス 病児保育事業部所属。2010年より病児保育スタッフ「こどもレスキュー隊員」として働く。
子どものからだに負担をかけない過ごし方とは?
はじめまして、今日は病児保育室での過ごし方を自宅でも参考にしたくて伺いました。
よろしくお願いします。
さっそくですが、病児保育室では子どもたちはどんな一日を送っているのですか?
病児保育室には、急な疾患によっていつもの保育先に預けられない、年齢も症状も様々な子どもがやってきます。積極的に遊ぶというよりは、体調管理を第一にしつつ、熱が出ていても楽しい一日だったと思ってもらえるように過ごし方を考えています。
一日中寝ている子がほとんどですか?
一日中寝ているということはあまりありません。目が覚めていたら、横になったままで本を読んだり、クイズやしりとりなどの会話で遊んだりします。
年齢によって、遊びの種類は変えますか?
乳児ならスキンシップや手遊び、もう少し大きい子なら折り紙や塗り絵、ブロックやおままごと、プラレール遊びなどでしょうか。いずれも、座ってできる遊びが中心です。
やっぱり基本的には、静かな遊びが良いんですね。
そうですね、元気に見えても、からだのどこかに不調のタネが潜んでいて、夕方から急に熱が出る場合もありますから。
走りたくてうずうずしたりする子はいませんか?
そういう時はまず、子どもの言い分を認めてあげます。「元気になってきたから走りたいよね」と共感した上で「もう少し我慢しようね」と伝えます。
なるほど、認められれば納得するんですね。
体調がすぐれない日は甘えさせてあげよう
それから、病気をしているとちょっと甘えたい気分になるので、遊びたいのを我慢している分、甘えさせてあげます。
例えば?
年長さんくらいの少し大きな子は、普段家庭であんまり抱っこされなくなったぶん、抱っこしてあげると意外と落ち着いたりするんです。他にも、「ご飯を食べさせて」と甘える子もいますね。
なるほど。病気の時って大人でも甘えたくなりますもんね。
病気で寝ている子に対して、注意すべき点はありますか?
呼吸の変化や顔色には注意しています。部屋を真っ暗にしてしまうと様子が分からなくなるので、お昼寝中も薄暗い明るさにしています。
寝ているとつい安心してしまいますが、寝ている時こそ注意が必要なんですね。室温や湿度の目安はありますか?
フローレンス豊洲では、夏は26〜28℃、冬は20〜23℃、湿度は年間を通して40〜60%に設定しています。からだは、熱の上がり始めは冷え、上がりきると熱くなりますから、肌の温度や汗の状態など、肌に触れてチェックします。熱があれば、本人が心地良いと感じられるように冷やします。
どんな風に冷やすのでしょうか?
汗をかいていたらからだを拭いて、脇の下や足の付け根を保冷剤で冷やしたり、着替えさせたり。冷却ジェルシートも気持ち良さそうなら使用すると良いと思います。
子どもって熱があるとお布団をはいでしまうことが多いのですが、熱が上がり切っていればそのままで良いのでしょうか?
足の裏は子どもにとって体温調節の場所なので、熱をこもらせないように、本人が寒そうでなければ出しておきましょう。無理に肩から足先まですっぽり覆わなくては、と思う必要はないでしょう。
兄弟が心配して看病に来たり、少し元気になると一緒に遊ぼうと誘ったりする時はどうするのが正解ですか?
元気な兄弟とはできるだけ近づけない方が良いと思いますが、家庭ではなかなか難しいですよね。保護者の方が常に様子を見つつ、具合が悪くなってきたら「静かにそっとしてあげようね」と元気な子に言って聞かせると良いと思います。小さい子でも、大人が思う以上にちゃんと理解してくれるものですよ。
わかりました。その他、食事面などで注意すべきことはありますか?
食事は食べ慣れた消化の良いものを無理せず食べさせてあげましょう。また、子どもは水分調節が未発達なので脱水症状を起こしやすいといわれています。水分はこまめに補給するようにしたいですね。
無理にでも栄養を摂らせなきゃと思いがちですが、自然な範囲で良いんですね。今日はありがとうございました、優しいお母さんになれそうです(笑)
熱がある日が嫌な記憶にならないように
小暮先生のお話から「熱」はそれ自体が悪者というわけではないこと、ただし熱によって食事や睡眠などが阻害されているなら、解熱剤を使うことも効果的だと知り、熱の概念が変わりました。保育園の37.5℃の壁に振り回され、つい「それ以上なら病気、それ以下なら健康」と分けてしまいがちだったことを反省。これからは「食う」「寝る」「遊ぶ」に着目して子どもと接していきます!
また、フローレンス豊洲の小森さんが教えてくれた、病児とは穏やかに過ごしつつ、病気の日でも良い一日だったと思えるようにサポートするという発想は目から鱗。これからは遊びたい子どもの気持ちを受け止めつつ、甘えん坊解禁で解消させてあげようと思います。
とはいえ、まずはウイルスや細菌を体内に持ち込まないことが一番!まだまだ風邪やインフルエンザが流行る時期。外から帰ったら手洗いうがい、そして日頃の栄養と睡眠のリズムを徹底して、子どもが元気に過ごせるような環境を作っていきたいですね。
編集:ノオト
撮影:栃久保誠
・当記事に掲載の情報は、監修者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
吉野ユリ子
1972年生まれ。ライフスタイルジャーナリスト。立教大学卒業後、ファッション誌編集部などを経てフリー。雑誌・ウェブ・広告などを中心に、豊かなライフスタイルの提案を行うほか、キャスティングコーディネイト、PRコンサルティングなども行う。2020年インタビュー&ライティングサービス「A PIECE OF LIFE」をスタート。
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