早食いは太りやすいって本当?専門家に聞くダイエットに効果的な咀嚼とは
仕事や育児に慌ただしいと、ついつい早食い&ながら食いになりがちな食事。知らぬ間に食べ過ぎてしまい、体重が気になってきたという人もいるのでは?しかし、「ゆっくりよく噛むだけで、同じ食事でも太りにくくなる」という情報をキャッチ!東京工業大学の林直亨先生に話を伺うと、咀嚼はダイエットや食事の時間の豊かさにつながることがわかりました。
こんにちは!イラストレーターの原あいみです。最近、5歳になる娘が「咀嚼の歌」なるものを歌っています。その歌には、咀嚼をするとこんないいことがある!という歌詞があるので、食事の度に「よく噛んで食べるんだよ〜」と言い聞かせているのですが…。何となく「よく噛むことが◎」と知っているけど、咀嚼の効果について、娘に説明はできません。
さらに、「早食いは太る原因」「少量の食事でもよく噛めば満足感がある」とも聞くけど、平日のランチはPCの前でながら食べ、しっかりと噛んでいない自覚がある私。長期に渡る在宅勤務で、すっかり太ってしまった今、咀嚼とダイエットの関係も気になっています。
そこで、「咀嚼と栄養」という観点から健康について研究している林直亨先生にお話を伺いました!
林 直亨(はやし なおゆき)
早稲田大学人間科学部卒業。博士(医学:大阪大学)。大阪大学助手、九州大学准教授を経て2013年から東京工業大学大学院教授。現在、同大学リベラルアーツ研究教育院教授。運動、栄養、休息、精神作業が健康に与える影響について研究している。
消化吸収が良い人間は、太りやすい運命!?
本日はよろしくお願いします!日々、いかにラクして痩せてやろうかと考えている原です。今日は咀嚼とダイエットに関するヒントが伺えたらうれしいです!
こちらこそ、よろしくお願いします。
まず最初に聞きたいのですが、そもそも「咀嚼」の役割ってなんでしょうか?
咀嚼とは、消化の第一段階にあたり、基本的な役割が2つあります。1つは食べ物を小さく噛み砕き、飲み込みやすくすること。食べ物が気管などに入ってしまう誤嚥(ごえん)や、誤飲を防ぐことができます。
それは大切な役割ですね。
はい。もう1つは、咀嚼している時に出てくる、唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素によって、炭水化物に含まれるデンプンの分解を助けることがあげられます。
ゆっくりよく噛むと、消化吸収が良くなると聞いたことがあります!
食物と唾液をよく混ぜて飲み込みやすい食塊(しょっかい)にすることで、確かに消化は良くなります。ですが…、そもそも人間は消化吸収の能力がとても優れている生き物なんですよ。
そうなんですか!?
胃腸が健康な人なら、あまり噛まなくても米の糖分をほぼ100%、それ以外のタンパク質や脂肪などの栄養素もほぼ9割は吸収できるんです。でも、ダイエットの観点から言うと、大半の食べ物を消化吸収 “できちゃう”とも言えますね。
栄養を無駄にしないというのは素晴らしいことだけど。裏を返せば、太りやすい原因だなんて…。
よく噛むことで、食欲調節ホルモンが分泌され、エネルギーも消費できる!
人間は消化吸収機能が優れているからこそ、そもそも太りやすい生き物であるということですが…。「早食いは太りやすい」とよく聞きますが、ズバリ、本当なんですか?
「早食いの人は太りやすい」「早食いの人は太っている」というのは、どちらも数々のデータがありまして、事実だと言えます。
つまり「本当」なんですね…。
はい。「脂っこいものが好きな人」が太っている割合よりも、「早食いの人」が太っている割合の方が多いくらいです。
ええっ!そうなんですね。びっくりです。でも、なぜ早食いは太りやすいのでしょうか?
要因は2つあると考えられます。
早食いが太りやすい原因
その1、早食いだとたくさんの量を食べてしまうから。
その2、食後のエネルギー消費量が減るから。
まあ「たくさん食べてしまう」の方が、圧倒的に大きな要因なんですけどね。
早食いだとたくさん食べてしまうというのはなんとなく想像がつきますが、からだの中ではどういうことが起こっているんですか?
人間は、食事をすると胃や腸といった消化管から「食欲を調節するホルモン」が出ます。
どんなホルモンなのでしょうか?
いくつか種類がありますが、胃からは食欲を増進させる「グレリン」が出ています。また、小腸からは、食欲を抑制する「GLP-1」が、十二指腸からも、同じく食欲を抑制する「コレシストキニン」などが出ているんです。
わわわ、いろんなものが出てるんですね!
ゆっくりよく噛んで食べることで、食欲を増進するホルモンが減少し、食欲を抑制するホルモンが増えることが実験で明らかになっています。
ほほう!早食いだと、食欲を抑えるホルモンが十分に分泌されないってことですか。では、食後のエネルギー消費量が減るというのは、どういうことですか?
よく噛んで味わうと、交感神経の活動が活発になります。すると、脂肪を分解して熱に変える「褐色(かっしょく)脂肪細胞」の代謝が増えて、からだにあるエネルギーを消費するんですよ。早食いだと、この褐色脂肪細胞が十分に活性化されないんです。
ええーー!すごい!よく噛めば、より多く自分の中にあるエネルギーを消費してくれる、ってことなんですね。それは噛まないわけにはいかないですね!
でしょう?
うっかり早食いしてしまった時の「裏技」
噛むことの重要さがわかってきました。俄然やる気が出てきたんですけど、ダイエットをしたいと思っている人は、1口につき何回くらい噛むべきでしょうか?
30回くらいが目安ですかねぇ。
30回かぁ〜、多いですね…。ちゃんと噛まなきゃ!というのはわかっているんですが、どうしても時間がなくてゆっくり食事できない時に、「裏技」はないですか?
若干ではありますが、食後のエネルギー消費量を増やすという意味でいうなら、1つの作戦は…
作戦は!?
食後に「ガムを噛む」です。
ガム-!!
実は、ガムを噛むだけで、15分間で7kcal消費するという実験結果が出ています。
お口をリフレッシュだけじゃなく、エネルギー消費量も増やすのですね。
ただ、ガムにも1枚約5〜10kcalの糖分が含まれています.一方,エネルギーとして利用できない人工甘味料が入っているものだと、お腹を下してしまう方もいらっしゃるので食べ過ぎには気を付けてください。
ガムを何個も食べたら、エネルギーをどんどん摂取しちゃいますもんね。
それにね、15分噛むのって結構キツいです。味がないものを無理して咀嚼し続けるのは、実はとても厳しいんですよ。
確かに…。どうせ噛むなら、おいしさを最大限に感じながら咀嚼を楽しんだ方が絶対に幸せですね。ガムは最後の手段にとっておきます。
ちなみに、原さんは間食されますか?
はい…。太る原因だとはわかっているのですが、食べちゃいますね…。
ダイエット中は、ナッツ類をおやつにするのがおすすめですよ。噛むほどに味わいが豊かになるし、食欲調節ホルモンをコントロールできて、エネルギー消費にも優れているおやつなんです。
美容に良いイメージがあったけど、しっかり噛むという意味でも優秀なおやつなんですね。
「おいしい」を最大限引き出す習慣を!
実は、いろいろ話したタイミングでなんですが…僕自身が早食いでして。
え!?そうなんですか??
だから、自分にも言い聞かせているんですが、「平日は忙しいから早く食べてしまったとしても、休日はゆっくり食べる」などの習慣を心がけるところから始めるのもいいと思いますよ。
メリハリですね。
そう!あと、これまで早食いの僕は、スパゲティを噛まずに食べていたんですが、ちゃんと噛んで食べたら、初めて麺の味がしたんですよ。それまでは、ソースの味しかしなかったのに(笑)。
よく噛んだら、小麦の味がしたんですね。
その味に一度気付いたら、スパゲティはちゃんと噛んで食べるようになりました。 人は「健康に良い」ってだけじゃ、続かないんです。何かしらの「快楽」がないと、習慣にはならない。
「おいしいに気付く」という体験ですね!
そうですね。味覚は舌で感じるものですが、鼻や喉の奥側からふわっと上がってくるフレーバーや風味も、おいしさを感じ取る大切な要因で、よく噛んでいるうちに感じられるものなんですよ。
ああ、わかります。ありますね、ふわっと!よく噛んで到達した「おいしい」を体験すると、習慣にできるということですね。 うぅ、早く何か噛みたくなってきました。
僕は、飲み込む前に「この食べ物の味は、本当にここまでか??おいしさを最大限まで引き出したか??」とたまには思うようにしていますよ。そうすることで、食材の味をより感じられるようになりました。
わぁ、おもしろい!次の食事から味の変化に注目してみます!
「食べた量」がわからない、ながら食いはキケン!
しっかりと味わって食事をすることが、早食いを防ぎ、そしてエネルギー消費にもつながるというお話をしましたが、もう1つ、ダイエットを意識している人に知っておいてほしいことがあります。
何ですか?教えてください!
食べる「量」をちゃんと自分で把握する、というのが大事なんです。
量を把握するってどういうことですか?
人間は、自分が食べている量を意識せずに食べていると、どんどん食べてしまうんです。テレビを見ながらポテトチップスの袋を抱えて食べるとどうなりますか?
あっという間に全部食べちゃってびっくり!ってなります(笑)
そう、食べる量を意識しない、とは、そういうことです。このくらいの量なら良し、と食べる前に「目」で確認してから、食べた方がいい。
確かに…これだけって決められたら、1枚1枚もっと味わって食べる気がする。
おやつを食べながら、パソコンに向かって仕事する。これも危険です。もし、食べたいのなら、食べる分だけをお皿に入れて、残りは棚にしまいましょう。もっと食べたいなら、またお皿に入れて「2皿目」と意識して食べる。そうするだけで、ずいぶんと量を抑えられます。これは実験で明らかになっています。
ほほう。それが量の把握ということですね。
人間は生存競争を生き抜いてきた生き物ですからね。「あればあるだけ食べる」が自然の姿なんですよ。だから…
ポテトチップスを抑制できると思うなと!!(笑)
本能に逆らうことは結構大変。「太ること」の方が自然なんです。
そうかぁ「ポテチが止まらない」は、自分の意志が弱いからだと思ってましたが…
「生物としてしょうがないこと」なんです!
なんだか罪悪感が減りました。じゃあ、そうしないために対策しよう、って素直に思えますね(笑)大発見です。
よく噛んで、味覚を育てよう!
さらに欲が出てきたんですが、よく噛んで食事をすることって、ダイエット以外にも何かいいことってありますか?
早食いが肥満の原因になると言いましたが、その点において言えば、しっかりと咀嚼することで、「肥満やメタボリックシンドロームを防ぐ」という期待は大いにできますね。ひいては、ガン予防にもつながると言えると思います。
咀嚼でガン予防?すごい!
「早食いや熱いものを食べること」が食道ガンになりやすいというデータも実際にありますしね。
他にもなにかありますか?
健康法ではないですが、「味覚自体が豊かになる」と、言えるかもしれませんね。味覚は学習だと言われています。いろいろな味を体験して、学習しないと、味を感じる領域は広がっていかない。
先生が先ほどからおっしゃっている「咀嚼=味を感じる」のチカラですね。
食べ物は唾液と混じると味をよく感じられるんです。唾液が味を運んで、舌の上に届けるので。唾液とよく混ぜるためには、しっかり噛むことが必要です。ちょっと話は変わりますが、「だし」の旨味は子どものころにわかっていないと、大人になってからでは感じられないって言いますよね。
それ、聞いたことあります!ダイエット中の私はもちろん、娘にもちゃんと噛む習慣を身に付けて、いろんな味との出合いを作ってほしいな〜。
味覚が豊かだと、生活の楽しみもきっと増えます。ぜひ噛むことに、ちょっとだけ意識を向けてみてくださいね。
林先生、今日は貴重なお話をありがとうございました。
咀嚼を意識するだけで、食事の時間がより豊かになる
先生にお話を伺ってから1ヶ月。
ひと口ひと口、咀嚼を意識すると、本当に味がしっかりとしてくることを実感。
おいしいものは、よりおいしく感じるし、逆に、味の濃いものが、なんとも刺激が強すぎて食べきれない…なんてことも起きました。
そして、当初の淡い期待、ラクして痩せるはどうなったかというと…
本当に「よく噛む」以外何もしませんでしたが、1ヶ月でまずは1キロ痩せました!小さな1キロですが、大きな一歩です!!ひゃっほい!
でも、痩せ始めたことよりも、噛むことに意識して食事をする楽しさを知ったことの方が大きく、これから育児をするにあたっても「よく噛んでおいしく食べようね」のメッセージを、ていねいに実感を持って子どもに伝えていきたいなと思えるようになりました。
娘の反応はと言うと、私が「噛むと味がよくわかるよ!」なんて言いながら食べているので、真似したくなったのか、いつもより意識しながら噛んでいる様子。数日後、朝食の後にちょこちょこと近づいてきて「ママ、葉っぱ(サラダ)をよく噛んで食べたらね、いつもよりおいしかったよ!」と、コショコショ話で教えてくれました。
まさか、その歳にして「おいしいに気付く体験」ができたのか!?生野菜類はよく残す娘ですが、噛んでみたくなったのなら、大成功です。
みなさんもぜひ、ひと口ひと口に興味を持って食べてみてくださいね。
ダイエットにもつながるし、何より食事の時間が豊かになるはずです!
編集:ノオト
当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
原あいみ
難しいことをわかりやすく“マンガ”で伝えることが得意なイラストレーター。小学生の娘を持つワーママ。
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下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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