ついやってしまう「知ったかぶり」には意外な心理が?!専門家に聞いてみた
話題のアーティストや流行中のアイテム、家事や暮らしにまつわる常識など、ふとした会話に出てきたアレコレをつい知ったかぶりしてしまった...。そんな経験はきっと誰にでもあるはず。今回は、Lidea会員の皆さんから集まった「知ったかぶりエピソード」をご紹介!さらに「人が知ったかぶりをしてしまう心理」について京都大学・阿部教授にお伺いしました。
ついついやってしまう、小さな知ったかぶり…
皆さんこんにちは!ライターのいしかわゆきです。
実際は知らないことを、あたかも知っているかのように振る舞ってしまう「知ったかぶり」。私も最近友人に、「◯◯(世界的に有名な映画)って知ってる?」と聞かれて「う〜ん、見たような気がする〜」と答えましたが、実際には1ミリも内容を知りませんでした。正直に言えばいいのに、なぜ私はさらっと知ったかぶりをしてしまったのか…。でも、きっとどんな人でも日常的にこれくらいの知ったかぶりをしたことはあるのでは…?
そう思うと、世の中にはたくさんの知ったかぶりエピソードがあるのかもしれない…。そんなことをLidea編集部に話したところ、「面白そうなので、Lidea会員さんからエピソードを募集してみましょう!」ということに。そんなわけで、コメントをお寄せくださった皆さん、ありがとうございました!さっそく、集まったエピソードをご紹介していきます!
つい得意げにしてしまった…知ったかぶりエピソード
まずは、編集部でも「あるあるだよね〜」と共感が多かったエピソードをご紹介します。
※ご紹介しているコメントについて、内容は変えずに補足修正している箇所があります。ご了承ください。
こんなエピソードが集まりました
・祖母がニュースを見ながら「コンプライアンス」や「ガバナンス」のような横文字が出るたびに「これ何?」と聞いてくるのですが、いつも調べる前になんとなく答えて知ったかぶりをしています。きちんと答えられる大人になりたいです、、、(かぼすこしょうさん)
・サッカーの選手やチームの名前を覚えて、テレビで放映されているときに「この選手が強くて~」と知ったかぶる事が多いです。でもいまだオフサイドのルールもよく分かってない…。(コアラのマークさん)
・車を運転してる時はYouTube Musicをかけていて流れてきた曲に「あっこれこれよく聴くよね~なんかの主題歌だったかな?」と子供の前ではお母さん知ってるよ!アピールしてしまう。実際はよく分からない…(maron222さん)
・電車の乗り換えについて家族に聞かれて、「前から〇両目だとちょうど〇〇線につながるエスカレーターがあるよ」と教えたら、帰宅した家族に「△両目だったよ!」と言われ、駅の改装で変わっていたことを知りました。アップデートしないと…!(えむさん)
知ってるよアピール、めちゃくちゃわかります。特に流行りっぽいものだと、知らないのが恥ずかしいような気がして、ついつい知ったかぶりしてしまいますよね…(笑)
どのエピソードもおもしろかったのですが、個人的にお気に入りだったエピソードはこちら!!
数日前のピンクムーン。旦那に今日ピンクムーンが見えるんだって!!旦那なんやそれ?知らんの〜ピンクの月やで!確かにピンクやわ!って言ったけど、後に知りました‥!ピンクの月なんてない事を(笑)
ピンクムーンって聴いたらそう思うやん?しかもそう見えるから不思議(じゃがいもさん)
私も知りませんでしたが、「ピンクムーン」はピンクの花が咲く4月の満月のことで、決してピンク色に輝く満月ではないらしいです。これは勘違いしてもしかたがない(笑)
家事や暮らしにまつわる、知ったかぶりエピソード
続いて、家事や暮らしにまつわる知ったかぶりエピソードをご紹介します。
キッチン周りやお料理に関する知ったかぶりエピソードがたくさん集まりました。Lideaの記事でぜひ正しい知識をチェックしてみてください!
こんなエピソードが集まりました
・ごく最近まで、食事用具のカトラリーをカラトリーと表記・発音していました。人に指摘されて初めて知りましたが、いままでずっと間違えてきたことを思うと居たたまれなさに襲われます。(ぎけろうさん)
・ウスターソースってサラサラして薄いソースだと思ってたら、ウスター地方という地名由来のソースでした。はずかしー!(るららんさん)
・思い出しました。出汁のことを「でじる」と呼んでいました。今でも油断してると、でじると言います。うんぬん(云々)を「でんでん」と言って笑われました。私ではないけど魚介のサラダを「ぎょすけのサラダ」と言った人がいるらしいです(ララフランスさん)
・「肉じゃがは灰汁はしっかりとりましょう」と料理の本には書いてあって、何のことだかわからないで適当に作ったら全然美味しくなかった(にゃんさん)
読み方の勘違い、よくありますよね…。なぜその読み方が定着してしまったのかは謎ですが、自分ひとりだと気付けないのがまた厄介…!人に指摘されて初めて知ることも多いですよね
そして、家事や暮らしにまつわるエピソードのなかで、個人的にお気に入りだったエピソードはこちら!!
以前筍のアク抜きの仕方があやふやでした。
近所の人と「アク抜きが面倒よね~」と言ってました☆
しかし実際は確か母は粉みたいなのをかけていたっけ?とかなりあやふやでした。
ちょうど筍を母からもらったときに
アク抜きどうするのだっけ?と聞いたら「米ヌカあるよ」と言われてやっと理解出来たのでした☆(コロビンさん)
みんなが当たり前にやっている料理の下処理をやったことがないと未熟な感じがして、つい知ったかぶってしまうかも…。これはみんなのなかでは常識なのか!?と焦りますよね
やってしまった!知ったかぶりエピソード
最後は、知ったかぶりでやらかしてしまったり、恥をかいてしまったりしたエピソードを紹介します。なかには勘違いや思い込みがもたらしたこんなエピソードもありました。
・関西出身の私が東京で仕事を始めて1か月弱、私の友人が東京観光するというので、じゃあガイドやってあげる!と見栄を。まだ東京の右も左もわからない私は渋谷で迷いに迷い交番へ…30年ほど前の出来事です。(シマちゃんさん)
・ジロー系ラーメン初めて行って、マシマシでっていうのが普通と思っていた。出てきた物を見て、勘違いした時には遅かった(泣)お残しできない私は食べきったけどお腹こわれました(笑)(ツインズマムさん)
・若かりし頃「ハクトウって体に良いらしいね」とドヤ顔の私に、「それ…サユ(白湯)ね」と冷たい視線が飛んできました。(やまちゃん7さん)
・同僚と環境について話していたとき、うる覚えにもかかわらず、SDGs(エス・ディー・ジーズ)『エス・ディー・ジー・エス』と得意気な顔で言って、指摘されました。私は英語が得意なはずなんですが・・・(笑)(skykerさん)
マシマシは増量という意味ですよね。私も博多系ラーメン店でよくわからないまま「バリカタで」と注文して通ぶっていた時期がありましたね。なぜ知らないのにドヤ顔で言ってしまうのか…もはや口に出さないほうがいいのかもしれない…
やってしまった系エピソードのなかで、個人的にお気に入りだったエピソードはこちら!!
・学生時代、ナンセンスはセンスがないという意味だと思って得意げに使っていたが、後輩に「意味わかって使ってますか?」と指摘され、家に帰って電子辞書で調べて間違った使い方をしていることに気づき恥をかいた。(こむぎ0529さん)
やばい、私もナンセンスってセンスがないことだと思っていたんだけど「無意味な」ってことなんですね!?それにしても後輩に指摘されるの、恥ずかし過ぎますね…
人が知ったかぶりをしてしまう心理を専門家に聞いてみた
「出汁を“でじる”と呼んでいた」「“マシマシ”を適当に使ってお腹をこわした」など、皆さんの知ったかぶりエピソードにたくさん笑わせていただきました。
しかし、ここでいくつかの疑問が…。そもそもなぜ、私たちは知ったかぶりをしてしまうのか、知ったかぶりする人にはどんな特徴があるのか?知ったかぶりをする時に脳内では何か起こるのか…。あなたも気になりませんか?
そこで今回は、京都大学で「正直さと不正直さの脳のメカニズム」などのテーマを研究している、阿部教授にお話を伺いました。前半でご紹介したみなさんのエピソードも踏まえながら、知ったかぶりの心理について疑問をぶつけます!!
阿部 修士(あべ のぶひと)
2008年東北大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。博士(障害科学)。東北大学大学院医学系研究科助教、ハーバード大学心理学科/日本学術振興会海外特別研究員。京都大学こころの未来研究センター准教授、京都大学人と社会の未来研究院准教授を経て、2024年より同研究院教授。2015年、日本心理学会国際賞奨励賞受賞。脳機能画像法と神経心理学的手法を併用して、主にヒトの正直さを中心とする意思決定の神経基盤の研究を行っている。主著に『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』(講談社)、『あなたはこうしてウソをつく』(岩波書店)。
https://ifohs.kyoto-u.ac.jp/member-detail/1675/
知ったかぶりは「自分が知らないと思われたくない」気持ちの表れだった
阿部先生! 今日はよろしくお願いします。さっそくですが、なぜ私たちは無意識のうちに知ったかぶりをしてしまうんですか?
こちらこそ、よろしくお願いします。私の専門は「人が嘘をつく」研究でして、「知ったかぶり」にフォーカスを当てた研究は世の中にあまりないように思います。とはいえ、「嘘をつく」と「知ったかぶり」は本質的にはそう大きく変わらないのかな、と考えて今日はお話していきますね。
ありがとうございます!
まず、人が嘘をつく理由には3つの軸があります。1つ目は自分のためか他人のためか。2つ目は利益を獲得できるのか罰を回避できるのか。3つ目は、その利益や罰が物質的なものか心理的なものか。
知ったかぶりをこの3つの軸から見てみると「自分のため」であり、他人からものを知らないと思われてしまうという「心理的」な「罰を回避」できるもの。つまり「自分が知らないと思われたくない」という気持ちからやってしまうものでは?と考えられます。
心当たりがありすぎますね…(笑)。実際に知ったかぶりをしている人は多いのでしょうか?
知ったかぶりはあくまで「その人の頭の中だけで起こっている話」なので、事実(本当に知っていたかどうか)と照らし合わせて判定するのがむずかしいです。なので、客観的に多いor少ないを判断するのも、すごくむずかしいですね。日常の些細な瞬間に起こる出来事だと思います。
知ったかぶりは、円滑なコミュニケーション術でもある?
知ったかぶりをする傾向がある人に、何か特徴は見られるのでしょうか?
他人から否定的に評価されることへの不安や心配を感じる「評価懸念」の強い人は、知ったかぶりをしやすいでしょうね。さらに、その場に評価してほしいと思っている人が存在する時や、多くの聞き手がいる場合は「自分の無知を悟られたくない」という気持ちはより高まると言えそうです。
「この人は何も知らないんだ」と思われるのは嫌ですもんね。
あとは、周囲との協調性を重んじる人も挙げられると思います。協調性という言葉自体はポジティブな意味合いで使われることが多いですが「他人と歩調を合わせよう」と強く意識するあまりに、つい知ったかぶりをしてしまうことがありそうです。
そのパターンは、気遣いゆえの知ったかぶり、という感じですね。
そのほかには、負けず嫌いな人にも当てはまるかもしれません。一緒に話を聞いている人が知っていて、自分が知らない話題が出てきた時に、知ったかぶりをしてしまうかもしれませんね。
ちなみに「サッカーの選手やチーム名を覚えて、テレビで放映されている時に知ったかぶることが多い」というLidea会員さんのエピソードがありましたが、親しい人に対して、なぜか積極的に知ったかぶりをしてしまう人は、どのような心理なのでしょうか?
「話題の共有をしたい」というモチベーションが強いのかもしれません。人間関係の形成には共有できる話題があることがすごく大事です。このケースだと、情報共有することによるつながりを意図した「微笑ましい知ったかぶり」とも捉えられます。
「知ったかぶりはコミュニケーションの一環でもある」と考えてもいいのかもしれないですね…!
人は知ったかぶりに罪悪感を感じない!?
実際に知ったかぶりをする時、私たちの脳内では何が起こっているのでしょうか?
以前「知らないふりをした時」と「知ったかぶりをした時」で脳の活動がどう変わるかの実験を行ったんですよ。
すると、知らないふりをした時は、認知的な「葛藤」に関わる脳部位である「前部帯状回」が活動するのに対し、知ったかぶりをした時はあまり活動しなかったんです。
つまり、知ったかぶりをしても、私たちの脳内において「葛藤は生じにくい」ということです。
つまり、知ったかぶりに「罪悪感」を抱いている人は少ないということですか?
そうですね。知ったかぶりって、誰かに危害を加えるとか、他人を傷つけるわけではないですよね。あくまで自分の本来の知識量をどう見せるかなので、抵抗なくやっている人が少なくないと思います。
罪悪感がないならいっそう、やり過ぎると癖になっちゃいそうですね。
ある研究からは、人間の脳は嘘をつくと「扁桃体」という感情に関わる領域が活動することが報告されています。
扁桃体の活動は、おそらく「自分が悪いことをしている」という「嫌悪感」が反映されているのですが、嘘を繰り返していくとその扁桃体の活動が低下していく、つまり「抵抗感がなくなっていく」ということが実験からわかっています。
ちょっと怖いですね。最初はちょっとした嘘だったものが、それが癖になり、嘘を重ねるうちに取り返しのつかない大きな嘘になってしまうことってありそうです…。
そういったケースは抵抗感がなくなっているんでしょうね…。
知ったかぶりも、雪だるま式に膨れていくと癖になってしまうかも…!?
研究者の意見としては、一度知ったかぶりをすると、後から辻褄を合わせるために苦労する可能性があるので「わかりません」と言えるのなら、最初から素直に言ったほうがいいかなとは思います(笑)。
ちなみに「出汁のことを“でじる”と呼んでいた」「カトラリーを“カラトリー”と言っていた」など、横文字や漢字の読み方の勘違いが、思わぬ知ったかぶりにつながることもあると思いますが、これはなぜ起こるのでしょう?
まず、人間の記憶については、いつどこで何を食べたかなどの「エピソード記憶」と、言葉の意味や知識に関する「意味記憶」を分けて考えるのが一般的です。
「エピソード記憶」のほうが実は脆いもので、後から記憶内容が歪んでしまい、勘違いを引き起こすことがよくあります。一方で漢字の読み方なども含めた「意味記憶」に関しては、基本的に何度も繰り返すことによって形成されていくものです。
そのため、読み方の間違いは意味記憶が誤って形成されてしまった一例と考えられます。最初にその漢字の読み方が間違ってインプットされてしまうと、次にその漢字を見た時にも同じ読み方を繰り返してしまうので、間違ったまま学習が進んでしまい、その後なかなか訂正が効かなくなることはあるのではないでしょうか。
誰かに指摘されることで正しい知識を得られることもあるので、知ったかぶりは新しい知識を増やすチャンスなのかもしれませんね。
そうですね。私も最近は会議中に出てきた専門外の聞き慣れない言葉は、知ったかぶりをしても話が進むものだったら後からこっそり検索して意味を調べたりすることがあります(笑)。とはいえ、後からまわりに迷惑をかけるようなことであれば、知ったかぶりをしないで、きちんとその場で聞くことが大事ですね。
知ったかぶりは、日常にあっていいもの!
知ったかぶりには「ネガティブなイメージ」を持つ人が多いように思いますが、ポジティブな面もあるのでしょうか?
人間には楽観的な側面が必要で、それがないとメンタルヘルスに影響することが知られています。例えば年収や容姿に満足していないとか、現実を直視すると落ち込むこともたくさんある。
だからこそ、私たちは「何とかなるだろう」「自分にはおもしろいところもあるはず」と現実を楽観的に捉えることで、メンタルヘルスとうまくバランスをとりながら生きています。
それで言うと「知ったかぶり」は、自分が知らないという事実から目を逸らして、自分の気持ちを満足させるためにやる行為なのだろうと思います。もちろん、知ったかぶりをした方が良いとまでは言いませんが、自分が納得して他人とコミュニケーションをとるためのポジティブなツールという側面はあるのかもしれません。
知ったかぶりにも、いいことがあるんですね。
知ったかぶりをすることで、相手にとってもプラスになるような状況もあるとは思います。嘘は絶対悪ではなくて、時には楽しむもの、ということが社会でコンセンサスが得られているからこそ「エイプリルフール」といった文化もあるのではないでしょうか。
面白いなぁ。本日はいろいろとお話しいただきありがとうございました!
日常的についやってしまう、「知ったかぶり」。
個人的に、「知ったかぶりによってコミュニケーションが円滑になる」という可能性が示唆されたこと、そして、知ったかぶりは気持ちを満足させるためにやる行為で、自分なりに上手に社会生活を営むことができるツールの1つかも知れない、というお話が興味深かったです。
とはいえ、わからないことをわからないまま放置するのではなく、「あ、今自分知ったかぶりをしたな!」と思ったら、素直に調べたり、「知らないから教えて!」と聞いたりすることで、新しい知識を得られるチャンスにつなげていけるといいですね。
イラスト:海道あゆみ
編集:ノオト
・今回、お気に入りエピソードのコメントをくださったじゃがいもさん、コロビンさん、こむぎ0529さんにはポイントをプレゼントします。
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、すべてがライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
いしかわゆき
フリーランスのライター・編集者。ストレスをかけずに生きるズボラの民。趣味はサウナと温泉を巡ること。
X(旧Twitter):https://twitter.com/milkprincess17
note:https://note.com/milkprincess17
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