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物欲が強い人の心理とは?専門家に聞いたら夫婦円満の秘訣も見えてきた

物欲が強い人の心理とは?専門家に聞いたら夫婦円満の秘訣も見えてきた

欲しい!と思ったら我慢できずについつい買ってしまう。買い物をしている時は楽しいのに、実際に商品が届くと意外に気持ちが冷めているなど、日々生活をしている中で「物欲」や「買い物欲」と上手に付き合うのって難しかったりしませんか?それに、「いい買い物した!」と思っていたのに、パートナーからは苦い顔をされたり...。そこで今回、「趣味にお金をつぎ込むのは少し控えてほしい」と妻に思われているものの、月に数万円はプラモデルやフィギュアを買ってしまうというライター・しげるが、脳神経外科医・菅原道仁さんに物欲が発生するメカニズムや人生を豊かにする買い物の秘訣を教えてもらいました。

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どうもこんにちは。細々とライターをやっております、しげると申します。
唐突ですが、皆さまには、趣味や娯楽はありますか?

自分は中学生くらいからオモチャやらプラモデルやらフィギュアやら、それらに関連する道具やら書籍やらを集めているオタクでして、気がついたら費やしてきた金額も、それなりになってしまっております。

しげるさんのおもちゃ箱

オモチャでパンパンの段ボール箱。部屋にはこんな箱がまだたくさん積んであります…

いやまあ、基本的には自分が欲しくて買っているものではありますし、オモチャもプラモも楽しいし、特段後悔はありません。ただ、買うだけ買ってあんまり遊んでないオモチャも、あるにはあるんですよね。

妻は今の所適当にほっといてくれているとはいえ、今後のことを考えると貯金とか資産運用とか、今まで特に考えてこなかったこともやった方がいいのは間違いないし…。

いきなり収入が100倍になってくれたらいいんだけど…。
どうしようかなぁ…。

というか、どうしてこんなに自分には物欲があるんだろう?これがうまく制御できれば、適度にオモチャを買って貯金もできて、人生バラ色なはずなのに。

そもそも物欲ってなんなの?本能なの?
なんでこんなにオモチャやらプラモやらをゴチャゴチャ買っちゃうわけ? 

というわけで、無駄遣い関連の本の著者でもある、脳神経外科医の菅原道仁先生に助けを求めてみました。物欲との上手な付き合い方、教えてください!

菅原道仁さん

菅原 道仁(すがわら みちひと)
脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック理事長(東京都八王子市)、菅原クリニック東京脳ドック理事長(港区赤坂)。杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原国際病院にて数多くの救急医療現場を経て、現職。『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)、『成功する人は心配症』(かんき出版)など著書も多数。

手に入れる前が幸せのピーク!?物欲とドーパミンの関係

 PCでおもちゃを買おうとしているしげるさん。楽しそうにオモチャを選んでいる様子のイラスト

しげるさん

そもそもなんですが、物欲ってなんなんでしょう?(※ちなみにこのアイコンは自画像ならぬ自作像です。実際にはもう少し肌ツヤはいいです)

物欲は、人間の脳の基本的な仕組みのひとつなんですよ。欲しい物が手に入ると、幸せな気持ちになりますよね。あれはドーパミンという神経伝達物質が分泌されている状態なんです。

菅原さん
しげるさん

ドーパミン、名前は聞いたことがありますね。

わかりやすいところでいうと、なぞなぞを解いた時に「できた!」っていう快感がありますよね。あれはドーパミンの働きです。

菅原さん
オンライン取材の様子

今回の取材はオンラインで行いました

何かを学んで結果を出したり、必要なものを手に入れたりした時にドーパミンによって多幸感を得られれば、「この感覚をもう一度味わいたい」という気持ちになりますよね。それが次の行動へのモチベーションにつながるわけです。そして、そのモチベーションによって新たな学習が行われ、それを繰り返すことで人類は生き延びてきました。ただ、ドーパミンの効果って短時間で消えてしまうんです。

菅原さん
しげるさん

へ~。脳みそのためのご褒美みたいだ。

ドーパミンは「何かに期待している時に一番出る」という特徴があります。なぞなぞでいえば、問題が解けた直後よりも、「ひょっとしてこれで解けるかもしれない」と思いついた時に出るんです。買い物をする時も一緒で、「これを買ったら楽しいだろうな」「こういういい変化があるだろうな」と想像しながら検討している段階が一番出ているんです。

菅原さん
しげるさん

わかります!オモチャは、ネットで画像が発表されたり、イベントで原型が展示されたりした時が一番盛り上がるんですよね…。

オンラインショップなどで商品を選んでいる時はワクワクしているのに、自宅に届いたらそんなに…。という状況になるのも、こういった理由からです。

菅原さん
しげるさん

ちなみに、ミニマリストみたいな物欲のなさそうな人たちもいるじゃないですか。ああいう人たちって、ドーパミンの効果とは無縁なんですか?

ミニマリストの人たちというのは、「物の少ない生活」を達成できると感じた瞬間にドーパミンが分泌されていると考えられます。つらいトレーニングを乗り越えた先に、最高のパフォーマンスが待っている。というアスリートの考え方に近いかもしれませんね。

菅原さん
しげるさん

なんか、ミニマリストの方がかっこいいですね。

ミニマリストであろうと、マキシマリストであろうと、どうしたってドーパミンの影響でさまざまな悩みが出てくるんです。だから必要以上に自分を卑下することもないですよ。うまくいかなかった経験を覚えて、次に活かすことが大事なんです。

菅原さん
しげるさん

次に活かす…。先生…、それができないから困ってるんです…。

それなら、物が欲しい・買いたいと感じる時の脳の特徴や仕組みを覚えておくといいかもしれません。

菅原さん
しげるさん

ぜひ、具体的に教えてください!

脳はめんどくさがり!買い物の判断を省エネで済ませたい

買う・買わないの判断をサボっている脳を擬人化したイラスト

脳は私たちのからだの中でも、ものすごく燃費の悪い臓器で、からだ全体のたった2%の重さしかないのに、摂取したエネルギーのうち20%近くを使うと言われています。

菅原さん
しげるさん

そんなに!

エネルギー源が限られていて、生きるか死ぬかの状況を生き残るために、人間の脳はできるだけエネルギーを使わないような習性があります。基本的に脳は面倒くさがりなんです(笑)。

菅原さん
しげるさん

なるべく省エネしようという考えなんですね。

買うか買わないの判断も、脳はできるだけエネルギーを使わずに済ませたい。世の中の物を売る仕掛けは、大体この脳が面倒くさがりである点を利用しています。だから、知らずしらずのうちに、物を売るための仕掛けにすぐ乗ってしまう。

菅原さん
しげるさん

脳としては、できるだけ半自動的に買うか買わないかの判断をしたいわけですね。自分の脳はどれくらいその仕掛けに騙されやすいんだろう。知りたい…。

そうですね。下記項目が1つでも当てはまる場合は、騙されやすい脳になっているかもしれません。

菅原さん
物欲・買い物欲が強い人の特徴をまとめた表

しげるさん

う〜ん、自分でも色々と思い当たるフシがある…。

大前提なんですが、そもそも物欲は悪いものではないし、欲しいものがあるなら買った方がいいんですよ。ただ、ここで挙げた全ての項目は、脳が買うかどうかの判断をサボる状態につながります。

菅原さん
しげるさん

脳もサボりたいんですね…。

自分でしっかり考えられないとか、脳が騙されている状況で買ったものは後から「いらなかったな…」となりがちです。

菅原さん

サボり脳に働きかける〇〇効果

例えば、人のSNS投稿を見て同じものを買ったり同じ場所に行きたくなったりするのは、「バンドワゴン効果」という名前がついています。ブームに乗りたくなったり、大勢に支持されているものはいいものだと脳が判断してしまうんです。

菅原さん
しげるさん

ありがちですね。

また、「ランキング1位!」みたいな目立ちやすい謳い文句に惹かれるのは「ハロー効果」という脳の働きです。ランキングの他にも、かわいい動物や知っているタレントなど親しみやすいモチーフが使われると、脳は「これを買おう」とすぐ判断してしまうんですね。

菅原さん
しげるさん

は〜、いちいち名前がついてるんですね、これ…。

先ほどドーパミンの話をしましたが、ストレスが溜まっていたり寝不足だったりすると、買い物で出るドーパミンに依存しやすいんですよ。これも脳が判断を誤りやすい状態ですね。

菅原さん
菅原先生が話ている様子

知っているか否かでだいぶ無駄使いが減りそうな情報でした…

あと、「返品無料」という謳い文句の商品を、実際に返品する人はほとんどいません。これは、私たちの脳は一度何かを手に入れたら、それを手放したくなくなるようにできているからです。この心理は「保有効果」と言われています。

菅原さん
しげるさん

どれも身に覚えがあるな〜!

逆に言えば、自分なりに目的がはっきりしている買い物は、脳がサボらずに判断しているから、後から無駄だと思いにくいですね。

菅原さん
しげるさん

買い物の目的か〜。

例えば、「礼服を買って後悔した」という人は少ないはずです。礼服は「冠婚葬祭の場に必要な買い物である」という使い道がはっきりしているし、実際にいつか必ず必要になるものです。「これを使って何をどうするか」という点が見えていると、買っても後悔しにくいですね。

菅原さん
しげるさん

買ったものを使ってどうするかの目的が詰められているかどうかが大事なんですね。

その物欲に「ストーリー」はあるか?先生にガチ相談してみた

しげるさんが狙っているオモチャをイメージできるイラスト。買うべきか?買わないべきか?悩んでいる様子

しげるさん

…ちょっとこれはマジで相談なんですが、今買おうかどうか迷ってるオモチャがあるんですよ。

はい。どんなオモチャですか?

菅原さん
しげるさん

オモチャやプラモデル、特に大人向けのハイターゲットトイって、製造用の金型をひとつ作ったら色を変えたりマイナーチェンジを加えたりして、バリエーションを複数種類作ることが多いんです。

はい。

菅原さん
しげるさん

で、自分がもうすでに一個持っているオモチャのバリエーション商品が今度発売されるんです。

しげるさん

でも、それの値段が数万円単位と、そこそこするんですよ。似たようなものはもうすでに持っているし、それで頻繁に遊ぶかと言われたらそこまででもないんですけど…。

しげるさん

ネットの予約ページの画像を見ているとやっぱりカッコよくて…。

しげるさん

さらに言うと最近の大人向けのオモチャやフィギュアって受注生産に近くて、予約期間中に押さえておかないと後から入手しづらかったりするんです。

しげるさん

そんなタイムリミットが設定されているというのもあって、今予約するべきか、それともスルーするべきか…、もうここしばらくずっと悩んでるんです(ここまでオタク特有の早口)。

PCで検索している菅原先生

オモチャの詳細をPCで一緒に見ながら、話を聞いてくれる先生

な、なるほど…。まあ基本的には、それが自分の人生においてどのくらい役にたつか考えたほうがいいでしょうね。

菅原さん
しげるさん

人生…重いな…。

先ほどの繰り返しになりますが、物欲は悪いものではないですし、欲しいものがあるなら買ったほうがいいんです。ただ、再生産されないというのはその通りだと思うんですけど、もっと欲しい物が後から出るのでは?という懸念はありますよね。

菅原さん
しげるさん

確かに、そうですね…。

後悔しないかどうかは、先ほど話した「礼服を買う」みたいな感覚に落とし込めるかどうかにかかっています。要するに、欲しい物について「これを使って何をどうするか」というストーリーを組み立てられるかどうかです。

菅原さん
しげるさん

ストーリーですか?

「そのオモチャで、どういう遊び方でどれくらいの期間遊びたいのか」とか「そのオモチャは、こういう理由で仕事の役に立つ」とか。なんでもいいんですけど、とにかく人に説明できるようなストーリーを組み立てられるかが大事です。

菅原さん
しげるさん

普段そこまで考えているかと言われたら、なかなかできてないですね。その視点を持つことで、なんか物欲が多少は制御できるような気がします。

ストーリーの共有が、パートナーとのトラブルも防ぐ!

しげるさんは、オモチャを買って奥様に怒られたことはありますか?

菅原さん
しげるさん

今のところは、あまりないですね。今後は分からないのですが…。

高い買い物をしてパートナーに怒られた経験がある、という方も多いと思います。その時に、もしストーリーがあれば、ちゃんと買った理由を説明できますよね。それで相手が納得するかどうかは別ですが、絶対にストーリーはあったほうがいいと思います。

菅原さん
しげるさん

なるほど~!

自分一人のものだけではなくて、物を買うためのストーリーをパートナーと事前に共有するのも大切なことです。

菅原さん
しげるさん

2人分のストーリーを作ってしまうわけですか。

「物を買って、パートナーが不満を持つ」という状況は、大きいことを言えば「2人がどういう人生を歩みたいか」というビジョンがないから発生していることだと思うんです。独立採算制のパートナーシップというのもありうるとは思うんですが、そうしたくても難しい場合もたくさんありますよね。

菅原さん
しげるさん

まあ、完全に家計を分けるのもそれはそれで大変かも。

しげるさんの場合なら、「ライターとしての仕事につながるならば、一個〇〇万円までならオモチャやプラモデルを買っていい」「こういう用途に使うものだったら遠慮せずに買っていい」みたいな基準となるストーリーを話し合って決めておくとか。

菅原さん
しげるさん

あ~、そこが先に決まってると、お互い買い物する時に変な遠慮やトラブルがなくなるかもしれないですね。

「それ、いるの!?」はNG!パートナーと同じ目線で話し合おう!

相手の目線に立って話をしている成功例とNG例を並べてイラスト化

しげるさん

ここまでの話をまとめると、物を買う場合はその物で何をどうするのかというストーリーを考えて、それが思いつかない場合は冷静になった方がいい。そして、パートナーがその買い物に不満を持ちそうな場合は、そのストーリーを共有できるよう努力した方がいい…ということですね。

そうですね。まあ、人の気持ちというのはやっぱりわからないものですが。

菅原さん
しげるさん

ぶっちゃけましたね。

他人の物欲の強弱とか、なんでそれが欲しいのかというのは自分以外はまずわからない。それを無理やりわかろうとするから不毛なのであって、わからないなりに尊重したり共感したりすることが大切なんだと思います。

菅原さん
しげるさん

まあ、わかるわけがないですよね。わかってるつもりだと逆に揉めそう。

だからパートナーに対して「本当にその買い物、必要!?」と思った時は、やんわりとストーリーを聞いてみてもいいかもしれません。「それ、いるの?」って一刀両断にするよりは「別に買ってもいいんだけど、いつ使うつもりなのか聞いてみたくて…」くらいの感じで。

菅原さん
しげるさん

(そういえば…、オモチャを買うかどうか相談した時に、先生は同じ目線に立って話を聞いてくれていたな…)

とにかく相手の価値観を尊重しないと、人間の行動変容なんて変えられませんから。

菅原さん

「モノより思い出」は、損をした気持ちになりにくい!

あと、同じお金を使うなら、物よりも体験にお金を使った方が損をした気分になりにくいというのもあります。

菅原さん
しげるさん

え、そうなんですか?

例えば、旅行や英会話教室のように体験にお金を払う場合は自分にとって実になるかどうかがわかりやすいですよね。もし「やらなければよかった」と思っても、次はそれを避けることができるから、将来のために経験を役立てやすい。

菅原さん
しげるさん

ははあ。確かに自分はめちゃくちゃ出不精なんですが、妻に引っ張られて旅行に出かけた後で「やっぱり行かなきゃよかった」って思ったことはないですね。

旅行は後から考えるとだいたい「面白かったな」って思いますし、つまらなかったとしてもずっと「ひどい損をしたなあ」と感じにくいですよね。

菅原さん
しげるさん

物欲の話を聞くつもりだったんですが、なんだか夫婦関係のアドバイスまでいただいてしまいましたね…。今日はありがとうございました。

納得のいく買い物で、ストーリーのある人生を送ろう

というわけで、菅原先生のお話でなんとなく「趣味の買い物をする時のコツ」がわかったような気がします。物欲は悪いものではないし、うまくストーリーに組み込めれば、パートナーと揉めずに楽しく生活していけそうかも。

ちなみに菅原先生から聞いた「どうせお金を使うなら、体験に使ったほうがいい」という話を旅行好きの妻にしたら、「だから言ったじゃ〜ん」と言われました。おっしゃる通りですね、ハイ。体験の方が後から無駄だと思いにくいというのは確かにわかるので、そういったお金の使い方は今までよりもっと積極的に検討してもいいかも。

また、菅原先生に相談した「そこそこお値段がするオモチャ」の件を、ストーリーを意識しつつ妻に話してみたのですが、そもそもやっぱり自分でも「う~ん、これって別に今すぐ買わなくてもいいのかな…?」という疑問が発生したため、今回は一旦スルーすることに決定しました。

まあ、似たようなものはすでに一個持ってるし、ここで我慢しとけば今度完全新規の高額アイテムをサッと買えるかもしれないし。なにより「無理やり我慢させられた!」みたいな理不尽な感じがしなかったのは新鮮。ちゃんと普段から話をしておけばオモチャを買うのにコソコソしなくてすむのも、精神衛生にいいな…と思った次第です。

しげるさんが最近買ったおもちゃの写真

とはいえ、このような高額ではないオモチャは衝動買いしている…(こういったおもちゃのストーリーもちゃんと決めておきたい。と思う今日この頃です…)

というわけで、うまく物欲のメカニズムを意識しつつパートナーとストーリーを共有すれば、気持ちよく買い物を楽しめそう。趣味も家族も大切にしたいなら、ちょっと脳の働きに気を使ってみるのもいいかもしれません。

夫婦円満のコツ

編集:ノオト
イラスト:大窪史乃

・当記事に掲載の情報は、執筆者、取材対象者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。

この記事を書いた人

しげる

しげる

1987年岐阜県生まれ。プラモデル、アメリカや日本のオモチャ、制作費がたくさんかかっている映画、鉄砲を撃つテレビゲームなどを愛好するフリーライター。X(旧Twitter)は@gerusea

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