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子どもとの「ラン活」を通じて「ものを大切にする心」を学んだ話

子どもとの「ラン活」を通じて「ものを大切にする心」を学んだ話

4月から娘が小学生になるイラストレーターの原あいみさん。1年前のラン活(ランドセルを選ぶ活動)で、親子ともに満足するランドセルに出会えました。入学目前、ランドセルメーカーの職人さんに作り手の想いや文化について聞くと、ランドセルを通して「ものを大切に使うこと」の意味を考えるきっかけになりました。

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ラン活はやっぱり特別な経験でした

こんにちは、イラストレーターの原あいみです。この春から、娘がついに小学生になります。私が子どものランドセルを選び始めたのは、昨年の4月ごろ。周りのママ友から「もう買ったよ」という声を聞き、焦って始めたのでした。

ここ数年、小学校入学を控えた子を持つパパママがランドセルを購入するための一連の行動を「ラン活(ランドセル活動の略)」なんて言うんですよ。私も去年知りました(笑)

我が家では、ピンク大好きの娘が、6年間飽きずに使えるものをちゃんと選べるように、まずは私が一次審査を実施。コロナの影響で実際の店舗には行けなかったのですが、ランドセルメーカー各社のHPや動画などをしっかりチェックした上で取り寄せた資料を娘に見せました。

子どもと一緒にランドセルを選んでいる原さん

娘は目移りすることなく「これがいい!」と一つのランドセルを選んでくれたので、すんなりと親子ともにお気に入りのランドセルを購入することができました。

ランドセルが届いたのは昨年の夏頃。

娘にサプライズでプレゼントするため、一旦クローゼットの奥に隠しておいたのですが…。数日後には、ランドセルが届いていることが娘にバレて、サプライズ演出はオジャンに。(はしゃいで傷つけたりしないように、できれば冬まで隠しておきたかった…)

そして、今年の1月には入学説明会があり、本人もいよいよ小学校への憧れムードでいっぱい!せっかくなので、まだピカピカのランドセルを出して、さらに気持ちを盛り上げることに。

娘と一緒に学校生活で必要な道具をランドセルにつめてみると、私が使っていた昔のランドセルよりかなり進化していることを発見!上から力をかけても潰れないし、肩ベルトの動きもとってもスムーズ!もちろんカタログでは確認していたけど、実際に触れたら「一体、どんな経緯があってこのような進化を遂げてきたのだろう?」と、どんどん気になってきました。

ラン活中は深く知ることができなかったランドセルの歴史、作り手の想いも、もっと知りたい…ということで、娘と一緒に選んだランドセルを販売している「池田屋」さんに、オンラインでお話を伺うことに。

池田 篤紀さんと池田将人さんの写真

右:池田 篤紀(いけだ あつのり)
カタログ制作・HP制作・各種広告・SNSなどのプロモーション企画、販売戦略を担当。

左:池田 将人(いけだ まさと)
店舗事業部。実働部隊のとりまとめ、静岡店の店長。工場でランドセル製造に携わったことも。

130年以上続くランドセルの歴史は日本独自の文化!

原さん

はじめまして!実は娘が迷わず選んだランドセルは「池田屋」さんのものなんです。今日はお話を伺えるのを楽しみにしていました。

なんと!ありがとうございます!

あつのりさん
原さん

早速なんですが、日本でランドセルが普及したのはいつ頃からなんでしょうか?

ランドセルは明治18年、学習院初等科が発祥といわれています。

まさとさん
原さん

そんな昔から…。130年以上も、子どもたちの学校生活を支えているんですね!

その時に採用されたのが、背負って両手を自由に使えることができる軍隊用の「背のう」。背のうは、オランダ語で"ランセル"と呼ばれていたことから、"ランドセル"という言葉が生まれたそうです。

あつのりさん
原さん

何かの資料で昔のランドセルを見たことがあるのですが、刺繍とか施されていてすごくゴージャスだなってびっくりしました!お金に余裕のあるお嬢さまとかが使っていたんですかね…

実は、ランドセルが導入された背景には「学びの現場に身分の差を持ち込んではいけない」という意向があったそうです。裕福な家庭の子は使用人に荷物を運ばせていたようですが、「学用品は誰もが自分で運ぶようにしよう」としたことがルーツみたいです。

まさとさん
原さん

なるほど。私がラン活をしている時に先輩ママたちから「結構重たい荷物をみんな運んでるよ!登山みたい」と聞いていました(笑)。でも、ちゃんとみんな自分で持ちましょう!という想いが、ランドセルが誕生した経緯に込められていたんですね。

通学鞄をずっと使い続けるのは日本だけ!?

原さん

ランドセルの形は、昔から同じなんですか?

形はほぼ変わらないですね。池田屋にも貴重なランドセルが残っていますよ。会長の親戚の子が使っていた、昭和初期のランドセルです。

あつのりさん
昭和初期のランドセルの写真

貴重なランドセルを見せてくれました

原さん

わ!すごーい!

肩のベルトは二本で、錠前もひねり式の金属タイプ。最近のランドセルと似ていますがサイズを比べると…

あつのりさん
現代のランドセルと昭和初期のランドセルが並んだ写真

原さん

ちっちゃい!!でも、やはりこの形が理にかなっているということなんですね。ちなみに、海外にもランドセルと同じような文化はあるのでしょうか?

入学時に通学鞄を買う文化は海外にもあるのですが、ずっと同じ鞄を使い続けるのは日本だけだと思います。

まさとさん
原さん

確かに筆箱や下敷きなど入学までに揃えておくものはたくさんあるんですけど、卒業まで使い続けているものってランドセルくらいですよね。

6年間、同じ学用品を大切にするランドセル文化は、日本の素晴らしい文化の1つです!

あつのりさん
原さん

頑丈に作られているからできることなのかもしれませんが、子どもたちの「ものを大切にする心」を育むきっかけになっているのかもしれませんね。

池田屋さんの最新ランドセルコレクション

池田屋さんの最新ランドセルコレクション(写真提供:池田屋)

細かな作業の繰り返しに込められた、ランドセル職人の想い

原さん

まさとさんは、工場での職人経験があるそうですね。ランドセルがどんな風に作られるのか、工程を教えていただけますか?

はい。大きく工程を分けると「抜き型を作る」→「型で生地を裁断する」→「各パーツを作る」→「仕上げの縫製」という流れです。

まさとさん

サイズ変更など本体のどこかに手を入れる必要がある場合は、まず工場に「型」を作ってもらいます。この「型」を完成させるまでに、実は何度もやりとりが続きます。

あつのりさん

そう、何度も差し戻しを受ける(笑)! 僕がいた工場では、パソコンではなく、線引きとペンを使った手作業で図面をひくんです。1mmでもずれると製品にならないので、かなり神経が研ぎ澄まされる作業です。

まさとさん
原さん

1mm…まさに職人技ですね。

はい。毎日向き合っていると、何かの工程で0.5mmでもズレていると、あれ?と気付くことができます。肌感覚というか、理屈じゃなくて感じ取れるんですよね。

まさとさん

型が完成して、やっと裁断作業になります。

あつのりさん

人工皮革と天然皮革(牛革など)で、工程も変わってきます。ランドセル用の人工皮革は「クラリーノ」がメジャーな素材ですが、ランドセルに適したサイズ・厚さで工場に入荷するので、非常に作業効率が良いです。一方、牛革はサイズも厚さもバラバラな上、汚れや傷のある場所を避けて裁断するので手間がかかります。

まさとさん

地味な作業が続くよね。

あつのりさん

貼って、折って、くっ付けて…という作業を繰り返し、様々なパーツを作っていきます。

まさとさん

200〜300ほどの工程が、ひたすら続く…

あつのりさん
原さん

そんなに!!でも確かに、ランドセルをよくよく見ると、色々なパーツでできていますね。

そうなんです。ランドセル工場によっては見学できる場所もありますが、そこで目にする職人さんのかっこいいシーンというのは、全体の工程のたった1割程度なんですよ。

まさとさん
ランドセル解剖図

原さん

ひと針ひと針縫っている姿を動画で見ました!そこまでにいろいろな工程を経ているんですね。すごく大変そう…。

生産コストだけを重視すれば、もう少し作業を単純化できるかもしれませんが…。たくさんの子どもたちに「いいものを届けたい!」という一心で品質にこだわったランドセル作りをしています。

あつのりさん

軽さが重視されたり、高級感のあるデザインが人気になったり、ランドセルにも流行りはあるのですが、不具合が起きることなく、子どもたちが6年間を過ごせるようなものを作ることを大切にしています!

まさとさん
原さん

そういった皆さんの想いが、地道な作業を乗り越える原動力になっているんですかね?

そうですね。ランドセルは基本的に一人一個の大切な買い物ですよね。それぞれ一度きりのランドセルとの出会いを特別なものにしたいと考えています。

あつのりさん

改良を重ね進化し続けるランドセル

原さん

池田屋さんのランドセルの場合、実際のところ、製品の改良ってどのくらいのスパンでされるんですか?

毎年どこかしら改良していますよ。

あつのりさん
原さん

え!?毎年!?それは驚きです。

デザインなど目に見えるわかりやすい改良はお客様にお伝えしますが、目に見えないけれど、部品の素材を少し変えるともっと軽くなるから、ここを変えていこうという改良ですね。

あつのりさん
原さん

改良する箇所は、どうやって決めるんですか?アンケートを参考にされているとか?

アンケートも参考にしますが、日々店頭に立っていて、お客さまからいただく「生の声」が何より貴重です。「うちの子、こんなことで困ってるんですけど…」みたいな声を聞いたら、すぐヒアリングします(笑)!

あつのりさん
原さん

なるほど。でも、私のように初めてランドセルを買う人だと、まだ不満点ってわからないんですが、生の声ってどうやって集めるんですか?

一番のチャンスは、第二子、第三子のご購入時です。お兄ちゃん、お姉ちゃんたち本人に「今、使っててどう?」と必ずその場で直接声をかけます。

あつのりさん
原さん

お客さまからの声で変えたところって、具体的にどんなところですか?

例えばサイズですね。一般的にA4サイズだったのが、多くの小学校で「クリアファイル」を使うようになり従来よりも5mmくらい大きく改良しました。

まさとさん

その後さらに「クリアファイルの上の方が折れてしまう」という声があったので、「A4フラットファイルサイズ」として、さらに5mm大きくしてカーブの具合を見直したり。

あつのりさん

あと横についている“なすかん(ふくろ掛け)”のバネも。「かけたヒモを子どもが外せない」ということがわかり、金属製ではなくナイロン樹脂製に変えました。

まさとさん
原さん

あ、ここは私も選ぶ時にチェックしました!金属製のパーツの方がかっこいいなぁと最初は思ったんですが、色々比較したら、やっぱり娘が使いやすいのが一番だから、ナイロン樹脂製の方がいいなと。

消費者のリアルな不満から試行錯誤を繰り返すイメージ

利用者の声に応えたい! 本部と職人のギボシ問題勃発!

あと、ベルトのバックルをなくしたのも、大きな改良です。

まさとさん

「バックルが脇腹に当たって痛い」という子が結構いたんです。もう14年ほど前ですが、うちはここを「ギボシ」という部品に変えました。穴を合わせてパチンとはめて連結します。

あつのりさん
原さん

あ、ほんとだ!でっぱりがない!

このギボシ式のおかげで、からだに当たったり、洋服をひっかけたりしなくなりました。

あつのりさん
他社ランドセルの留め具の写真

他社は、金属製の留め具が飛び出しているデザインが多いなか、池田屋さんは、先端が丸い金具(ギボシ)を使用している

ギボシの写真

からだや洋服に金具が当たらないのでストレスフリー

このベルト開発の話を持ってこられた時、僕はちょうど工場にいたんですが、「またやっかいな話をもってこられたなぁ」と正直感じました(笑)

まさとさん

そうそう。このギボシ式を考えたの、僕なんです♪

あつのりさん
原さん

えー!すごーい!

ギボシは一般的にねじ式なので、当時はこのギボシを「打つ」という機械すらなかったんです。

まさとさん

バックルはなくしたいけど、ねじ式ギボシでは6年間で絶対にゆるむ!よし、打っちゃおう!って(笑) 。福井県のギボシ専門工場へ行って、ギボシとびょうの合体したものを開発してもらい、機械自体も作ったんですよ。(得意げ)

あつのりさん

あのぉ、一言物申したいんですが…!その機械が完成するまで1年かかったんです。それまで全部手打ちしてたんですよ。(僕が!)

まさとさん
原さん

あつのりさんの徹底した利用者寄りの意見があったからこその改良ですね。

単価が上がったりもするんですが、でも、そこは子どもたちのリアルな声があったからこそ、この金額でもやるべきだ!と、判断ができるんですよね。

あつのりさん

結果、良いものができたと思っていますよ、僕も!

まさとさん
原さん

おふたりのバトルの様子が想像できて面白いです。そんな熱い想いからできたベルトで、うちの子の脇腹は守られるんですね。いやぁ、ありがたいです。

笑顔の原さんの写真

こういった小さな気遣いがママにはうれしいんです!!!

より快適な学校生活を!親と同じ気持ちでランドセルを作り続ける

原さん

ランドセル作りの奥深さがわかって、ますます娘が使う姿を見るのが楽しみになってきました。

昔はランドセルを買うことが、今ほどイベント化されていませんでした。しかし、ここ15年くらいで、品質に対してのお客様の目線がどんどん厳しくなっています。それもあって、ランドセルの生産現場は、うちに限らずどこも絶対に苦労して作っていると思うんです。お客さまからすれば当たり前のことですが、6年間ずっと使い続けられるランドセルは、生産現場で職人たちが日々腕を磨いている賜物です。

まさとさん

子どもたちは、ランドセル作りにそんな苦労があることは知りませんが、その子の学校生活が少しでも快適にというか、学校生活の邪魔をしないようにできたらいいなと思います。

あつのりさん
原さん

確かに子どもの意識がランドセルにむかう時は、何か不具合や違和感がある時ですもんね。子どもにとって存在が消えている方が、みなさんの仕事がうまくいっているってことですよね。

ランドセルはあくまでも主役である子どもたちの生活を“サポートする道具”です。だからランドセルメーカーや職人は、道具としての役目を6年間きちっと果たせるようにと思っていて。おこがましいかもしれませんが、お父さん、お母さんと同じ目線、同じ気持ちで物作りをしています!

あつのりさん
ランドセルとともに成長する子どものイメージ

原さん

ランドセルを生業とされているお二人が、幸せを感じる時ってどんな時ですか?

修理の際に添えてくださるお子さんからのお手紙はうれしいですね。大事にとってあります。

あつのりさん

卒業する時に、1年生の時と6年生の時と同じ場所でランドセルを背負った写真をSNSに投稿してくれたりするのを見ると、グッときます。

まさとさん
原さん

あ…それやりたいです。想像しただけで泣ける。今回お話を聞いて、長い改良の歴史と多くの方々の想いが、ランドセル1つに詰まっていることがわかりました。その想いを噛み締めて使わせていただきます!今日はありがとうございました。

ランドセルに込められた、たくさんの想いを娘に伝えてみたら…

取材をしたその日、「今日ね、ランドセルを作っている職人さんにお話を聞いたんだよ」と、早速娘に話をしてみました。

「ランドセルってすごくたくさんの部品でできているの。ほら、よく見て」

娘とランドセルをまじまじと観察。

「ほんとだー!4つくらいのぶひんでできてるとおもってた!」

1つひとつのパーツの工夫なども教えてあげると、きちんと理解して、興味深そうに聞く娘。元々、自分で選んだ物を買ってもらえたということもあり、心から気に入っている様子。

「みんなが楽しい小学校生活が送れるようにって、職人さんが一生懸命考えて、作ってくれたランドセルなんだよ。大事に使いたいね」自然とそんな会話になりました。

ランドセルを抱きしめる子ども

地道な作業を繰り返しランドセルが作られていることや、作り手の皆さんの苦労など、娘がどこまで理解できたのかはわかりませんが、私たち夫婦や祖父母の願いだけでなく、たくさんの人の想いがこのランドセルに詰まっているんだってことは伝わったんじゃないかなと思います!

それに、「ランドセルはとっても大事なもの!」という娘の気持ちがより強くなったように感じています。

小学生になったら、毎日の親の送迎がなくなり、どんどん“私の知らない娘だけの時間”が増えていきます。娘の6年間を支えてくれる頑丈なこのランドセルと共に、どうか素敵な小学校生活を送ってほしいなと、改めて感じました。

・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。

編集:ノオト

この記事を書いた人

原あいみ

原あいみ

難しいことをわかりやすく“マンガ”で伝えることが得意なイラストレーター。小学1年生の娘を持つワーママ。

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