【辛い物あるある座談会】好き派は果敢に挑戦!苦手派はおいしさより辛くなさ重視?
好みが分かれがちな「辛いもの」。好きな人とそうでない人では、普段見えている景色が全く違うのでは...?ライターのJUNERAY(ジューンレイ)さんが、辛いものについて、趣向の異なる友人ふたりとじっくり語り合ってみたところ、唐辛子は余裕でも山椒は全然ダメ...や、コンビニで悩み抜いて買った商品が辛くて失敗したことなど、旧知の仲でありながら「そんなことが(笑)」となるような一面が見えてきました。辛さに関する素朴な疑問について、味覚や嗅覚の専門家の解説とともにお送りします。
「辛いもの」について本気出して話し合ってみた!
こんにちは、ライターのJUNERAY(ジューンレイ)です。
皆さんは、辛い食べ物はお好きですか?私は大好き…と言いたいところなのですが、唐辛子のホットな辛さは平気だけど、ワサビのツンとくる辛さはちょっと苦手。
周囲の友人たちを見ていると、同じように辛さのなかでも好き嫌いがある人や、そもそも辛いもの全般が苦手!という人など、まちまちです。「辛い」という感覚は、「甘い」や「しょっぱい」などの味覚と比べて、好き嫌いがはっきり分かれているように感じます。
みんなそれぞれ、辛い食べ物についてどう思っているのでしょう?辛いものが大好きな人と苦手な人がいるのはどうして?
それぞれの感じ方や考え方を知るため、辛いものが好きな人と苦手な人に集まってもらい、座談会を開いてみることにしました!
…というわけで大学時代の友人たちに集まってもらいました。メンバーはこちら。
《佐々木さん》
辛いものは「好き」派。いろんな国の料理が好きで、唐辛子をふんだんに使ったタイ料理や、韓国料理もよく食べる。ワサビやカラシなども平気。
《久住さん》
辛いものは「苦手」派。唐辛子はもちろん、山椒やカラシなどもできれば避けたい。カレーの「辛口」のおいしさがまだよくわからない。
《JUNERAY(ジューンレイ)》
辛いものは「どちらともいえない」派。ピザやパスタにはチリソースをたっぷりかけるのに、痺れる辛さの山椒や、ツンとくるワサビやカラシが苦手。
私より鳥の方が強いってこと…?「辛味」ってナンダ?
ふたりとも久しぶり!今日は「辛いもの」について語り合うために集まってもらったよ!
は〜い!
よろしくね!
ふたりのエピソードをいろいろ聞く前に、辛いものにまつわる疑問について少し話したいのだけど…そもそも「辛味」は味覚じゃないって言わない!?
うん、味じゃなくて、痛みに近いって聞いたことある。
そうそう、私も「食べると痛いから」って理由で辛いものが苦手!火傷した時みたいな、ヒリヒリした感じになる。辛いものが好きな人も、あの痛みは感じてるの…?佐々木さんは辛いものよく食べてるよね。
確かにヒリヒリはするけど、痛くて耐えられない!って思ったことはないなあ。
同じ辛さでも、人によって感じる度合いが違うのかな?人間以外の動物では、例えば鳥は辛さを感じづらいって聞いたことがあるよ。
私より鳥の方が痛みに強いってこと?(笑)痛いものをおいしいって感じられるのはどうしてなんだろうね。
「辛い」って感覚、謎が多い!
3人の会話で出てきた素朴な疑問に、工学博士の都甲潔先生に答えていただきました。
都甲 潔(とこう きよし)
1997年九州大学大学院システム情報科学研究院教授着任。その後は一貫して同研究院に在籍し、2013年味覚・嗅覚センサ研究開発センター長に。現在は特別主幹教授ならびに特命教授。味覚を数値で表すことができる味覚センサーを世界で初めて開発し、2006年度文部科学大臣表彰・科学技術賞、2013年春の紫綬褒章など数多く受賞している。
【専門家が答える!辛さに関する素朴な疑問】
Q.辛味は味覚ではない?甘味・酸味・塩味・苦味・旨味(基本味)の感じ方と、辛味を感じる仕組みは違う?
A.辛味を感じる仕組みは基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5つ。「五味」という)とは異なります。基本味は味蕾(みらい/舌の表面などにある器官)で感知し、味覚神経を通して脳に伝わるという仕組みです。一方、辛味は痛みや温度を感じるセンサーで感知し、味覚以外の感覚を伝える神経を通して伝わります。つまり辛味は、味ではなく痛みなのです。
Q. 人間以外の動物が、辛さを感じることはある?鳥は辛味を感じないという話を聞いたのだけど、それは本当?
A.本当です。犬、マウス(ねずみ)は辛さを強く感じ、ウサギやカエルはやや弱く感じるようです。鳥に関しては、ニワトリは感じないという実験結果があります。辛味を感知する部分が犬やマウスと少し違っているんです。
Q.人間はなぜ辛いものを「おいしい」と感じる?
A.辛いものを食べると、その痛みを軽減するために脳内快感物質が分泌されます。この「辛味を感じると結果的に気持ちよくなる」という反応が繰り返されていくうちに、「おいしい」と感じるようになっていくのです。ちなみに甘味や油脂を含むものを食べた際にも同じ反応が起こります。
才能?経験値?辛いものはいつから食べられるようになるのか
佐々木さんは普段から辛いものを好んで食べてる気がするけど、実際どのくらい食べてる?
ここ最近自分が食べたものを思い返してみたんだけど…ほぼ毎日食べてた(笑)世界の郷土料理が好きで、自分でも作るんだけど、調味料として唐辛子や山椒を使うものが多くて。
辛いものって、いつから好きになるの?子どもの頃から平気だった?
子どもの頃に家で辛いものが出てた記憶はあんまりないなぁ。でも食べることそのものが大好きだから、おいしい食べ物を追求するうちに、いつの間にか食べられるようになってたよ。辛さよりもおいしさの方が勝っちゃう!(笑)
いいなあ、私も辛いものを食べ続けたら平気になるかな?
挑戦するのはいいことだけど、無理しないでね…!もしかしたら、生まれつき辛いのが得意な人と苦手な人がいるのかもしれないし。
久住さんは、うっかり辛いものを食べちゃった時はどうしてるの?
どうしようもなくて1人で静かに悶絶してる…けど、たくさんお水は飲むようにしてる!効果があるか分からないけど…。
辛いもの食べたときって、水を飲んでも口の中がずっと辛くない!?口の中に残る感じがする。
わかる!辛さを穏やかにするにはどうしたらいいんだろうね?牛乳とかヨーグルトとかと一緒に食べるといいって聞くけど、本当かな?
インドカレーのお店によくあるラッシー(ヨーグルトを使った甘いドリンク)って、辛いカレーを食べながら飲むとものすごくおいしく感じるよね。
それもすっごくわかる。毎回「ラッシーを開発してくれた人、ありがとう…」って、心の中で大感謝しながら飲んでるもん(笑)あの組み合わせを考えた人は天才!
【専門家が答える!辛さに関する素朴な疑問】
Q辛いものに対する耐性は生まれつき?後天的に身に付く場合もある?
A.先天的要素も後天的要素もあります。例えば、苦味はさまざまな生き物にとっての毒のシグナルです。人間の赤ちゃんも、苦いものは食べようとしないことが多いですよね。ですが、例えばビールが苦手だった方が、次第に飲めるようになっていくこともあります。これは、ビールを飲んで楽しい場を経験したという積み重ねによるもの。つまり、楽しい思い出が、本来苦手なものを好きにさせたということです。
辛いものにも同じことがいえます。楽しい思い出が、辛いものへの耐性を作り上げていき、しかも、先ほどの「辛いものをおいしいと感じる仕組み」でお話ししたように、辛いものは脳内快感物質の分泌を促すため、もっともっと欲しくなっていく…つまり、幸福感を生むわけですね。これが、いわゆる「やみつき」というやつです。マラソンなどの運動で気分が高揚する,いわゆる「ランナーズハイ」も同じような状態といえますね。
Q.辛さが助長される飲食物、逆に緩和される飲食物はある?
A.辛味は温度を感知するセンサーが受け取るので、熱いものを口にするとより強く辛味が感じられます。なので、辛味を緩和するにはまず、熱いものよりも冷たいものが良いでしょう。ただ、辛味成分は一般に油によく溶ける性質を持っているので、水では辛味成分を取り除くことができません。おすすめは、アイスクリーム、ラッシー、カフェラテなどの乳製品や乳飲料です。
「逃げられない」コース料理と、会社の飲み会
ところで久住さんは、辛いものが食べられなくて困ったことってある?
会社の飲み会で、自分でお店が選べない時は困るかも。特にコース料理!
実は、久住さんをご飯に誘うときは「タイ料理とか韓国料理とかは避けた方がいいのかな?」って悩んでる…!
わかる!自分が辛いもの平気だと、人をご飯に誘う時に迷うことあるよね。もしかして無理に付き合わせてないかな?って。
気を遣ってくれていたのね…!でも、誘ってくれて大丈夫だよ!相手が仲の良い友達だと、万が一辛い料理を注文しちゃっても「代わりに食べてほしい」って言えるから安心。会社の人だとそうはいかないから(笑)
なるほど。もしかして辛いのが苦手な人は、レストランでメニューを見るとき「おいしそうか」より先に「辛くなさそうか」で選ぶ必要がある?
知らないお料理が出てくるお店だとそうかも…。普段から辛そうな食べ物を避けてるから、どの料理が辛いのかがわからないんだよね。メニューに辛さレベルを書いてくれてるお店は本当に助かる!
久住さんとご飯食べに行くと、けっこうな頻度で「それって辛い?」って訊かれるんだけど、そういう理由だったのね!
15回悩んで結局失敗する「苦手派」、知らない唐辛子でも果敢に挑戦する「好き派」
コンビニのお弁当を買う時も、「これは辛さは大丈夫だろうか…」って結構考える。一見おいしそうな中華風のつけ麺があって、ずっと気になりつつ15回くらい買うのをあきらめてたんだけど、このあいだ意を決して買ってみたの。
数字が具体的だ(笑)
そしたら、すっごく辛くて!コンビニのお弁当にも辛さの目安を書いておいてほしいって思ったよ…!
15回も悩んだ末に買ったものが食べられないのは悲しすぎる…!
普段から避けてると、辛そうな料理についての知識がまったく頭に入ってこないんだよね。例えば、スーパーで明太子とタラコが並んでたら、これはどう違うんだっけ…?ってしばらく考えちゃう(笑)。赤い食べ物は辛いって先入観もあるから、余計に判断できない!
辛いものの周辺の認識だけすごく曖昧になっちゃうんだね。逆に、辛いものが好きな人って、すごく唐辛子の種類なんかに詳しくない?
世界の郷土料理のレシピ本とか、料理動画とかを見てると、「○○という種類の唐辛子を使います」ってシーンがたびたびあるんだよね。それで覚えることはあるし、専門店まで探しに行くこともある。
食べ物に対する探究心がすごい…。
唐辛子をかけまくる人でも、ひそかに寿司ネタはめくる
JUNERAYは、このあいだピザに唐辛子パウダーをかけまくってたけど、それはやっぱりおいしいからなの?
うーん、食べ物を辛くすると食欲が増す気がするんだよね。最初は普通に食べて、ちょっと味に飽きてきた頃に辛さを足すと最高!でもかけるのはチリソースとか一味とか、唐辛子だけだよ。ワサビとかほかの辛いものは苦手。
それも不思議だよね。唐辛子は大丈夫でワサビは苦手って人、結構いるきがするけど、どういうことなんだろう?同じ「辛さ」じゃないのかな?
ワサビやカラシはツンとくる感じがするよね。山椒とか花椒とかの痺れる辛さもあんまり得意じゃない…!
前に一緒に中華料理の辛い鍋食べて、麻辣(花椒と唐辛子を使った味付け)に悶絶してたもんね。食べながら途中休憩入れてた(笑)。
普段唐辛子を平気で食べてるから、自分がほかの辛さは苦手なんだって忘れがちで…お寿司を食べに行ってワサビで悶絶することもある。
このあいだ、お寿司のネタをそっとめくってワサビの量、確認してたよね(笑)
見られてた!お行儀が悪いけど、辛すぎておいしく食べられないよりかはいいかと思って…!
もしかして、私よりワサビ苦手なんじゃない?
そういえば、久住さんはワサビ入りのお寿司は食べてるよね⁉︎
唐辛子よりは、まだワサビの方が平気。ツンとくるけど香りが好きなんだよね。お寿司のワサビは、ないとちょっと物足りないなって感じる。
わかる!ワサビやカラシはあるのとないのとで全然ちがう。私も香りは好きだから、たくさん食べられるようになりたいよ…!
【識者が答える!辛さに関する素朴な疑問】
Q.唐辛子、ワサビ、花椒では、辛さを感じるメカニズムが異なる?
A.これらは全て辛味を生む成分と反応するセンサーが違います。唐辛子は舌に留まって焼けるような辛味、ワサビは揮発性で口だけでなく鼻にも抜けていく辛味、花椒は唐辛子ほど辛くなく、リモネン、シトロネラールといわれる香りの成分を含み、特有のすがすがしさを感じます。
みんなの好みが違うからこそ、いいこともあったりする
JUNERAYはカラシも苦手?
和カラシのツーンとした感じは得意じゃないかな。でも、粒マスタードは好きだよ。居酒屋で頼んだソーセージに粒マスタードがたくさんついてるとテンション上がる!
粒マスタードおいしいよね。シェアして食べるときは、いっぱい取りすぎちゃってたらごめんねって気にしながら食べてる。
そうだったの⁉︎いつも粒マスタード残して申し訳なく思ってたから、次からはふたりに全部あげるね!
需要と供給が一致した!サルサ(トマトと唐辛子を使ったソース)とかキムチとか、辛い付け合わせは気兼ねなく私たちにください(笑)
今までの分もまとめてあげられたら…(笑)好きなものが被っていないと、こういういいことも起こるんだね。
逆に、どんな料理でも挑戦できる私は、次回から「これは辛くないよ」って久住さんに伝えてあげられるし…この座談会、もっと早くやった方がよかったかも(笑)!
「辛さ」を通して、世界は広がる…かもしれない
普段から仲の良い友人たちですが、「好きな食べ物」の話をすることはあっても、「辛さの好み」について聞いてみるのは初めてだったので、とても新鮮な体験でした。
こんなに見える世界が違うのか!と驚きの連続です。お互いの好みをよく理解した今、また一緒にご飯を食べに行ったらとても楽しいだろうなと思います。
今回アドバイスをいただいた都甲先生も「楽しい場を経験したというその積み重ねで、本来苦手なものを好きになれる」と仰っていましたから、ふたりと一緒にご飯を食べていれば次第に私もワサビやカラシを克服できる…かもしれません。
皆さんも、ご家族や友人と「辛いもの」の好みについて語り合ってみてはいかがでしょうか?
編集:ノオト
撮影:栃久保誠
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、全てがライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
JUNERAY(ジューンレイ)
日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、クラフトビアアソシエーション認定ビアテイスターの元花屋。フリーライターでときどきバーテンダー。関東で夫と二人暮らし。
X(旧Twitter):https://twitter.com/_June_ray
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下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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