「このおかわり、ホントにしたい?」自分に聞くのがポイント!酒好き医師が伝授する二日酔い防止の極意
イベントごとなど、大勢で集まって楽しくワイワイ飲む日は、いつも以上にお酒が進むもの。つい飲み過ぎて翌日は二日酔い...なんてこともあるでしょう。今回は、酒場ライターのパリッコさんが、『酒好き医師が教える最高の飲み方』を監修している浅部伸一先生に、日頃から実践している二日酔いになりにくい飲み方を教えてもらいます!
はじめまして!酒場ライターのパリッコです。僕は根っからのお酒好きなのですが、加えて仕事でお酒を飲むことも多く、気がつけば久しく休肝日がとれていないな…なんてこともしばしば。そういう日々が続くのは楽しい反面、二日酔いの恐怖と隣り合わせでもあります。
そこで今回は、末長く健康にお酒と付き合うためのバイブル、『酒好き医師が教える最高の飲み方』を監修し、ご本人も大のお酒好きであるという、医師・浅部伸一先生に日頃から実践している飲み方や、二日酔い対策のポイントをお伺いします。
また、こんな機会はめったにない!ということで、僕自身の「飲み会の最中につい眠ってしまうクセ」や「二日酔いの朝、突然辛いものが食べたくなる現象」など、個人的に気になっていることも聞いてしまいます!
浅部 伸一(あさべ しんいち)
東京大学医学部卒。東大病院、虎の門病院、国立がんセンター、自治医科大学勤務を経て、2002年より、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に留学。肝炎免疫の研究に従事。帰国後、国際医療福祉大学附属病院勤務の後、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科・准教授に。現在は、自治医科大学の准教授から転じてアッヴィ合同会社に勤務。監修に『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社)。
酒場ライターのパリッコです。今日はよろしくお願いします。先生は普段どんなお酒を飲みますか?
ビールとワインと日本酒が好きです!自宅にお酒専用の冷蔵庫もあります。
専用の冷蔵庫!それはうらやましいです!
先生はとてもスマートにお酒を飲まれるイメージですが、二日酔いすることはありますか?
大昔はありましたよ。大学時代は寮に入っていたんですが、頻繁に宴会があってベロベロに酔っぱらって、起きたら外が薄暗くて、「今は朝なのか?夜なのか?」みたいなことがしょっちゅうでしたね(笑)。
なんと!一気に親近感が湧きました(笑)ちなみに最近は…?
今はちょっとしたポイントをおさえて飲んでいるので、まったくないです!
おぉ、さすがです!僕はいまだにお酒に飲まれてしまうこともしばしばで…。どうにかしてお酒の失敗を少しでも減らしたいんです。ただ、世にあふれる予防法や対処法が多すぎて、どれを信じて良いのやら……。ぜひ医師である浅部先生に、二日酔い防止のポイントを伝授していただきたいです!
わかりました(笑)もちろん、体質や体調によって個人差はありますが、少しでも参考になればうれしいです。
そもそも二日酔いってなんで起きるの?
ポイントを教えてもらう前に…。とても初歩的な質問で恐縮ですが、二日酔いとはからだの中で何が起きているのでしょうか?
実は厳密には良く分かっていないんですが、ひとつは、夜に飲んだアルコールが処理できずに体に残っている可能性があります。アルコールの代謝って、多くの人がイメージするよりもゆっくりなんですね。つまり二日酔いの原因は、処理能力以上のお酒を飲んでしまったという単純な話。
な、なるほど…。まわりを見ていると、飲むたびにひどい二日酔いに悩まされている人もいれば、たくさん飲んでも翌日平気な顔をしている人もいる気がするのですが、そこには何か差があるんでしょうか?
当然、同じ量を飲んでも人それぞれに反応が違う。これがいわゆる、なりやすい人となりにくい人の差ですね。二日酔いにならないためには、「自分の限界を超えないよう工夫するしかない」です。
あと、これは個人的な興味なのですが、僕は飲んでいる最中に顔が赤くなったり、いつの間にか眠ってしまったりすることがあります。これはなぜでしょうか?
寝てしまうのにはふたつの可能性があって、ひとつは脳の睡眠を調節する部分がアルコールの影響を受けやすいタイプなのかもしれません。
もうひとつは、アセトアルデヒドの作用。お酒を飲んだ時の反応って、もちろんアルコールの影響もあるのですが、実はそこから分解されてできたアセトアルデヒドの影響も絡んでくるんですね。眠気も典型的な症状のひとつ。お酒を飲むと顔が赤くなる人は、基本的にはお酒に弱いタイプで、人より早く寝てしまう可能性も高いです。
まさに自分がそれです! あまり強くはないのにお酒が好きなので。
飲み会の前にやっておいた方が良いことはあるの?
ここからは、具体的な二日酔い予防のポイントについてお聞きしたいのですが。まず、飲む前にやっておくべきことはありますか?朝は何を食べた方が良いとか…。
朝ごはんですか(笑)。飲み会の朝にこれを食べて!というようなものはないですが、普段から心がけておくべきことはありますよ。ビタミンB群やアミノ酸はアルコールの代謝に密接に関わっています。日頃からこれらの栄養素が不足しないようにするなどで予防ができますね。
その日に何かするのでは遅いんですね…。ちなみに、栄養を摂る方法はサプリメントなどでも良いでしょうか?
もちろん、医学的にはサプリメントに頼らないことが理想です。でも、普段の食生活の中で栄養が不足している人の場合、サプリメントに効果を感じる人もいますよ。サプリメントもうまく使うと良いですね。それから、疲れがたまっているとアルコールが分解されにくいので要注意です。
つまり…普段からバランスの良い食事を心がけて、疲れにくいからだを作っておくということが大切なんですね!
浅部先生が必ず頼むおつまみは、これだ!?
さて、続いては、お酒を飲んでいる最中にできる二日酔い予防の実践編。ですがちょっとその前に!
浅部先生はお酒が大好き!僕もお酒が大好き!…となれば、目の前にお酒がないと始まらないでしょう!…え?始まる?いやいや、まぁかたいことは良いじゃないですか。
お酒を飲み始めたら、どんなことを意識していますか?
空きっ腹で飲んでアルコールの血中濃度が一気に上がると、それだけ理性が飛びやすくなり、飲み過ぎてしまうので、最初から胃の中にちょっと消化に時間のかかるものを入れておくんです。
どんな食べ物が良いですか?コンビニのおにぎりやパンなら手軽そう。
炭水化物は消化が良すぎて、効果は低いと思います。タンパク質と脂質がバランス良く入っている食品がオススメですね。
タンパク質と脂質…。
例えば、和食なら野菜中心で少し肉もある「煮物」なんか良いですね。洋食なら「チーズ」や「ナッツ」も少量で腹持ちしますよ。カロリーが気になる人には、タンパク質が豊富かつ低カロリーな「納豆」や「枝豆」もオススメです。どれも居酒屋でよく見かけますよね。
あっ、本当だ!どれもお通しでよくみるメニューだ。二日酔い対策として、理にかなっているんですね。
あくまで「急激にアルコールの血中濃度を上げないための対策」ですので、まずはこういったメニューを少し食べておけば良い、ということですね。こればっかり食べなさい、というわけではなく(笑)。
なるほど。これならすぐ取り入れられそうです!
飲み会中に自分に問いかけよう、「そのお酒、ホントに飲みたい?」
続いて、飲んでいる最中の注意点はありますか?
お酒って1杯目が一番おいしいですよね。そのうちだんだん味がわからなくなってくる(笑)。そうなった時に、いったんお酒を飲む手を止めるのがポイントです。
でも、飲み放題だと、「できるだけ多く飲んで帰らなきゃ!」って思っちゃいます。
飲み放題は、グラスが空になったらついお酒を頼んで、結果飲み過ぎてしまうけど、おかわりを頼もうとした自分に問いかけてみてください。「この一杯、ホントに飲みたいお酒?」って。
で、できるかな…。でも、確かに、惰性でおかわりを頼んでいることって多い気がします。
ですよね。本当に飲みたいお酒だけを飲む。もしも惰性で頼んでしまっているなと感じたら、いったんウーロン茶などを挟む。すると、自然に飲む量を減らせます。それともうひとつ、水分補給も重要です。アルコールは利尿作用が強いので、飲めば飲むほど脱水症状になりやすいんです。十分な水分を摂っていれば、トイレの回数が増えるという煩雑さはあるけれども、少量とはいえ尿中にもアルコールが排泄されますしね。
適度なチェイサーを忘れずに!ということですね。
それでも二日酔いになってしまったら…
それでも二日酔いになってしまった場合にできる対策について教えてください。
ほとんどの場合はかなり強い脱水状態になっています。なので、まずは水分を摂る。水がダメなら、スポーツドリンクでも、お茶でも、味噌汁でも良い。
普段はあまり飲まないのに、そういう時に限ってコーラやサイダーなどの甘い炭酸ジュースが飲みたくなるんですが、なぜなんでしょう?
甘いものが欲しくなるのは、血糖値が低くなっているせいかもしれません。アルコールは血糖値を上げないので、朝の状態は前日に食べたもの次第。糖質をあまり摂っていなければ、かなり下がっているでしょう。そういう時は甘いものを摂るのもOKです。
なるほど、確かにチューハイやウーロンハイと塩からいおつまみばっかりのことも多いです。
ちなみに、シメにラーメンが食べたくなるのも血糖値が原因じゃないかといわれてるんです。脳は血糖値が下がるとお腹が空いたと感じるようにできているんですね。糖質を摂らずにお酒を飲んでいると、血糖値がどんどん下がっていく。それで、さんざん食べたのに、まだお腹が空いていると錯覚する(笑)。ラーメンではなく、実はおにぎり1個でも空腹は和らぐんですよ。
そうなんだ…。僕は二日酔いの時、無性に辛いラーメンとかカツカレーが食べたくなってしまうんです。あれも血糖値と関係がありますか?
血糖値の話だけだったら辛い必要はないんだけどな…(笑)。カレーの中のウコンの成分(ターメリック)が効くという説もありますが。まぁ、でも食べたくなるものは、本当に人それぞれですよ。
実際、「迎え酒」ってどうなんですか?
ためになるお話をたくさんお伺いしたあとに大変聞きづらいのですが、どうしても気になることがもうひとつだけあって…実際、「迎え酒」ってどうなんですか?
これには明確な答えがあります。やってはいけない!(笑)
ですよね!
ある程度、苦痛が和らぐように感じるんですよ。アルコールは麻酔薬の一種のようなものなので、二日酔いの不快な症状を緩和してくれる。でもそれは、あくまで先のばしにすぎないんです。
そのままもう一度酔っぱらって、うま~く二日酔いが消えているってことはないんでしょうか?
あるかもしれないけど、体には良くないのは間違いありません。医師として推奨できませんね。二日酔いの症状がつらい時は、アルコール以外の水分の力で症状をやわらげるようにしてくださいね。もしくは、胃薬や鎮痛薬を使う方が迎え酒よりもずっと良いです。
はい!肝に銘じておきます。今日はありがとうございました。
実践してみたら、とっても楽チンでした…!
この取材以来、個人的に、浅部先生によるアドバイスの数々を実践しつつ飲むようにしています。
居酒屋では、最初の1杯と同時にチーズなどを頼み、3杯に1杯くらいはソフトドリンクにしてみる。それから、今まではよく、飲み会が終わって家に帰ってから寝る前に、未練がましく1本、缶チューハイなどを飲んでしまっていたのですが、自分に「これ、ホントに飲みたいお酒?」と問いかけ、炭酸水に切り替えるようにしてみました。
すると確かに、翌日の目覚めがまったく違う!それまでは毎度だった、全身がだるくて重く、胸から胃にかけてのなんとも不快だった感覚が、ほとんどないんですよね。
これからの忘年会シーズン、読者の皆さんもぜひ試してみてくださいね。
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
編集:ノオト
撮影:小野奈那子
この記事を書いた人
パリッコ
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。著書に『酒場っ子』『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』『ほろ酔い!物産館ツアーズ』、スズキナオ氏との共著に『“よむ”お酒』『酒の穴』『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』など。
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