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木を守る「樹木医」に話を聞くと、子どもの未来を守るエコの形が見えてきた

木を守る「樹木医」に話を聞くと、子どもの未来を守るエコの形が見えてきた

「SDGs」「サステナブル」といった言葉が広く認知されるようになった昨今、自然に負荷がかからないエコな行動を心がける人や企業が増えています。ライオン株式会社でも、社内の環境保全意識を更に深めたいという思いから、「ライオン山梨の森」などの活動を展開中です。今回は樹木医(じゅもくい)の後藤瑞穂さんに、木を通して見る自然環境や普段の生活の中でもできるエコアクション、子育てと樹木医の意外な共通点などについてお話を伺いました。

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レジ袋の有料化やプラスチック製ストローの削減など、日々の暮らしの中でのエコな取り組みは近年ますます盛んに。ライオンも、「心地よく暮らすことがいつのまにかエコにつながる生活」を目指して、製品容器に再生プラスチックを使用したり、すすぎ1回で節水・節電に貢献する洗濯用洗剤の開発などを行っています。また、2006年からは水源である森林の整備を通して、社員の環境意識を高める「ライオン山梨の森」という活動にも取り組んできました。企業も人も、未来のために、身近にある自然に目を向け、環境に負荷がかからないエコな行動を心がけるようになってきています。

「ライオン山梨の森」での集合写真

「ライオン山梨の森」で森林整備を行っています。

ところで、皆さんは「身近な自然」と聞いたときに何を思い浮かべますか?都市部に暮らす人であれば、通勤途中に見かける街路樹や、公園の木々を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。実は、それらの木々の健康が守られているのは、木のお医者さんである「樹木医(じゅもくい)」さんがいるからです。

樹木医さんの活動や考えに触れることは、自然の大切さをより深く考えるきっかけになるかもしれない。そう考えたライオンのサステナビリティ推進部の島崎と、Lidea編集部は、キャリア20年のベテラン樹木医の後藤瑞穂さんにお話を伺いました。

後藤 瑞穂(ごとう みずほ)

樹木医、株式会社木風代表。2001年、熊本県初の女性樹木医となり、以来多数の樹木医療活動・環境事業を行う。子どもを対象とした環境教育活動も積極的に行い、国際ソロプチミスト玉名「女性誉賞」など数々の賞を受賞。

木の病気を治し、命を救う「樹木医」の仕事

まずは、後藤さんに「樹木医」というお仕事について教えてもらいます。具体的にどのような活動をされているのでしょうか。

後藤「樹木医とは、わかりやすく言うと“木のお医者さん”。怪我や病気をした樹木を診断・治療するのが主な仕事です。また、森林や緑地の整備・保護など、樹木や緑に関する指導を行う専門家でもあります。木は人間のように自ら移動することができませんので、具合の悪い木や森があれば、私が全国どこへでも足を運びます!」

ひと口で樹木治療といっても内容は多種多様です。庭木の移植や剪定、外来昆虫によって弱った樹木の回復、枝葉がスカスカになった御神木を適切な施肥によって蘇らせるなど、後藤さんは、木が本来持つ力を発揮できる治療活動を日々実施しています。

樹木医の後藤瑞穂さんとライオンCSV推進部の島崎の2ショット

ライオンサステナビリティ推進部の島崎(左)とLidea編集部が、後藤さん(右)にオンラインでお話を伺いました。

後藤さんが樹木医という職業を初めて知ったのは、31歳のとき。第一子出産のため里帰りしていた実家で、樹木医の教本を手にしたことがきっかけだったそうです。

後藤「父が造園業を営んでいた関係で、樹木医の資格テキストが実家にあったのです。当時、私はデザインや設計の仕事をしていてそれと重なる部分もありましたし、何より木の命を救う職業が魅力的に思えました。医師をしていた祖母の姿を見ていたため、“命を救う”仕事への憧れは幼い頃からずっとありました」

樹木の生態から土壌、遺伝子学、環境学まで、樹木医に必要な知識は多岐にわたります。それらを身につけた後藤さんは資格試験に2回挑戦し、見事合格!熊本県初の女性樹木医として認定され、樹木のCTスキャン事業を起こすなど先進的な取り組みを数多く行ってきました。

街路樹診断をしている後藤さん

東京都内で街路樹診断をしている後藤さん

後藤「木の健康状態は、切って中を見ないとわかりません。でも人間と同じで、木も切ると傷ついてしまう。なるべく傷つけずに木を診断するにはどうすればいいかを模索していくなかで、ヨーロッパに最先端の機械があると知り、日本への導入を決めました。木にも命がありますから、できるだけ傷つけずに治すことで、木と人が共存できる社会を作っていきたいです」

樹木医としての長いキャリアのなかで、後藤さんに特に印象に残っている案件を伺うと「奄美群島の加計呂麻島(かけろまじま)のデイゴ並木の治療ですね」というお答えが。

後藤「ご縁があって訪れた加計呂麻島で外来種のハチの被害で花が咲かなくなったデイゴの巨木群を見て、樹木医としてできることがあるのでは、と思い治療のために動き出しました」

ピカス腐朽診断をする後藤さん

樹木を痛めることなく樹木の内部の状態を診断する「ピカス腐朽診断」中の後藤さん

2017年から診断を開始した後藤さんは、長期にわたる治療計画を加計呂麻島役場に提案。地元の方々の協力も得られるようになり、奇跡的に事業費がついたことで、19年からは樹勢を回復させるための治療を開始しました。すると翌年には早くも治療の成果が出たそうです。

後藤2020年の春に久しぶりにたくさんの花が咲いたんです。すごく嬉しかったですね。同じ奄美群島の与論島は祖母が医師として赴任していた島でしたから、孫として不思議なご縁も感じます。そして、何より見捨てられてしまった樹木を助ける。それが自分の使命だと再確認しました」

樹木医の後藤瑞穂さんのインタビューカット

後藤さんの背景にも「加計呂麻島のデイゴ並木」が!

樹木の存在が、人間や地球環境にいかに大きな役割を果たすのか。樹木医である後藤さんはその重要性を誰よりもよく知っています。

後藤「私たちが吸っている酸素は、樹木が出しているもの。そもそも太古の海で誕生したバクテリアが光合成をするようになり、酸素が増え、地球を覆うオゾン層が生まれ、生物が進化を遂げたおかげで、私たちの生命は誕生しました。今も昔も、樹木によって人間は生かされているのではないでしょうか」

見えない力で私たちの生活を支える木々の役割

ここで、「街中で気になる木を見つけると、思わずスマホで撮影してしまう」というライオンサステナビリティ推進部の島崎から、後藤さんに質問が。

ライオンCSV推進部の島崎のインタビューカット

ライオンサステナビリティ推進部の島崎。社内外向けにサステナビリティ活動の広報や、健康な生活習慣づくりやエコ習慣づくりの啓発を担当しています。

ライオン島崎「東京に暮らす私にとって身近な樹木といえば街路樹が思い浮かびますが、街路樹には景観以外に何か意味はありますか?」

後藤「たくさんありますよ!街路樹によって日陰ができると涼しい風が通ってヒートアイランド現象が緩和されますし、葉には粉塵が付着することで大気の汚れも防げます。虫や鳥が寄ってくることで生物多様性も補われる。街路樹は都市部の生命を支えるインフラの1つといってもいいくらいです」

子育てと樹木医の共通点は、個性を見極めてサポートすること

樹木と人が共存していくためには、正しい知識を身につける必要がある。樹木医としてのそんな思いから、後藤さんは樹木の大切さがわかる子ども向け教室を開催するなど、自治体や学校からの依頼を受けて環境教育にも力を入れています。

後藤「子どもたちに木の健康を診断してもらい、専用のカルテに書いてもらう樹木医体験や、五感で楽しめるネイチャープログラムなどを提供しています。子どもは反応が素直だし、すぐに自分からいろいろ発見できるようになるから見ていて面白いですよ」

加計呂麻島の小学生との集合写真

加計呂麻島の小学校で開いた環境教育教室の様子

子どもの頃から自然に触れる機会があれば、きっと木や自然に恩返しができる大人になれるはず。後藤さんはそう考えています。

後藤「『ライオン山梨の森』は、地元の小学生や地域の方も植林などに参加できるプロジェクトだとお聞きしました。素晴らしい取り組みですよね。五感を通じて得られた自然の大切さは、大人になってもきっと残っているはずです。そういった小さな積み重ねが、人と木が共存できる社会につながっていくのだと思っています」

また、樹木医として活動しながら、子育てもこなしてきた後藤さん。親として、生活者として、毎日の行動や選択で意識していることはあるのでしょうか。

後藤「子どもに自然の大切さを伝えるためには、やはり木や緑を身近に感じてもらうことが一番。お子さんが小さいうちから、緑に触れられる機会を積極的に見つけてあげてください。近所の公園に出かけるところからでもかまいません。そういった五感を通じて体験を積み重ねていくことで、うちの息子も『木って生き物なんだ』と気づきました。当たり前に思われるかもしれませんが、実感をともなって理解できている人は多くありません」

さらに、子育てと樹木医の仕事には2つの共通点がある、と後藤さんが言います。

後藤「樹木も手厚くケアしすぎると弱くなるんですよ。水をあげすぎると根腐れするし、支柱を増やすと枝が自立しなくなる。甘やかしすぎてもダメ、過干渉になってもダメ、という点は子育てとよく似ているなと思います(笑)」

 樹木医の後藤瑞穂さんのインタビューカット

「確かに!」と盛り上がりを見せました。

もう1つの共通点は、木も人も多様な個性を持って共存している、ということ。

後藤「尾根筋(おねすじ/山頂と山頂をつなぐ連なり)には『光が好きな木』、谷筋(たにすじ/尾根と尾根の間)には『日陰を好む木』が生えます。一種類だけでは災害に弱くなりますから、多様な木が共存して初めて森や山が成り立つ。子どもも同じですよね。元気な子や慎重な子、いろんな子どもがいるほうがいい。その子の個性を見極めてサポートする。これも子育てと樹木医の共通点だと感じました」

小さなエコ行動の積み重ねが、未来を作る

最後に、後藤さん自身は樹木医、そしてひとりの母として、普段どのような視点でエコアクションに取り組んでいるのか伺いました。

後藤「私はオーガニック製品へのこだわりは特にないんです。農薬を使わないで育てる農業は本当に大変ですから、農家の方に過剰な要求をしたくない。それよりはフェアトレードかどうかを重視します。安すぎるということは、どこかでいびつな搾取が行われている可能性があるということでもあります」

日常の消耗品などを購入する際に、後藤さんが意識しているのは次の3つのポイントだそう。

後藤「適切な価格であること。詰め替えができるリユース・リサイクル商品を選ぶこと。プラスチックゴミを減らすために過剰包装は避けること。こういった小さなエコアクションなら誰でもすぐに実践できるはず。『ゴミを減らすにはどんな工夫ができる?』と親子で話し合って取り組むのもいいですね。できるところから一歩ずつ、みんなで始めていきましょう」

ライオン島崎「後藤さんがおっしゃるとおり、その3つのポイントがとても大事だと思っています。ライオンでは、原材料選びからお客さまが使用後に捨てるまでの各段階において、独自のエコ基準をクリアしたものをエコ商品と規定しており、『暮らし、まいにち、エコ。』マークを表示しています。エコ商品を選んで使っていただくだけでも、自然環境を守るアクションにつながりますので、ぜひ注目していただけたら嬉しく思います」

『暮らし、まいにち、エコ。』マーク

『暮らし、まいにち、エコ。』マーク

日常でライオンのエコ商品が使われている商品

『暮らし、まいにち、エコ。』マーク是非チェックしてください!

個人のエコアクションは、無理なくずっと続けていけることが何よりも大事。後藤さんも樹木医、母親、そしてひとりの消費者としての立場からエコ商品に賛同してくれました。

後藤「ライオンさんのような大きな企業が率先して環境問題に取り組んでくださることは、消費者にとってもすごく助かりますよね。家計に優しく、環境にも優しい。私は現場を知る樹木医ですから、その2つの軸を商品として両立させるには大変な企業努力が必要だと理解しています。ぜひ今度、ライオン山梨の森も訪問させてください」

ライオン島崎「はい、お待ちしております!親子を対象とした楽しめるイベントもいずれできたらと考えていますので、後藤先生にアドバイスいただけたら嬉しいです。今日はありがとうございました!」

後藤さんのお話を伺ってあらためて実感したのは、「樹木は私たちを生かしてくれる大切な存在」だということ。私たちと同じように生命を持つ存在として樹木を身近に感じることや、普段の暮らしから環境に配慮した製品を選ぶことは、人と自然が共生できる社会をつくるためのアクションになります。

ライオンも「心地よく暮らすことがいつのまにかエコにつながる生活」を目指し、企業としてさまざまな取り組みを実施しています。

山梨県山梨市にある「ライオン山梨の森」では、毎年、春と秋に植林や間伐などの森林整備活動を社員がボランティアや研修で行っています。CO2の吸収につながるなど具体的な成果も出ており、ハミガキ・洗剤・ハンドソープなどを主要製品とするライオンは、これからも水環境の保全に力を入れて取り組んでいきたいと考えています。

ボランティアや地域の方々との取り組んでいます!

ボランティアや地域の方々との取り組みの様子

ボランティアや地域の方々との取り組みの様子

地域の子ども達とも一緒に。

【サステナビリティな取り組みはコチラ】

豊かな自然とそれがもたらしてくれる恩恵を次の世代に手渡すために、個人で何ができるのか?企業はどんな取り組みをしているのか?それを知ることも、未来へつながるエコアクションです。それぞれの場所から、エコにつながる一歩を始めていきましょう!

編集:ノオト

この記事を書いた人

阿部花恵

阿部花恵

フリーランスの編集者・ライター。育児・教育、働きかた、ジェンダー、LGBTQ、文芸などのテーマを中心に取材・執筆・編集を手掛ける。ハフポスト日本版、東洋経済オンライン、クラシコムジャーナル、「ダ・ヴィンチ」、「AERA MOOK」シリーズなどに寄稿。構成担当の書籍は「女に生まれてモヤってる!」(ジェーン・スー、中野信子)など。

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