低気圧がしんどい!天気痛ドクターに聞く気圧変化に強い人、弱い人の違い
雨の日になると頭痛がしたり、気持ちが落ち込んだりする不調に悩む漫画家・まずりんさん。天気予報で見かける「低気圧」の文字にずっと怯えていたけれど、不調の原因はどうやら「気圧の変化」が関係しているもよう。気圧の変化に弱い人と強い人の違いは?今日はやばそう...と思った時の予防策はあるの?などの疑問を天気痛ドクター・佐藤純先生に伺いました。
低気圧に一方的にやられてばかりで、なぜ雨の日はあんなにもダルイのか根本的な原因を知ろうとしなかった私。これでは一生このままだ…そんなのイヤだ…。そこで今回は、ウェザーニュースの天気痛予報をリリースするほか、日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設した医師・佐藤純先生にお話を伺いました。
佐藤 純(さとう じゅん)
天気痛ドクター・医学博士。30年以上にわたり、気象と痛み、自律神経の関係を研究している。2005年より愛知医科大学病院・いたみセンターで日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設。2020年には株式会社ウェザーニューズと共同開発した「天気痛予報」をリリース。主な著書に『「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)、『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』(DISCOVER)などがある。天気痛を緩和する効果が期待できる「天気痛耳せん」の監修も行う。
「気圧=大気の圧力」 私たちにいつも約15トンの重さがのしかかっている!?
今日はよろしくお願いします!
よろしくお願いします。
私は普段から気圧のせいで体調が悪くなっていると感じるんですが、そもそも「気圧」って何なのか気になってきちゃって…。
なるほど。気圧というのは、簡単に言うと「空気の重さ」のことです。私たちは四方八方から空気に覆われているので、実は常に空気の重さ=気圧を感じているんですよ。低気圧の時は空気が軽くなるので、からだへの圧力が弱くなり、高気圧の時は空気が重くなるので、からだへの圧力が強まるといった具合ですね。
「空気に重さがある」なんて普段はまったく意識していなかったです。天気予報で「低気圧」「高気圧」と聞いても上空を覆っているだけの存在かと…。
気圧を重さとして体感している人って、めったにいないですよね(笑)。でも実は1平方メートルあたり、約10トンの力が掛かっているので、人のからだの表面積で計算すると男性で約16トン、女性で約14トンもの圧力を受けているんです。
とんでもない重さだ…!えっ、どうして人は気圧に押し潰されないんですか?!
人間のからだが、気圧に負けないように内側から同じだけの力で押し返しているからです。ただ、私たちのからだの形状というのは常に一定ではなく、短い間隔で膨張と収縮を繰り返しています。体内に流れる液体や気体、臓器も連動して変化しているので、気圧と同じ力で押し返せないこともあるんです。そうすると、どうしても気圧の影響を受けてしまうことは避けられないんですよね…。
そうなんだ…。とりあえず私は「気圧のせいで具合が悪い」って言いがちなんですけど、気圧って、人のからだにどんな影響を及ぼしているんですか?
「天気の変化=気圧の変化そのもの」と考えてもらえたらいいんですが、具体的には、頭痛、肩こりや首こり、めまい、腰痛といった直接的な痛み=「天気痛」という形で表れやすいですね。そのほか、だるさや気分の落ち込み、うつ症状といったメンタルに関与する不調をきたすこともあります。
そんなにたくさんの症状が…!個人的には低気圧だと調子が悪い気がしていて、SNSでも同じように言っている人が多いと思うんですが、実際はどうなんでしょう?
低気圧であっても高気圧であっても、その気圧の“状態”自体がからだに不調をきたすというのは、あまり正しい認識ではないんですよ。では何が体調に影響するかというと、気圧の“変化”なんです。なかでも、ジェットコースターのようにガクンと気圧が下がっていく時より、小さくても繰り返し上下する時に、人のからだに大きな影響を与えます。
ひぇ〜ガクンと気圧が下がる時がなんとなくやばそうなのに!
確かにそう認識している人は多いですね。でも私の患者さんの中には、天気が大きく崩れ激しい気圧変動が起こる前段階、1hPa以下の小さな変化が1日に何度も起こる「微気圧変動」の段階で、すでに調子を崩す人が少なからずいるんですよ。
…これはいいことを聞きました。ちなみに、気圧の変化がポジティブな気分にさせてくれることってないんですか?
良い質問ですね。私もそういった研究を進めているところですが、高気圧は高気圧、低気圧は低気圧としてことさらネガティブに捉える必要はないけれど、やっぱり変化という点では、人のからだにどちらかというとマイナスの影響を及ぼすことが多いというのが、現状の見解です。
気圧の変化に敏感な人は、自律神経の調整がうまくできていない!?
気圧のせいで、ときどき「神経がピリピリする」みたいな感じがするんですが、それって正しい感覚ですかね?
人によっては、気圧の変化が自律神経に影響することがありますよ。自律神経というのは、簡単にいうと「体調管理を自動で行うシステム」のことです。からだをアクティブに興奮させる「交感神経」とからだをリラックスさせる「副交感神経」が交互に優位になって、両方がうまくバランスを取りながら体調を整えてくれています。研究によると、人間や動物は晴れの日=高気圧の時には交感神経が、雨や曇りの日=低気圧の時には副交感神経が優位になるという特徴があります。
うんうん、雨の日にはあまり活動的な気分にはならないですね~。
「高気圧の時には外に出て活動をし、低気圧の時には家にこもって休息をとる」というように過ごせれば、自律神経はバランスがとりやすいんです。そうはいっても、現代人は雨や曇りの日でも休まずに活動しなくてはならないので、やはり自律神経に相当な負担をかけているんですよね。
大雨だろうと雷だろうと、仕事をしなくちゃならないのが大人…。
その通り。ただ、そうするうちに自律神経が乱れて、耳の中にある「内耳センサー」が興奮しやすくなることもわかっています。
内耳センサーってなんですか?
気圧を感知するセンサーです。感度は人それぞれ違うんですが、感度が高い人ほど気圧の変化に敏感で、症状が出やすくなります。このセンサーが興奮した状態になると、人によって交感神経を活発化させて心拍数や血圧を上げて慢性痛などを増幅させたり、反対に副交感神経を活発化させて眠気やだるさを誘発させたりすることがわかっています。
なるほど〜。内耳センサーはあまり敏感過ぎないほうがよさそうですね。過敏な人の特徴ってあるんですか?
一概には言えませんが、敏感過ぎるというのは、ある意味センサーが異常に働いているということになります。その理由として考えられるのは、耳の血行不良であったり、神経伝達がうまく作用していなかったりするということです。その状態に陥っている人の例として「スマホ首」とも呼ばれるストレートネックの人が挙げられます。背中が丸く、首と肩が前に突き出している姿勢によって首こり・肩こりが悪化し、内耳の血行が滞ってしまうんです。
姿勢の悪さからくる頭痛と「低気圧による頭痛」って別物かと思ってました!正しい姿勢がどちらの予防にもつながるんですね。むむむ、気をつけよう!
雨の日に気分が乗らない…も、気圧のせい!?
気圧による不調っていろいろありそうですが、先生が診てきた患者さんで珍しかった症状ってありますか?
私が診察した患者さんのなかには、気圧によって気を失うように眠ってしまう、からだ中に湿疹が出る、全身が痺れて動けなくなる、からだの一部が痙攣するなどといったケースがありましたね。本当に様々な症状が出るんですよ。
ちょっと怖いくらい影響が出てる人もいるんですね…。からだだけじゃなく心の面でも、落ち込みやすくなったり、不安になったりという不調って出ますよね。
先ほどお話したように、気圧変化で興奮状態の内耳センサーから様々な情報が入ってくることで、自律神経が乱れてしまうことが、心理面にネガティブな影響を及ぼす大きな原因になります。この状態が長く続くと脳がストレスを感じてしまい、天気がめまぐるしく変化するなかでは、脳の機能がうまく働かなくなってしまうこともあるんです。
えっ、脳の機能にまで影響が出てしまうんですか?!
そうなんです。ストレスを感じ続けると、自律神経が徐々に疲弊してきますよね。するといずれ破綻が起き、自律神経を司る脳の部位に機能障害が起こることもあるのです。
そこまでいく前に食い止めたいところですね…。SNSを見ていると、なんとなく若い人が気圧にやられているイメージがあるんですが、どうですかね?
年齢と直接関係はないと思います。ただ、20〜40代の人たちは、仕事のストレスを抱えがちですし、偏頭痛や緊張型頭痛などの二次的に気圧の影響を受けやすい症状を持っている人が多いんですよね。だから、症状が目立ちやすいということはあるかもしれません。
そういうことか!ちなみに気分が落ち込むタイミングって、やっぱり気圧が変動する時なんですか?
そうですね。大きな気圧変化の最中というよりは、気圧が小さくぶれているような状況で起こりやすいと思います。雨が降り出す前などは特に要注意ですね。
今日はやばそう…と思ったら、マッサージなどで対処しよう!
気圧の変化を感じたら、できるだけ早めに対策したいです!ネットで調べてみたら、「サングラスをかける」「水を30分に一度飲む」みたいなちょっと怪しげな情報が出てきたんですが、本当なんですか?
気圧、温度、湿度が原因で不調を起こす人は多いですが、なかには風、雷、強い日光などが原因となる人もいます。そう考えれば、日光を避けるためにサングラスを掛けたり、熱中症予防として30分ごとに水を飲んだりすることは、結果として天候から受ける不調を防ぐことにつながるといえるかもしれませんね。
なるほど!人によっては雷なんかも原因になるんですね…!
そうですね。とはいえ、やはり気圧の変化で体調を崩す人は多いですよ。
私もやっぱり気圧の変化が一番きついなぁ…。日常的に取り入れやすい予防策をぜひ教えてください!
ポイントは、内耳・自律神経・脳の3つにアプローチすることです。まず内耳に関しては、症状が出る前に血行を良くすることが大事です。「くるくる耳マッサージ」や「耳温熱」などを試してみて、自分に合ったものを取り入れるのがよいでしょう。私が監修した「天気痛耳せん」は耳に装着するだけなので、すごく手軽だと思います。
次に自律神経については、規則正しい日常生活を送ることで整えることができます。自律神経を乱れさせる大きな原因の1つに、夜電気を消して布団に入ってからスマートフォンを見るという行為が挙げられます。休息したいにも関わらず交感神経が活発化してストレス状態になってしまうことにつながりますので、布団に入ったらスマートフォンは見ないよう心がけましょう。
ついついスマホを見てしまいがちなので、注意しよう…。脳に関しては、どうしたら予防できるんですか?
脳については、気圧に対して自分の不調がどのように現れるのかを客観的に知ることが大切です。おすすめなのは、日記やメモをつけるなどして見える化すること。「こういう天気の時に、自分はこんな風に体調を崩すんだな」と把握することで、過剰な恐怖心や不安感をおさえることができるはずです。そうやって脳自体を落ち着かせることが、実は慢性痛などの緩和にもつながるのです。
自分の不調と向き合うことが大事なんですね。今日から取り組んでみたいと思います!ありがとうございました。
天気痛をきっかけに、もっと自分のからだに向き合おう!
・当記事に掲載の情報は、執筆者、取材対象者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
漫画&イラスト:まずりん
取材&執筆:波多野友子
編集:ノオト
この記事を書いた人
まずりん
デザイナー&マンガ家&イラスト描き。モーニング公式ウェブサイトで「独身OLのすべて」を連載し人気を博す。その他「マヌ~ルのゆうべ」「おふとりさま劇場」「イタジョ!」「そねみん」など作品多数。
X(旧Twitter):@muzzlin
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