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【マンガ】愛犬との避難訓練で見えてきた、本当に必要な避難準備と心構え

【マンガ】愛犬との避難訓練で見えてきた、本当に必要な避難準備と心構え

9月1日は「防災の日」。なんとなくの準備しかしていなかったLidea編集部員が愛犬と一緒に避難訓練に挑戦してみると、「防災グッズが重すぎる」「ペットの情報シートが埋められない」など、戸惑いがいっぱい...。そこで、ヤマザキ動物看護大学の福山貴昭先生に「本当に必要な防災グッズ」や「災害時に大切な心構え」について伺いました。

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初めての避難訓練は戸惑いの連続で…

<前編>愛犬の防災グッズについて改めて考えてみた!

<前編>愛犬の防災グッズについて改めて考えてみた!P1

<前編>愛犬の防災グッズについて改めて考えてみた!

<前編>愛犬の防災グッズについて改めて考えてみた!

<前編>愛犬の防災グッズについて改めて考えてみた!

<後編>実際に、愛犬と避難シミュレーションをしてみた!

<後編>実際に、愛犬と避難シミュレーションをしてみた!

<後編>実際に、愛犬と避難シミュレーションをしてみた!

<後編>実際に、愛犬と避難シミュレーションをしてみた!

防災グッズ選び&避難訓練のポイントを専門家に聞いてみた

今回お話を伺ったのは、「大規模災害時に被災ペットが被るリスクを軽減するための取組」をテーマに研究しているヤマザキ動物看護大学の福山貴昭先生。

危機管理学修士でもある福山先生は、被災地に足を運び、飼い主さんたちのリアルな声を聞いてきたといいます。そこで感じたのは災害時の避難における理想と現実のギャップ。そういった経験から得た知見をもとに、本当に必要な避難準備と心構えについてお話しいただきました。

福山 貴昭(ふくやま たかあき)先生

福山 貴昭(ふくやま たかあき)
ヤマザキ動物看護大学講師。危機管理学修士。動物看護の視点から犬の品種や年齢別のケア、また災害時におけるケアまで、ペットと共生するために必要な健康管理を含めたケアの重要性を研究している。

避難はスピード命!防災グッズは最低限5つあればOK!?

-- 福山先生、本日はよろしくお願いします!

はい、よろしくお願いしますね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--防災の日をきっかけに、愛犬との防災についてちゃんと考えようと思いまして、先日防災グッズを購入して、避難訓練をしてみました。

良い心掛けですね!防災グッズは、購入したらすぐに開けて、使い方を確認することが大切です。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--ペットの防災グッズってたくさん種類がたくさんありますよね。何を基準にすべきか悩みました。防災グッズを選ぶ時はどんなことを意識したら良いですか?

実際に被災地や災害現場を見たり調査したりしてきた中で、僕が出した答えは「機動性」と「機能性」です。災害時の街の崩れ方は「瓦礫に覆われていて、普通に歩くのも困難な状態」なんです。そんな中で、漫画でも困っていたように11kg以上の防災袋を持って移動できるのか?と考えると、とても現実的ではないですよね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--そうですよね。確かにあると便利な物も多いけれど、自分や家族の荷物、子どもがいる方は子どもも連れてさらにペットまで…となると、あれもこれも持っていけなさそうです。

そこで犬の防災グッズ選びで大事になってくるのが、「機動性」と「機能性」なんです。機動性は小さくて軽いこと、機能性は人間も一緒に使えたり、ひとつで何役もこなせたりすることを指します。つまり、必要なものをどれだけコンパクトにして持ち運べるかということです。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--たしかに。特にここ数年増えている水害時の避難は、スピードが大事になってきそうですよね。そうなると、最低限の防災アイテムを揃えるとしたら、具体的には何が必要になりますか?

5つのアイテムに絞ってみました。とても大切なことなのでそれぞれ説明していきますね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生
福山先生が考える最低限必要な防災アイテム

まずはリード。移動も避難所でも犬と行動を共にしないといけないのでマストアイテムです。
普段は大人しい子でも、環境の変化などでパニックになり逃げてしまうなど、災害時には飼い主の予想を超えた事態に発展してしまうことがあります。個人的には、このような非常時の場合、お散歩トレーニングなどで使用されるスリップリードタイプのリードを持っておくことをおすすめします。このタイプなら、犬が引っ張って逃げようとした時も、飼い主が犬をおさえやすいからです。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--なるほど!確かに愛犬が逃げ出してしまうのは心配です。それに、まわりの方への配慮という意味でも気をつけないといけませんね。

そうですよね。とはいえ、気をつけていても、犬が避難所で迷子になったり、逃げ出してしまったりすることも考えられます。そのような時のために、名札はできれば2つ用意してください。飼い主さんの名前と携帯電話の番号を書いたものと、何も書いていない白紙の名札です。白紙の名札には、避難時に避難先の情報を書き込みましょう。アナログな方法だと感じるかもしれませんが、マイクロチップ等だと通信環境が不安定な状況では機能しない場合もあるので、名札は必ず用意しましょう。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生
飼い主さんの名前と携帯電話の番号を書いたものと、何も書いていない白紙の名札

除菌・消臭スプレーは人にも犬にも使用できるタイプが便利です。あまり衛生状態が良いとはいえない災害時の環境や避難所生活のなかで1本あると、いろいろなシーンで使えますよね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--マルチに使える1本があると、とっても便利そうです!探してみます。

ニオイが出にくいエチケット袋は、多めに持っておきたいですね。災害時や避難所生活の困りごとのひとつに「ニオイ」があります。目は閉じればいいし、耳は耳栓がありますが、ニオイは防ぎようがないんです。不快なニオイがずっとしている状態というのは、精神的にも辛いですよね。でもニオイが出にくいエチケット袋があればゴミ捨てはもちろん、突然の人間の嘔吐や犬の排泄などの際、すぐにゴミ捨てにいけなくてもニオイが出ないので安心です。ニオイが強いドッグフードを入れておく時にも使えます。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--飼い主のマナーとして、消臭スプレーもエチケット袋も必ず用意します!当たり前のことですが、動物が苦手な方や慣れていない方への配慮も必要ですね。

消臭スプレーとエチケット袋

最後に紹介したいのは、大きめのタオル。犬がストレスを感じにくいように寝床を覆って目隠しにしたり、暑い日はタオルを広げて日陰を作ってあげたりさまざまなシーンで活躍します。吸水性や保温性の高いものなら濡れた体を拭いたり、寒い時に包んであげたりもできます。素材は起毛タイプがおすすめです。犬は横になる時には、顎の骨をダイレクトに地面に付ける生き物なので、人間が歩いた振動などが直に伝わるんです。それを防ぐためにもフカフカなものが良いですね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

すぐに持ち出せる防災グッズと、自宅に常備しておきたいグッズを分ける

--ごはんや水、軍手にケージに…と、絶対必要だと思っていたものが「最低限必要なアイテム」に入っていなくて驚きです!想像していた防災アイテムとはかなり違いましたし、数も少ないですね。

皆さんそうおっしゃいます(笑)。とくに、ごはんと水は何よりも大事だと思われがちなのですが、実はそんなことはありません。だいたい「5日分のごはんを用意しましょう」とよく聞くのですが、相当な量になりますよね。そこに水も持って犬も連れて避難するのはなかなか難しいですよね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

-- 確かに現実的じゃないかも…。では、犬の食事はどうしたら良いのでしょうか?

状況によっては、避難して落ち着いた後、家に取りに帰るという選択肢もあります。日頃から置き場所を決めておきましょう。地震も水害も被害に遭うのは1階が多いので、2階などできるだけ高い場所に用意して安全な状況になってから取りに行くと良いです。ペットシートも日頃から多めに常備しておきましょう。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--状況が落ち着くまでの間の食事はどうしたら良いですか?5日間もごはんを食べられないのはかわいそうです(涙)。

犬は、環境の変化や災害のストレスでごはんを食べられなくなったり、吐いてしまったりする子が多いんです。いつも通りのごはんが必ずしも必要とは限りません。荷物が多くてごはんも持っていけないような場合は、普段から与えているおやつを少量持っていくと良いですよ。おやつなら軽くて小さいので持ち運びしやすいし、未開封で防災グッズの中に入れておくことができるので衛生的にも安心です。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--水は、人と同じようにミネラルウォーターを飲んでも大丈夫ですか?

ミネラルウォーターに関しては、ミネラル成分のリスクを指摘する声もあります。しかし、緊急災害時には脱水リスク対策が優先です。どうしても心配な人は、最近はハンディで水を濾過できるアウトドアグッズがあるので、それを準備するのも良いと思います。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--防災グッズへの思い込みが、いろいろ間違いだったと気づきました。

防災グッズは、できれば自分でそろえるのがおすすめです。自分たちにとって必要なもの、そうでないものをしっかり判断できるからです。防災セットを購入する場合も買って安心ではなく、開封して使い方を確認しましょう。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

災害に備えて。犬のために日頃から心掛けておくべきこととは?

--防災グッズの他に、災害に備えて私たち飼い主が日頃から心掛けておきたい躾や、トレーニングはありますか?

まずは、「分離不安症(※)」の対策です。例えば、避難所から一時的に家に戻り、フードを取りに行こうとした時など、分離不安症の犬の場合、避難所に置いていけませんよね。普段から飼い主さんと離れて犬だけの時間を作ってあげるなど、訓練しておくと良いですよ。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

(※)飼い主がそばにいないことが不安のきっかけとなり、犬が問題行動を起こしたり体調が悪くなったりする症状のこと。
元々、分離不安症の要素を持っている犬は特にしっかりとしたトレーニングが必要。

--うちの犬は寝る時も一緒で、お風呂やトイレで私の姿が見えなくなるだけで落ち着かなくなるから心配です…。

あまりにひどい場合は、行動専門の獣医さんに相談するのも手です。それから、一匹で寝る習慣はつけておいたほうが良いですね。避難所では段ボールのような固い場所で寝たり生活したりするようになるので、普段からケージやクレートのような少し固めの箱に慣らしておくことは大切です。ケージは物が落ちてこない場所に設置して、犬が「ここに入れば安心」と思える空間を用意してあげましょう。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生
クレートでゆっくり休む犬

--心を鬼にして、別々に寝るようにします!

寝るまで飼い主にしつこく構われるのが犬の人生(犬生?)なんですけどね(笑)。でも、犬は見える範囲全てがテリトリーと認識してしまうこともあります。寝る時に聞こえる音や、見えるものは全部自分が対処しなきゃと感じてしまうので、実際はとてもストレスがかかります。だから、ケージに入ってタオルをかけてあげると視界が限定される分、ストレスは減るはずです。避難所対策としては、お座りや、吠えないようにする躾よりも、分離不安対策とケージに入れるようになることの方が大事です。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--小型犬、大型犬など種類によって意識すべきことはありますか?

小型犬は寒さに、大型犬は暑さに弱いです。タオルがあれば、包んであげることも、日差しを避けてあげることもできます。また、超小型犬は血糖値が下がりやすく動けなくなる可能性があるので、こまめにおやつをあげると良いでしょう。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--防災グッズ、日頃の心掛けとお聞きしてきましたが、飼い主が事前に知っておくべき「情報」にはどんなものがありますか?

自分の家や職場付近のハザードマップを調べて、「災害にどう対応すべきか」を理解しておくことが必要です。浸水、液状化、地震とさまざまなハザードマップがあるので、災害ごとにどういう行動を取らなければいけないかを考えておきましょう。それから避難場所の確認も。最寄りの避難所は、避難所マップ等で確認できます。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

実際に災害が起こってしまったら…。私たち飼い主ができること

--ここまで防災についてお聞きしてきましたが、実際に災害が起きてしまった時のことについても教えてください。災害が起きたら、どのように動くと良いでしょうか?地震や台風など、災害ごとに違いますか?

あまり違いません。基本的には、災害が発生してから被害が出るまでに時間があるものに関しては慌てずに行動しましょう。ただ地震が起きた時にまず行ってほしいことは「犬の確保」です。一般的な地震のマニュアルでは、屋内に閉じ込められないように「逃げ口を確保しましょう」といわれますが、犬を飼っている人がこれをやると、パニックになった犬が逃げてしまう可能性があります。なので、まずは犬を確保してから、逃げ口を開くという順番が適切です。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--なるほど。私たち飼い主が気を付けるべきことや、心構えを教えてください。

「心構え」というフレーズはすごく良いですね。災害って、全く同じパターンの災害は二度と起こらないんです。「全てがレアケース」というのが災害。ただ、その中で唯一共通していることがあって、それが人間の心理なんです。ちょっと聞いてみたいのですが、想定していない緊急事態に対面した時に、落ち着いて行動が取れる人は何%くらいだと思いますか?

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--うーん、40%くらいでしょうか?

10%程度しかいないと言われているんですよ。つまり、10人中9人はいわゆるパニック状態になったり、泣き叫ぶ人がいたり、動けなくなる人がいたりします。これを「失見当(しつけんとう)」といって、見当つかずの行動を取ってしまう状態を指します。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--90%!ほとんどの人が冷静な行動を取れなくなってしまうんですね。うちのワンコを守れるか、不安になってきました。

大丈夫ですよ。「失見当」を防ぐためにはその“心構え”が大切なんです。今、失見当のことを知ったから、災害時に「もしかしたら私、失見当かも。見当違いのことをしちゃうかも、しているかも」と、きっと思えますよね?

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--はい。先生の顔を思い出して、「失見当かも!」と思えると思います!

知って、心構えしておくことが何よりも大事です。飼い主がしっかりした行動を取れるからこそ、初めて犬を助けられます。助けたいものがあるなら自分が生き残って、冷静な行動をとれるように、“気持ちの準備”もしておきましょうね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--最後に、これから犬の避難訓練に取り組もうとする飼い主さんに向けて、アドバイスをお願いします。

犬にとって、避難訓練はリアルにやるほど嫌になってしまうものなので、「本格的にやり過ぎない」ことを意識すると良いと思います。例えば、僕のおすすめはレジャー感覚で行う避難訓練です。キャンプに出掛けて家以外の場所で犬と過ごしたり、車中泊をしてみたり。犬も人も、楽しみながら防災意識を高められると良いですね。

福山貴昭(ふくやま・たかあき)先生

--福山先生、今日は貴重なお話をありがとうございました!

さまざまな角度から備えて、愛犬の笑顔を守ろう!

実際に避難訓練をしたことで初めて分かったことや、想像と違ったことなど、発見が多かった今回。先生のお話からは、防災グッズはもちろん、情報や心構えという備えも大事だということを学びました。

大切な家族(犬)を守れるのは飼い主しかいません。いざという時に冷静に避難できるように、日頃から防災意識を持つことが大事ですね!また、一度で終わりではなく、定期的に防災グッズや情報を更新して、「継続して備える」ことも愛犬の未来を守ることに繋がるはず。これを機に、愛犬を守るための防災を始めてみませんか?

・当記事に掲載の情報は、執筆者、取材対象者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。

マンガ・イラスト じゅん
編集 ノオト

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