ゆず湯以外も試したい!「季節湯」アレンジ&最適な入浴法を考えてみた
子どもの日の菖蒲湯や、冬至のゆず湯など、旬の植物を湯船に浮かべる「季節湯」。四季折々の変化を楽しむものとして、古くから日本で愛されている入浴文化です。今回は、温泉オタク・ながちが、『医者が教える最強の温泉習慣』を上梓した一石 英一郎(いちいし えいいちろう)先生に季節湯の歴史や楽しみ方を学び、春夏秋冬それぞれに合わせた最適な入浴法を考えました。
はじめまして、温泉オタクのながちと申します。普段は会社員をしながら、温泉についてのあれこれをTwitterやブログで発信しています。
今まで訪れた温泉は、国内外あわせて400超。もちろん毎週毎月、温泉に行けるわけではないので、家のお風呂も大好きです。
家では、もっぱら入浴剤を使う日々。実際にある温泉地をイメージした商品、発泡するタイプなどと色々試しては「ふむふむ」「今日のはアタリだ」などとひとり呟いています。
そんな中でも、寒さの厳しい時期に入る「ゆず湯」は格別。さわやかな香りに癒やされ、いつもの入浴剤とはまた違ったスペシャル感に包まれます。
温かいお湯に浸かりながら、ふとゆず湯みたいな「季節湯」って、きっと興味深い歴史があって、種類も豊富で、なんだかいつもの入浴剤マラソンとは違う楽しい世界が広がっているのでは…?と考えました。お子さんがいる家庭は、子どもの日には「菖蒲湯」を楽しんでいるみたいですし…(インスタでよく見る)。
というわけで、今回は『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)の著者で、季節湯に詳しい一石英一郎先生にお話を伺いました。楽しい季節湯ライフ、始めたいな〜!
一石 英一郎(いちいし えいいちろう)
1965年、兵庫県生まれ。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学/予防医学センター教授。温泉入浴指導員(厚労省制定)、温泉健康指導士、抗加齢医学専門医の資格も有するなど、温泉を活用した健康増進にも精通する。
そもそも、季節湯ってなんですか?
はじめまして、温泉オタクのながちと申します。本当は温泉の話も伺いたいのですが、今日は季節湯についてお聞きしたく…。
温泉については今度改めてお話しましょう(笑)よろしくお願いします。
よろしくお願いします!早速ですが、「季節湯」に定義はあるのでしょうか。ゆずや菖蒲など、季節のものを取り入れていることは分かるのですが…。
明確な定義はなく、「季節の自然なものを湯に入れる」ことを季節湯と呼びますね。
へぇ〜!いつ頃から始まった文化なんでしょうか。
諸説ありますが、平安時代にまで遡り、空海(弘法大師)が医療用に始めたのが発祥、と伝えられています。
出た、空海。いろんな温泉地でも開湯した人物だと言われていますね。
そうですね。空海は庶民の健康に大きく貢献したスーパースターなんですよ。最初に、緑茶の葉を発酵させて作る阿波番茶を中国から導入したともいわれていて、その知恵や工夫は今の健康のあり方にも繋がっています。
その空海が発案した季節湯…。なんだか、からだに良さそう感がグッと出てきました。
季節湯で大事なのは「旬を重んじる」こと。また、季節の元気な植物から、ビタミンやミネラルを摂るという効果が期待できます。
旬ですか…!確かに、季節の植物の香りや成分を肌で感じることは、心にもからだにも良い気がします。ゆず湯や菖蒲湯以外にも季節湯は決まっているんでしょうか?
各月に季節湯があります。例えば1月は「松湯」。1年間の無事を祈る湯であり、森林浴のような豊かな香りが楽しめますね。
「桜」「どくだみ」はイメージしやすいですが、「大根」「みかん」など、身近な食べ物も使われるんですね。ゆず湯に近いイメージですか?
ゆず湯のようにまるごと入れるというよりは、葉や皮などを使って、風味を出すものですね。
なるほど!毎月楽しむのがツウですが、もうちょっと気軽に楽しめると良いですよね。スーパーで買えなさそうなものも多いし…。春夏秋冬ぐらいに分けられたら良いのにな…。
季節のものを取り入れるのが「季節湯」なので、月ごとの内容にとらわれすぎる必要はありません。アレンジしても良いと思いますよ。
そうなんですね!せっかくなので、春夏秋冬で季節湯をアレンジしてみちゃいます。一石先生にもぜひ、レシピのご感想をいただけるとうれしいです。
楽しみです。ぜひ!
というわけで、春夏秋冬のオリジナル季節湯を考えてみた
季節湯のことがよく分かったところで、Lidea編集部のみなさんと季節湯のアレンジに挑戦してみました。気軽かつ簡単で、すぐに試せるものばかりです!
入浴時の注意事項
・本記事内で紹介する季節湯のご入浴中、またはご入浴後にお肌に異常が現れた場合は使用を中止し、すぐに医師の診察を受けましょう。
・お湯に溶けない固形物は排水溝のつまりの原因となるため、排水時にはくれぐれもご注意ください。
冬:からだを芯から温める、大根×塩のなんちゃって薬草風呂
“冷えと戦う季節湯”をテーマに、2月の季節湯である「大根湯」に塩を加えました。暦の上では立春を迎えますが、2月はまだまだ冷え込みますよね。私自身とても冷え性で、手足は感覚がなくなる日もあるほど。温泉でも塩の成分が多い湯は、よく温まるといわれています。自宅で塩を入れても、近い効果を得られそう…?
一石先生ミニ講座:
古来より大根湯は、ビタミン群やミネラルが豊富で婦人病や風邪に良いとされてきました。また、塩は保温作用が期待でき、湯冷めしにくいです。
塩の温泉は「熱の湯」といわれていることを思い出して作ってみたのですが、自宅のお風呂でもある程度再現できるんですね…!
そうですね。ミネラル豊富な天然の塩を選ぶのがおすすめです。
【レシピ(※)】
・乾燥させた大根の葉 1本分
(既製品でもOK。自分で準備する場合は、大根の葉を陰干しして乾燥させ、細かく刻む)
・塩 50g
【作り方】
① 乾燥させた大根の葉を、お茶パックなどに詰める
② 詰めた大根の葉パックをお湯に浮かべて…
③ 塩を入れて…
④ 完成!
すみません。いきなり完成湯船が地味すぎてアヒルを浮かべました。大根の葉は乾燥すると香ばしくなり、高菜に近いニオイになります。実際に湯に浸してみるとダシが出てくるようで、ほんのり緑色に。塩は肌感ではほとんどわかりませんが、さっぱり汗が出て湯冷めしにくく、冬にぴったりでした。
見た目こそ「なんて素朴…!」と思いますが、実際の浴感(肌触り)は「なんちゃって薬草風呂」そのものです。
【一石先生の冬の入浴法アドバイス】
①温度:湯冷めしないように40-42℃の温かめの温度に
②入浴時間:冬場だからといって長湯は禁物。湯舟に浸かる時間は、 20分以上だと心臓に負担が掛かり脱水になりやすくなります
冬場の入浴で心配なのは脱衣所や外との温度差です。温度差が大きいと心臓や血管に負担が掛かり入浴事故にも繋がる危険があるため、脱衣所を出るときは、一枚多く羽織るなどして、対策しましょう。
春:自律神経を整える、桜リキュール×牛乳つるとろ濁り湯
環境の変化が起こりやすく、なんとなく疲れが溜まる春は、“リラックス”を最優先。4月の「桜湯」は、桜の木の樹皮を使うそうですが、今回は手軽さを重視して桜のお酒(リキュール)に。
一石先生ミニ講座:
桜の香りの成分であるクマリンには、イライラや興奮を抑える鎮静作用や抗菌作用があるといわれています。牛乳はクレオパトラも風呂に用いた伝承があり、ビタミンやミネラルを豊富に含み、保湿作用なども期待できるでしょう。
ちなみに、湯船にお酒を入れると、酔ったり肌荒れしたり…を想像してしまいますが、大丈夫ですか?
アルコール成分はほとんど揮発するので、問題ないと思います。ですが、アルコールに弱い方は気を付けたほうが良いですね。ちなみに私自身は、自宅の浴槽に3Lのビールを入れて「ビール風呂」をしたことがありますが、まったく酔いませんでした(笑)
先生のエピソード、濃い…。
【レシピ】
・桜リキュール 500ml
・牛乳 500ml
・桜の塩漬け 適量
【作り方】
① 桜のリキュールを入れて
② 牛乳を入れて
③ しっかりかき混ぜて
④ 桜の塩漬けは飾り程度に(たくさん入れる場合はお茶パックに詰めて)
⑤ 完成!
かわいいし華やか。ラベンダー色の濁り湯に仕上がるので、見た目がとにかく最高です。牛乳の独特なニオイが心配でしたが、まったく問題なし。むしろ、甘いニオイで心もほぐれます。つるつると滑らかな浴感で、“牛乳風呂”の心地良さに驚きました。
ちなみに、桜の塩漬けは重いのでお湯には浮かびません。お湯に入れる時はパックに入れることを忘れずに(後処理大変なので!)。
【一石先生の春の入浴法アドバイス】
① 温度:リラックス効果が期待できる、37-39℃のややぬるめのお湯で
② 入浴時間:湯船に浸かる時間は、標準的な10分前後がおすすめ
牛乳に含まれるカゼインにアレルギーがあるお子さんはかゆみや炎症を起こす可能性があります。アルコールを使用するため、お酒が弱い方、お子さん、妊婦の方は気を付けましょう。浴室の明かりを落とすことで副交感神経がより優位になり、リラックス効果が期待できます。ただし春眠暁を覚えず、浴槽内で寝落ちしないよう注意!
夏:さっぱり爽やか!ハッカ×重曹でできる、楽チン清涼の湯
夏の入浴はシャワーで済ましがちですが、時には溜まった疲れをお風呂でさっぱり流したいですよね。8月の「薄荷(ハッカ)湯」にプラスしてもう少し“さっぱり”を演出できないか…と考えたところ、パッと浮かんだのは重曹。温泉にも重曹泉という泉質があり、湯上がりさっぱりだといわれているので、応用できないか相談してみました。
一石先生ミニ講座:
ハッカの効果は、清涼感、鎮静作用、抗菌作用、抗炎症作用など様々です。重曹の作用も皮膚表面からの水分の発散が盛んになり、体温が放散され清涼を感じるために「冷えの湯」「清涼の湯」ともいわれます。
温泉の知識が、また季節湯でも生きるとは…!
毎日温泉に行くのは難しい方もいらっしゃると思います。これらのレシピを使って、ある程度家で再現できるとうれしいですよね。
【レシピ】
・ミント 両手いっぱい程度
・重曹 15g
【作り方】
① ミントに約2Lの熱湯をかけて蓋をし、15分ほど蒸らします
② そのまま湯船にドボン
③ 重曹を入れてかき混ぜ、完成!
見た目は清涼感でいっぱいですが、からだにミントがくっつき後処理が大変なので(笑)、パックに入れて蒸らすのが無難です。また「わざわざ蒸らさなくても、湯船に入れたらじんわりエキスが染み出てくるのでは…?」と思いますが、香りや清涼感は段違いに蒸らした方が◎。イメージ通り、スースーなひんやり湯で、ほんのり緑色。
重曹は浴感ではほとんどわかりませんが、湯上がりのさっぱり感で気付けるはず。肌をなめらかにする作用があるといわれているので、保湿ケアもしっかりしてくださいね。
【一石先生の夏の入浴法アドバイス】
① 温度:のぼせにくくリラックス効果が期待できるややぬるめの37-39℃がおすすめ
② 入浴時間:3分は肩までしっかり浸かり一旦上がってクールダウンすることを3セットほど繰り返すのが良いでしょう
重曹は、冷たい水には溶けにくいのでお湯で溶かしましょう。また追い焚きにより重曹が配管を傷めてしまう可能性もあり、注意が必要です。敏感肌の方は、刺激性を感じるかもしれません。重曹が多く含まれる重曹泉は、昔より筋肉痛や関節痛に効果があるといわれていて、入浴中に筋肉や関節を軽くストレッチすることで、疲れた筋肉の血流促進や、抗炎症効果を含めて筋関節痛に有効でしょう。
秋:夏を乗り切った肌をいたわる、みかん×米のとぎ汁のうるおい湯
紫外線を浴びた夏を乗り越え、急に寒くなってきたと思ったら肌カサカサ…!と絶望を感じる秋。お疲れ気味の肌をいたわる季節湯がないかと考え、11月の「みかん湯」に米のとぎ汁をかけ合わせてみました。
一石先生ミニ講座:
みかんの皮に含まれる成分は、夏の紫外線で酸化した肌にも効果的でしょう。特に、新米のとぎ汁はビタミンCやビタミンB群、ビタミンEなどを豊富に含むため、アンチエイジングにも良いといえます。
お米系のコスメがたくさんあるので、とぎ汁って実は美容効果が期待できるのでは…と無邪気に考えてみたのですが、やはり良いのですね!
とぎ汁にはセラミドなどの保湿成分やピテラという美容成分も含まれています。これらの相加相乗作用で、お疲れ気味の肌を労れるのではないでしょうか。
良かった〜!うち無洗米なので、ちゃんととぎ汁出てくるやつ買ってみます(笑)
【レシピ】
・陰干しして乾燥させたみかんの皮 20個分
・米のとぎ汁 1L
【作り方】
① 乾燥させたみかんの皮を、お茶パックに詰めます。良いニオイ!
② たっぷり湯に浮かべて…
③ とぎ汁を入れて…
④ 完成!
あまり写真ではわかりませんが、みかんの皮からじゅわじゅわオレンジ色が染み出してきて、とぎ汁と混ざることで、黄色がかった白濁湯になります。みかんの甘く新鮮な香りがお風呂場いっぱいに広がって、幸せな気持ちに。皮を乾燥させるのがやや手間ですが、電子レンジを使えば簡単に水分を飛ばせます。ゆず湯に近い浴感と香りで、春夏秋冬の中では一番ハードルが低そう。とぎ汁効果で、なんとな〜〜〜くなめらかな肌感な気がします。
【一石先生の秋の入浴法アドバイス】
① 温度:標準的かやや温まる40-42℃前後に。夏に紫外線でダメージを受けた肌に新陳代謝が期待できます
② 入浴時間:標準的な10分前後がおすすめ
肌を労るためにも、石けんの使い過ぎや長湯により、セラミドなどの皮脂や保湿成分が洗い流され、カサカサ肌にならないよう注意しましょう。お米表面のゴミや汚れを落とした後の2回目以降のとぎ汁がおすすめです。ちなみに、とぎ汁でまれに接触性蕁麻疹が報告されていますので、かゆみや発赤をともなう場合は注意が必要です。
入浴剤とは一味違う、季節湯の魅力
4種類のオリジナル季節湯を作っている最中は、Lidea編集部スタッフと一緒に「とっても良いニオイ!」「これおもしろい〜!」と終始大盛り上がりでした。
アレンジ材料として加えた「牛乳」や「とぎ汁」なども、思った以上に浴感が気持ち良かったり、見た目が良くなったりして…。様々な効果が期待できることも教わり、よりハッピーな気持ちでお風呂を楽しめるようになりました。ほんのちょっとの手間で、いつもとは違う入浴体験ができるのが、季節湯なんだなぁ…!としみじみ。
昔から春に桜を見たり、季節の歌を詠んだり、紅葉を愛でたりする文化のある日本。古くから伝わる季節湯を通して、その一端を味わえたような気分にもなりました。
季節湯最高におもしろかった〜!一石先生、ありがとうございました!
※ レシピ分量は、一般的な家庭の浴槽の大きさ(160~200L)を想定しています
編集:ノオト
撮影:栃久保誠
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
ながち
温泉オタクな会社員。
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下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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