『泡のように儚い』のイメージは正しい?漫画家が新たな泡の表現に挑んだら
洗顔料やボディソープ、ビールなど、私たちの身近に溢れているたくさんの「泡」。すぐに消えてしまう、どこか儚いイメージの泡ですが、本当にそうなのでしょうか?漫画家・中憲人さんが、泡の専門家・ライオンの先進解析科学研究所の柿澤所長にお話を伺うと、意外な泡の強さや驚きの性質が明らかに!中さんの泡を使った漫画表現の幅が広がりました!
物語でよく見る表現『泡のように儚く消えてゆく…』というイメージは正しいの?
もっと泡のことが知りたい…。ということで、柿澤所長にさらに詳しく話を聞くことになりました。
泡に必須な界面活性剤とは?
所長!今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。では、そもそも泡って何?というところから簡単に説明しましょう。
ありがとうございます!文系なのでお手柔らかにお願いします!
一言で言うと、泡は「気体が液体に包まれて丸くなったもの」です。一番わかりやすいのは、シャボン玉ですね。
シャボン玉…懐かしい!
シャボン玉って、「界面活性剤」と「水」でできた薄い膜(液体)が、真ん中の空気を包みこんでいるんです。イメージするとこんな感じ!
ちなみに、この膜は約0.002mm以下ととっても薄いんです。髪の毛の1/50くらい。
全然想像つかないくらい薄いことはわかりました。
界面活性剤は、水と混ざり合わないもの同士を混ざるようにしてくれる役割を担っていて、泡を語る上で絶対に欠かせない存在なんです!ちなみに、中さんは餃子ってお好きですか?タレは何をつけますか?
えっ、餃子は大好きです!醤油と酢とラー油を混ぜたタレで食べますね。
中さんのタレは、醤油が「水分」、ラー油が「油分」なんですね。性質が異なるこの2つだけを混ぜ合わせても、うまく混ざりません。実はここに酢が加わることで乳化(混ざり合わないもの同士が均一に分散している状態)が起こって、おいしいタレができあがるんです!
すごくわかりやすい!
泡でいうと、「空気」と「水」もそれだけでは一緒にいることができず分離してしまうのです。でも、界面活性剤が加わることによって、泡でいることができます。
なるほど。じゃあ、もしかしてこんな例えってありですか?今日は漫画家として、いろいろな泡の表現の可能性を知りたいと思っているので、ぜひご意見いただきたいです。
そう!まさにこんな感じです!
やった〜。なんかうれしいです。
泡に爪楊枝を刺したら、どうなる?
せっかくなので、もう少し界面活性剤の話をさせてください。水の中にストローを入れて、息を吹き込むとどうなりますか?
ブクブクと空気が浮き上がってくる…?
そう!でも、界面活性剤が含まれていない水の泡は、パッと消えてしまいます。これは、水と空気の境界において、水が表面を小さくしようとする性質のためなんです。
じゃあ、界面活性剤が入っている水だと…?
ストローから出た空気の周りに、すぐに界面活性剤が集まってきます。それらが、そのまま水面に上がって、表面にあった界面活性剤とサンドイッチするような膜になるので、泡は消えることなくどんどん積み上がっていきます!表面を小さくしようとする水と、水と空気をなじませるようとする界面活性剤がせめぎ合って、バランスをとることで泡が保たれているんです。
泡って、手で触れるとパッと消えてしまうじゃないですか。とても儚いイメージだったけど、実はいろんな力で支え合っているんですね。
ふふふ。さっき泡の代表例としてシャボン玉を挙げましたが、シャボン玉に爪楊枝を刺したことはありますか?
えっ、ないです!爪楊枝なんて鋭いもので刺したら割れるんじゃ…?
実験してみましょう!
すごい!割れないんですね!
爪楊枝が刺さった部分は、界面活性剤が一時的に薄くなってしまいます。でも、すぐに他の界面活性剤が補助で集まってきてくれると割れずに安定した泡になる。泡って意外と丈夫なんですよ。中さんもぜひやってみてください。水やシャボン液でちょっと爪楊枝をぬらしておくのがコツですよ。
ぜんぜん儚くない(笑)。もはや強い!!じゃあ、もしかしてこんな例えってありですか?
経営者のセリフですね!長年泡について研究してきた私も想像していなかったです。今日は話しがいがあります!
おいしい!あったかい!を支えてくれている意外な泡たち
実際に私たちの身近にある泡には、どんな役割があるんでしょうか?
例えば、泡があるおいしい飲み物といえば?
ビール!
そう!ビールっておいしいですよね。そもそもビールの泡は、液体に溶け込んでいた炭酸ガス。この炭酸ガスの泡がビールの上にあることで、空気中の酸素に触れて味が落ちるのを防いでくれています。あと泡に苦味成分が取り込まれるので、ビール自体をマイルドに味わえるというメリットも。
知らなかったです!ちなみに泡があることでおいしい食べ物もあるんですか?
エアインチョコは気泡があるからこそ、なめらかな口溶けになります。生クリームやケーキのスポンジは、泡が集まった空気の層がふわふわしているからおいしいんですよね〜。
泡って、実はさりげなく私たちのおいしいを支えてくれているんだ…。
あと、温度を保つのも泡の特徴です。発泡スチロールを切ると断面にたくさん穴が開いているのですが、実はアレも泡の一種なんですよ。
そういえば、発「泡」スチロールって書くくらいですもんね。
発泡スチロールには、たくさんの小さな気泡がありますが、気泡内の空気は熱が伝わるのが遅く、熱が伝わりやすいスチロール(スチレン)樹脂の体積も少なくなるので、温度を保つことができるんですね。
なるほど〜。
肌を守りながら、汚れをしっかり吸着してくれる泡
我々ライオンの製品も、衣類や住まい、食器、からだなど様々な汚れに合わせて最適な界面活性剤を選んでいるんですよ。
そういえば、泡で出てくるハンドソープって便利ですよね。容器に入っている中身は液体なのに、なぜポンプを押すと泡になっているんですか?
あれは容器に秘密があって、ストローみたいなもので吸いこんだ液体をポンプ部分で空気と混合する仕組みになっているんです。そこにすごく小さな網(あみ)があって、そこを混ざった液体と空気が通る時に小さいシャボン玉がいっぱいできてくるイメージといいますか。
ただ液体を薄めて泡にしているわけではないんですね。
成分は濃いまま、それをいかにきめ細かい泡を作り、かつポンプを押しやすくするかというところに製品の工夫があるんですよ。泡は液体よりも肌の上で広げやすく、摩擦が少なく、さらにごしごし洗わなくても自然に泡と泡の間に汚れが吸い込まれていくんです。
私みたいにチャチャっと水だけ流して手を洗った気になっている人はもちろん、小さな手のお子さんや指が広げにくい高齢の人にも親切ですね!
はい。泡は洗い残しがちな指先や爪、指と指の間、手首の汚れも肌から浮き上がらせてくれます。
それを聞くと、泡のハンドソープを使った方がいいかなと思っちゃいますね
ちなみに、手洗いだけなくからだもキメ細かくて弾力のある泡で洗うメリットがあるんですよ。
たっぷりの泡に包まれるとなんかそれだけで幸せな気持ちになりますよね。なんだか守られている気になるっていうか。どんなメリットがあるのでしょうか?
からだを洗う時に、ナイロンタオルやブラシを使ってゴシゴシこすると肌の表面を覆っている角層が剥がれて肌の水分が流出して、肌はどんどん乾燥してしまいます。でも、しっかり泡があればクッションとなり、摩擦を抑えてくれるんです。
でも、ボディソープって泡立てるのが結構大変ですよね。
最近は、泡で出てくるタイプのボディソープ「ハダカラ」がありますよ。
知りませんでした!
手で泡立てると、どうしてもサイズが不均一な泡になってしまうけれど、泡で出てくるタイプなら「一つ一つのサイズが細かく均一で弾力のある泡」を作り出せます。
今日は泡の意外な一面を知れておもしろかったです!ありがとうございました。これからの漫画制作にこっそり忍ばせます!
これからも暮らしの中にある、いろいろな泡にぜひ注目してくださいね。
いつもの泡がなんだか愛おしくなった…
柿澤さんに教えてもらった泡の世界。まだまだほんの入り口なんだろうけれど、身近な泡が自分を守ってくれていることがわかり、なんだか愛おしくなりました!漫画表現の幅も広がりそうだし、これからも頼むぞ、泡!
マンガ・イラスト:中憲人
執筆:Lidea編集部
編集:ノオト
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柿澤 恭史(かきざわ やすし)
ライオン株式会社研究開発本部・先進解析科学研究所長。高校生の時に界面活性剤に興味を抱き、大学院で界面科学を専攻。入社後は、シャンプーやハンドソープ・ボディソープの開発に携わり泡や使用感を研究。現在は基盤研究を担当し、製品開発に関わる新技術を開発している。
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