
普段の心がけや、向き合い方を伝授!推しロスの乗り越え方は?「推し活」について精神科医・名越康文先生に聞いてみた
全力で応援している「推し」の一挙一動が、生活に及ぼす影響は計り知れないもの。そう感じている人は少なくありません。漫画家&イラストレーターのまずりんさんも、そのひとり。でも、だからこそ不安になるのが推しロスのこと。もしも大好きな推しが引退してしまったら...?考えたくないことだけど、そうなる前に立ち直り方や予防策を知っておきたい!精神科医の名越康文さんに教えていただきました。
推し活に今日も全力!だからこそ推しロスが今から不安…
編集部注:「推しロス」とは、応援していた「推し」が活動を終えたり、表舞台から姿を消したりした時に、ファンが抱える深い喪失感のことです。推しを持つ人なら、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。
つらい推しロス…どうすればいい?名越先生、乗り越え方を教えて!

推しロスのことを考えると今から不安で…!どうすればいいか、教えてください!よろしくお願いします。
よろしくお願いします!推しロスは、応援していた特定の人物やグループ、つまり「推し」が活動終了などをすることで、ファンが深い喪失感を抱くこと。これは…本当に凄まじいショックやと思いますね。


そうなんです!まるで世界が崩れ落ちていくような…。
しかも、本人はものすごく落ち込んでいるのに、同じ経験のない人には、なかなか深刻さが伝わりにくい。それでもしほかの人から「これくらいのこと」なんて言われたら、さらに傷ついちゃいますよね。


ヒイイイ…それは想像しただけでつらい!だけど経験していないと理解しづらい感情なのでしょうね。そもそも推しがいる人たち同士でもスタンスは同じじゃないですし、どれくらいのパワーで推しているかも人それぞれですし…。ちなみに私は今、下の表でいうところのLV.100にまもなく到達しそうな勢いです。
何とわかりやすい図!


ありがとうございます!(照)。でも、これはあくまでも私のケースで、人によっていろいろな状況が考えられると思うんです。
そうですね。恋愛的に好きな人もいれば、崇拝する人、一緒に成長を見守りたい人もいる。絶対的な定義がない分、自分がどんな気持ちで推しているかは自分にしかわからないですしね。推しに対する思いをひと言で定義することはできないですよね。


はわわわ…そうなんです。簡単に定義できないのが推しへの思い!だけど教えてください。私たちは、推しロスに直面した時どうすればいいのでしょう…?
推しに使っていたお金や時間を別のものに注いで全力で気をそらせ!
まずは、推しに使っていた分のお金や時間を別のものに「転換」する方法がありますね。もしからだが元気なら、例えば筋トレなどでからだを鍛えたり、おいしいものを食べたり、旅行とかでもいい。推し以外のことで気分転換できたらええんやけど…。悲しみから一時的に「逃避」するのは、自己防衛のために大切なんです。


例えば、旅行先はどうやって決めたらいいでしょうか?
好きな場所でええんやけど…聖地巡礼とかは、人によっては刺激が強いと感じてしまうかも。手始めは、推しとは関連しない場所がいいかもしれませんね。

悲しみに暮れる時は、BGMで時間を区切る、仲間と過ごすなどで環境を整えるべし!

悲しみにどっぷり浸るのはNGでしょうか?
いや、悲しみに暮れるのも悪いことではないんですよ。泣くのを我慢せんでもいいんです。ただ、その時は無音ではなくBGMをかけるのもいいかもしれません。そうすると「この曲が終わるまで浸ろう」といった時間の区切りをつけやすくなるので。お香やアロマキャンドルをそばに置いて「この火が消えるまで」と、決めておくのもいいと思います。


区切りをつけやすい状況にしておくのが大事なのですね。音楽はどんなものが良いのでしょうか。推しの曲を聴くのはどうですか?
推しの曲は、絶対にダメというわけではないんやけど、心を動揺させてしまうのなら要注意!ひとりでいると自己否定の気持ちも湧いてきやすいから、推し仲間がいるのであれば、集まって一緒に聴くのがいいと思いますよ。BGMは、推しと関係のないジャンルを選ぶのがおすすめです!

備えが安心につながることもあるので、いざという時のために、防災グッズのような感覚でBGM用の安心できる音源やアロマをあらかじめ用意しておくのも一案やね。あとは、かつて推しロスを経過した人の体験談を聞いておくのもいいと思います。


ほおお…!推しロスに備えるグッズ…!
いつ自分の内面に何が起きるかは、正確にはわからないからね。まだ元気なうちにちょっとした準備はしておけたらいいですよね。

推しロスの渦中にいる人には、あえて「聞かない」というやさしさも

ところで推しロスになった時、「この状態になったら危険」というからだからのサインはありますか?
眠れなかったり、ご飯がのどを通らなかったりした場合ですね。食欲が丸2日以上ない、あるいは眠れない状態が続くようなら、無理せず心療内科などの専門機関の受診も考えるべきだと思います。推しロスはそれくらいショックなことやから。


では、自分ではなく友達が推しロスをしてしまった時、私はどのように接したら良いのでしょうか?
僕やったら、目の前に推しロスで悲しんでいる人がいたら、あえてその話題には触れないですね。「聞いてほしい」と言われたらもちろん聞きますけど、特に理由もなく、気軽に話題に出すのは相手の悲しみや苦しみを増幅させてしまうことにもなりかねないから。相手を尊重することを心がけてみてほしいです。


気持ちの整理がついていない状況で、根掘り葉掘り聞かれるのはしんどいですもんね。先ほど出てきた「いつかの備えとして、推しロス経験者の話を聞いておく」のも、ロスからは時間を置いて聞くようにします!
推し活を充実させるコツは「今この瞬間を全力で楽しみ切る」!

ここからは、普段の心がけについてもお伺いしたいです。いつかは終わってしまうかもしれない推しとの時間をより楽しいものにしていくために、日頃からできることはあるのでしょうか?
まずは、今この瞬間を全力で楽しむことでしょうか。「諸行無常」という言葉があるけど、この世に生きる人間だからいつかは別れがくるわけやし、関係性は時間と共にどうしても変化していく。だからこそ「今日が推しに会える最後」くらいの気持ちで、全力で推し活を楽しむ。これは深刻になるということじゃなくて、一期一会、二度とないこの瞬間を楽しもうという意味なんですけどね。


諸行無常…!確かに一日として同じ日はないですもんね。とはいえ最近はライブだけじゃなくSNSや動画チャンネルなどいろいろな接点がある分、いつでもどこでも推せる感覚を持っている人も多いかもしれません。
そうやね。この時代は、推しとの距離の取り方も大事ですね。


特にSNSは、距離が近いと錯覚してしまう危険があるように思います…。
推しが目の前にいると思うと「推しの印象に残ることをしたい」って頑張ってしまう人もいるかもしれませんね。その気持ちもわかるんやけど…僕の経験上では欲をかいちゃいけないなと思いますね。


欲を…かく⁉
推しの記憶に残りたいと思うあまり突飛な行動に出て、その結果、自己嫌悪に陥って推しとの距離が遠のいてしまうこともあるかもしれない。そうならないように気を付けた体験談として僕は昔、憧れの人にカレーをご馳走してもらったことがあるんですけど、その時はとにかく気の利いたことを無理に言おうとしないように、自分に言い聞かせていました(笑)。


なんて素敵なお話…!その時の名越先生の姿勢に、距離の取り方のヒントがある気がします。
ていねいに敬語を使って、推しとの距離をあえてとるのも対策になるかもしれませんね。言葉による自己防衛。推しが我々の心に育ててくれた「推しへの思い」を守っていくためにも、ほどよい距離感を意識するのは個人的には大事だと思うんです。


つまり、推しという大きな光の前で無闇に光ろうとしてはいけないということですね…!気を付けます!
推しのグッズは安心感につながることも!物質の持つ「継続性」を活用しよう

最後に、推し活をもっと楽しむコツがあればお伺いしたいです。
推しとの一体感を高めたいのなら記念品やグッズを愛でるのも良いかもしれません。物質は「継続性」を持っているので、推しのアイテムを所有することは、安心感につながりやすいんですよ。
高いものじゃなくて大丈夫。楽しかった時間をモノに変えておく、写真を撮っておく。二度と同じライブ、同じ配信、同じ気持ちは味わえないわけですから。


わああ、勇気がわいてきました…! 不安に思うよりも、ロスに備えておきつつ、推しと過ごせる「今」という時間を大切にしたいです。今日はありがとうございました!
まずりんさんは、もうその境地に達してんねんな(笑)。素晴らしい!推し活、楽しんでくださいね。こちらこそありがとうございました!

推しを育んでくれた地球に感謝…!
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、すべてがライオン株式会社の見解を示すものではありません。
漫画&イラスト:まずりん
取材&執筆:つるたちかこ
編集:ノオト
この記事を書いた人

まずりん
デザイナー&マンガ家&イラスト描き。モーニング公式ウェブサイトで「独身OLのすべて」を連載し人気を博す。その他「マヌ~ルのゆうべ」「おふとりさま劇場」「イタジョ!」「そねみん」など作品多数。
X(旧Twitter):@muzzlin
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