灰が降っても気にしない⁉鹿児島のてげてげ文化を調査してきた
くらしにまつわる商品を作っているからこそ、地域ならではのくらし方にも注目をしてきたライオン。住んでいる人にとっては当たり前でも、気候や文化をふまえたくらしの知恵・考え方を知ると、新しい気づきにつながるはず! ということで、今回は、旅が趣味のライター・小堺丸子さんに鹿児島の「てげてげ」マインドの中にある、くらしを豊かにするヒントを探しに行ってもらいました。
はじめまして。
街で出会った人に声をかけるのが趣味のライター、小堺丸子です。
全国あちこち旅をしているうちに、その土地土地の「くらし」に興味が湧いております。
「くらし」と一言でいっても幅広いですが。たとえば各地の生活の違いや、そこから紐解くくらしへの向き合い方・考え方を掘り下げていくのはおもしろそうです。
初回の舞台は鹿児島。地元の人にじゃんじゃん声かけていきますよ!
鹿児島といえば桜島と「てげてげ(適当)」文化
⿅児島といえば、2万年以上も前から噴火活動している桜島が有名です。
1年になんと数百~千回近く噴火していて、鹿児島では日常的に灰が降っているのだとか。
事前アンケートによると約200人中、80%以上の人が降灰の影響を受けていることが分かりました。※本記事の調査概要については最終頁参照
また、もう1つの鹿児島の特徴として、県⺠性を語る時に使われる「てげてげ」という言葉があります。ひと言でいえば「適当」という意味らしいのですが、降灰に対してはどうなんでしょうか?掃除とか洗濯とかも、てげてげなの?
そこで今回は、くらしの中で降灰についてどう対処しているのかを掘り下げていきたいと思います!
まずは降灰事情を調査!
ということで、さっそく鹿児島へ!
到着した日は降灰が少ない日だったようで、一見すると街にはなんの違和感も無し。
ただよーく見ると、灰の存在を知ることができます。
例えば道のあちこちに置かれた克灰袋(こくはいぶくろ)。
市から各家庭に配られている、灰を捨てるための袋です。
ゴミのように収集所もありますが、満杯だととても重いので家の前に出しておけば回収してくれる地域もあるそう。
ほかにも、路面電車のレールから灰をかき出しているところや、白い車に灰が乗っているのをみると、鹿児島のくらしに灰が影響していることがよく分かります。
日本で一番風向きを気にしているのは鹿児島県民⁉
地元の人と話していて興味深かったのが、みんな「風向き」をとても意識してること。
灰がどう動くかによって、洗濯物を外に干すか、傘を持っていくかなど判断するためです。
直に桜島を見たり、TVの天気予報と一緒に出る風向きを確認するそう。
また、「基本的に夏は鹿児島市のある薩摩半島側に、冬は大隅半島側に灰が向かう」というのが常識になっていました。
洗濯はどうしてるの⁉
では灰が降るとわかった場合、洗濯はどうするのでしょうか。
事前アンケートでは「基本は室内干し」との回答が多数でした。
実際に私が声をかけた人たちも「常に室内干し」という人がほとんど。
なぜなら仕事や遊びなどで家を空けることが多いと、突然降った灰に対応できないため。
お風呂場の除湿機を使って夜の間に乾かしたり、ガス乾燥機を回しまくっているそうです。
また、最近だと新築の場合は必ずといっていいほどサンルームをつけるのだとか。曇天率が高い地域では多いと聞いたことはありますが、あまり見かけない光景ですよね。
灰が自分の家の方向に来ない時は外に干すこともあるにはあるそうですが、もし生乾きの状態で灰がついたら取りにくいし、乾いていたとしても洗濯物の量が多いと灰をはたくのもひと苦労。
そりゃあ部屋干しが主流になるのも分かりますね。
でも一方でこんな思わず笑ってしまう意見も。
灰の掃除はきっちりやろうとすると大変!
さて次に、掃除について聞いてみました。
灰は砂と違って粒子が細かいものもあり、花粉みたいにいつの間にか家の中に入り込んじゃうそうです。もし一日窓を開けっ放しにしたらもう悲惨なことに!
また、車や家の屋根に乗った灰は雨が降れば洗い流せますが、雨どいや外の排水口には灰がたまるので定期的に取り除かないといけないという意見も。というか、もはや桜島の近くの家では雨どいを取っちゃっているお宅もあるそうです。
こまかいことは気にしない!
県外の人間からすると、こういった灰の対処はとても大変そうに見えますが、地元の人たちにとっては日常なので、大したことだと思ってないようでした。
雨や雪が降るのと同じ感覚なんですね。
身につけるものも、色とか気になるのかと思ったら、ほとんど気にしてませんでした。
ちなみに事前アンケートでも気にしない派が多かったです。
やっぱり鹿児島県民はてげてげ(適当)なのか
降灰はさほど気にしない、というところに「てげてげ」具合が垣間見えました。
でも今回出会った人たちはみんなテキトーというよりむしろしっかり者に見えます。
てげてげって、もっと深い意味や違った意味があるのかも?
降灰の影響が特に多い垂水(たるみず)のお母さんたちにも聞いてみることに。
小田原さん:大阪出身のお嫁さんには「アバウトやなぁ」って言われることはありますね。こっちの人たちは明るいし、アバウトなところもあるけれど、うーん、でも家事はきちんとしているかな。
川畑さん:おおらかという意味でいうと、たとえば全国ニュースで流れるほど灰が降っても、鹿児島の人たちはそれほど気にしてないわよね。灰で大きい病気になるというのは聞いたことないし。むしろ噴火がないと心配になるものね(笑)
川井田さん:そうそう。桜島がどんなに噴火しても目くじらをたてないですね。相手は自然だし、いちいち気にしてても仕方ないもの。
「てげてげ」はがんばりすぎている人によく使う言葉
川畑さん:あと、てげてげというのは、ものごとを重く考えすぎないようにする時によく使うのよ。「そんなに気負わないで」とか「ほどほどでいいじゃない」って、相手のプレッシャーをなくすために「てげてげで良かよ」って使うのよね。
なるほどー…! 肩の力が入りすぎて疲れてしまわないように言う言葉なのか。けしてテキトーではなく、むしろ一生懸命な人たちが多い証拠かもしれません。
そういえばこの時、お宅を使わせてくれた川井田さんが手料理や地元のおやつをおもてなししてくれたり、とても緊張されていたんですが、まさに「てげてげで良かよ」を言うチャンスでした。
灰に困ることもあるけど、桜島は鹿児島県民の誇り
川畑さん:ところで、桜島が爆発(噴火)してるところ見れた? やっぱり来てくれた人には煙の出ている桜島の姿を見てほしいのよね。
皆さん、いろいろ灰には苦労しているはずなのに、桜島を1日1回は見ないと落ち着かないそう。
同じく、今回話を聞いた人たちは口々に桜島のことを「鹿児島の誇り」「鹿児島のシンボル」「何度見ても飽きないしホッとする」と讃えていました。
そんな存在が近くにあるのって、とても羨ましいです。
まとめ:無理するといずれ大爆発しちゃう。てげてげでいこう
という感じで、今回出会った方たちはとても穏やかな方たちばかりでした。
「てげてげ」が表す「気張らなくていいんだよ」という風土そのままです。
もしかしたらそれは、抗うことができない自然が身近にあることで、おおらかな思考が生まれたのかもしれません。桜島が日々小さい噴火をしているように、てげてげマインドで力を適度に抜くことが、くらしを豊かにするヒントかも、と思いました。
鹿児島の皆さま、ご協力ありがとうございました!
※アンケートおよび取材で得た情報をもとに記事にしていますが、必ずしも正確性を保証するものではありません。
【アンケート】
■調査方法 インターネットリサーチ
■実施期間 2019年04月24日~2019年4月29日
■有効サンプル数 228人(対象:鹿児島県在住、男性113名、女性115名)
この記事を書いた人
小堺丸子
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。好物は酸っぱいもの全般とイクラ。毎週末実家の犬たちと遊んだり、まちで散歩中の犬を見かけるのがくらしの中で何よりの癒やしです。どの犬にもアイドルに憧れる思春期の男子のような目で見てしまい、いつか電柱に当たらないか心配しています。
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